天野滋「BECAUSE OF YOU」

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ストリーミング配信について…現時点では配信されていない。

 

【収録曲】
全曲作詞作曲編曲:天野滋
プロデュース:天野滋・加藤要

 

1.狂ったダイヤモンド ★★★★☆
2.Julietの憂鬱 ★★★★☆
3.ピンクの風 ★★★☆☆
4.夏のかけら ★★★★★
5.NIGHT CLUBBING ★★★★★
6.VISITOR ★★★★★
7.吐息のジェラシー ★★★☆☆
8.BIRTHDAY ★★★☆☆
9.POISON or NO.5 ★★★☆☆
10.RAIN DANCE ★★★☆☆

 

1988年10月21日発売
ハミングバード
最高位不明 売上不明

 

天野滋の2nd(ラスト)ソロアルバム。今作と同日にシングル「VISITOR」がリリースされた。NSP時代の1stソロアルバム「あまのしげる」からは12年ぶりのリリースとなった。

 

天野滋は1973年にデビューしたフォークグループ・NSPのボーカル・ギターにしてリーダーとして活躍。NSPはメンバーチェンジを経て、1987年まで活動。今作はNSPの活動停止後初のソロ作品となる。

 

今作リリース後は楽曲提供を中心に活動。2002年にはオリジナルメンバーでNSPが再始動。精力的に活動するも、2005年7月に死去。
結果的に今作が最後のソロ作品となった。

 


「狂ったダイヤモンド」は今作のオープニング曲。妖しげな雰囲気を放つミディアムナンバー。コーラスによるサビはかなりインパクトのある仕上がり。イントロのシンセの音色からこの曲の世界に引き込まれる。
歌詞は性生活に溺れる女性を「狂ったダイヤモンド」に例えている。二人の爛れた関係が伝わってくるような、危うい詞世界となっている。ただ、天野の真摯なボーカルによって猥雑さが抑えられている印象がある。
この曲を聴いただけでも、NSP時代との作風の変化がよくわかると思う。


「Julietの憂鬱」は前の曲に続いて、エレクトロファンク色の強いサウンドが展開されたミディアムナンバー。生音とシンセとのバランスが取れたサウンドは聴きごたえがある。サビはファルセットによるボーカルも相まってかなりキャッチーにまとめられている。
歌詞はタイトル通り「Juliet」の様子や、彼女に片想いする男性の心情が綴られている。淋しさを堪える女性の姿が想像できる。
80年代後半独特の時代性が出たサウンド面がたまらない曲。


「ピンクの風」は今作と同時にリリースされたシングル「VISITOR」のB面曲。イントロ無しでボーカルから始まる構成となっている。天野のボーカルでしっとりと始まったと思えば、この曲もまたファンキーなサウンドが展開されていく。サウンド面はギターのカッティングが主体となっている。
歌詞は冷めた関係の恋人とドライブしている様子が描かれたもの。生々しささえ感じられるような描写に引き込まれる。
この曲はアレンジに力が入っている印象がある。


「夏のかけら」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。どこか懐かしさを感じさせる素朴なメロディーで聴かせる。叙情的かつキャッチーなサビは何度でも聴きたくなる。シンセをはじめとした音の主張は控えめで、天野のボーカルを引き立たせるアレンジとなっている。
歌詞は夏の終わりの避暑地を舞台にしたもの。明日から離れ離れになる恋人と過ごす様子が描かれている。
今作の中でも一番好きな曲。職場の昼休み中、ラジオで流れてきたこの曲をきっかけに天野滋や今作を知っただけに思い入れが深い。


「NIGHT CLUBBING」は再び流れを戻すエレクトロファンクナンバー。イントロが1分近くあるのが特徴。この曲も重厚なシンセベースやギターのカッティングが前面に出たサウンドとなっている。女性コーラスが目立ったサビは一聴しただけでもよく耳に残る。
歌詞はナイトクラブに繰り出す女性と、彼女に魅かれてしまった男性の心情が描かれている。淫靡な世界観を持った歌詞なのだが、それでも下品にならないのが絶妙。
今作は夜を思わせる曲が多く並んでいるが、その路線の中でも一番好きな曲。


「VISITOR」は今作と同時にリリースされたシングル曲。今作の中でも一際爽やかなポップナンバー。開放的な雰囲気を持ったサビは聴き心地が良い。シンセ主体のサウンド面が曲をよりポップなものにする。やたらとパワフルでくっきりとしたリズムはこの時代ならでは。
歌詞はメッセージ性の強いもの。自らを「VISITOR」と例え、過去と決別しようとする男性が描かれている。「またすぐに ゼロから始める」というフレーズは力強さに溢れている。
ソロとしてのキャリアをスタートさせた天野の想いが詞世界に反映されているように思うので、この曲がシングル曲になったのも頷ける。


「吐息のジェラシー」は今作の中でも特に疾走感のある曲調が印象的なポップナンバー。英語詞が多用されたサビはかなりキャッチーな仕上がり。コーラスワークや打ち込みによるストリングスがスリリングな雰囲気を演出する。
歌詞は既に恋人がいる相手に片想いする男性の心情が綴られている。本心を見せない相手に振り回される姿が浮かんでくる。
曲調とアレンジの相性がよく合っており、それがクセになる。


「BIRTHDAY」はここまでの流れを落ち着けるスローナンバー。穏やかな雰囲気を持ったメロディーとボーカルで聴かせる。アコギの音色が前面に出たサウンドは新鮮に感じられる。とはいえアコースティックに振り切ったわけではなく、シンセも使用されている。
歌詞はタイトル通り誕生日パーティーをテーマにしたもの。祝ってくれる友人もいて満たされているはずなのに、「君」の不在に落ち込む。「君」はどれだけの存在だったのだろうか。
今作の中では最もNSP時代に近い作風の曲だと思う。


「POISON or NO.5」は再び夜を思わせる曲。タイトルの「POISON」は「ポワゾン」と読む。シンセとギターのカッティングが絡んだサウンドが妖艶なイメージを作り出している。
歌詞は別れを決めた恋人と過ごす夜が描かれている。今までの関係に戻れないと悟っているが、それでも相手は誘惑してくる。タイトルに著名な香水のブランドが使われているだけに、危うい魅力を持った相手の姿が浮かんでくる。
曲全体から溢れるアダルトな雰囲気に不思議と引き込まれる。


「RAIN DANCE」は今作のラストを飾る曲。しっとりとしたバラードナンバー。甘美なメロディーとボーカルで聴かせる。ピアノやシンセによるストリングスが前面に出たサウンドでメロディーを引き立てている。
歌詞は雨の日を舞台に、恋人と愛し合う姿が描かれている。文学的な魅力を持った詞世界は天野の作詞家としての実力が存分に発揮されている。
ラスト以外に置き場所の無いようなバラード。映画のエンディングのような雰囲気がある。


実店舗・ネットともに高値で出回っている。
NSP時代の叙情派フォーク的な音楽性とは打って変わって、シティポップ〜ブラックミュージック色の強い作風となっている。
NSPの作品に慣れ親しんだリスナーは随分面食らったと思うが、逆にこの手のサウンドが好きな方にはたまらない名盤になる。
充実した作品だっただけに、結果的に最後のソロ作品になってしまったのが残念。

 

★★★★★