詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年4月編

「収穫月間MVP」を受賞する作品があれば、それぞれの部門で2作のみという枠の都合によって惜しくもそれを逃してしまう作品も生まれる。しかし、そのような作品たちも受賞した作品と同じくらい良いと思ったわけで、それを広めずにいるのはあまりにも勿体無い。そのような理由で毎回「惜しくも受賞を逃した作品」を受賞した作品とともに発表しているのだが、今回はうっかりその発表を忘れてしまった。痛恨のミスだった。そのため、そのラインナップは今回のブログで初公開となる。

 

初めまして部門

辻詩音「Catch!」(2010年)

斉藤和義「Because」(1997年)

菊池桃子「ADVENTURE」(1986年)

SUICIDE SPORTS CAR非情のライセンス〜LICENSE TO KILL〜」(1999年)

・DOVE「Parallel Trip」(1990年)

水谷紹「NIGHTINGALE」(1990年)

 

顔見知り部門

佐藤聖子「CRYSTAL」(1995年)

鈴木祥子「Candy Apple Red」(1997年)

 

このような顔ぶれとなった。新しく作品を手に取ったアーティストがかなり多かったため、アンバランスなラインナップとなっている。それでは、これらの作品の簡単な紹介をしていこう。まずは初めまして部門から。

 

 

辻詩音「Catch!」

Catch!(初回生産限定盤)(DVD付)

Catch!(初回生産限定盤)(DVD付)

 

この作品はいつもお世話になっているフォロワーさんの好きなアルバムランキングの比較的上位に入っていることから、前から探していた。半年以上探していたが、やっと先月に入手できた。自分が入手したのとちょうど同じくらいの時期に、別のフォロワーさんも今作を聴いてハマっていた。良いタイミングで手に入れることができたと思う。

とにかく明るく、ポップな作風がたまらない。少しクセがありながらも、それでも可愛らしい歌声は自分の好みそのもの。曲や聴き手に寄り添うような歌声だと感じた。ポップナンバーはもちろんのこと、バラードやロックナンバーでもその歌声が魅力的だった。全曲の完成度もかなり高く、ギター系の女性シンガーソングライターの新たな名盤に出逢えたと思った。

 

斉藤和義「Because」

Because

Because

 

斉藤和義は著名な楽曲しか知らない状態だが、「ちゃんと聴けばハマる」と思っていたアーティストの筆頭格だった。最初はベスト盤から入ろうと思っていたのだが、今作から聴き始めた。ファン人気の高い「月影」や代表曲「歌うたいのバラッド」が収録されていたからだ。

渋くて、格好良い。自分の思う斉藤和義の楽曲像そのままだった。ダラダラしているようでいて、緊張感もある。独特な雰囲気を持った曲揃いだった。ロックンロール、ブルース、ポップス、昭和歌謡、ジャズなど実に多彩なジャンルを取り込みつつも、まとまりがあるところに驚いた。それは確かなメロディーを持っているからだろう。もっと深く聴いてみたいと思った。

 

菊池桃子「ADVENTURE」

ADVENTURE

ADVENTURE

 

菊池桃子はラ・ムーの作品を先に入手するという不思議な形でハマった。そのため、顔見知り部門にしようかと思ったものの、ソロとしての名義の作品は今回が初だったので初めまして部門にした。

作家として全盛期にあった林哲司が作曲・編曲を行なっているため、まず楽曲面にハズレはない。洗練されたシティポップ・AOR系のサウンドには一切の隙がない。そのようなサウンドに乗っかる、菊池桃子のふんわりとした歌声が何とも心地良い。どうやら菊池桃子は歌が下手という扱いだったようだが、自分はそのような印象は全く持たなかった。アイドルに歌唱力がそれほど求められなくなった世代の人間だからだろうか。他の作品も聴いてみたいところ。

 

SUICIDE SPORTS CAR非情のライセンス〜LICENSE TO KILL〜」

非情のライセンス?LICENCE TO KILL

非情のライセンス?LICENCE TO KILL

 

GRASS VALLEY、REV、ソロと様々な活動を展開し、その全てで全く異なる音楽を披露してきた出口雅之だが、SUICIDE SPORTS CARはスパイ映画をテーマにしたユニット。出口雅之の経歴の中でも最も著名だと思われるREVは全く聴いていないのだが、GRASS VALLEYを聴いてその歌声に魅せられた。それでこのユニットの名前を知った。

スパイ映画はほとんど観たことが無いのだが、そのような自分でも「それっぽい」と思うような、お洒落で格好良い楽曲が並んでいた。マリンバ担当のメンバーがいるからだろうか?Mr.SUICIDE SPORTS CARこと出口雅之のキザなイメージのある歌声もまた、今作のコンセプトによく合っていた。ORIGINAL LOVEや、田島貴男がボーカルを担当していた頃のピチカート・ファイヴが好きなら聴いて損は無いと思う。

 

DOVE「Parallel Trip」

Parallel Trip

Parallel Trip

 

DOVEは中古屋で作品を見かけて初めて名前を知ったバンドだった。そして、帰ってから楽曲をYoutubeで聴き、ハマれそうだと思ったので作品を入手した。その店に作品が揃っていたため、あっさりと3作を揃えてしまったのだが、その中でも今作が一番好きなので今作を紹介する。

3人組とは思えないほどに分厚く、力強いバンドサウンドが主張したロックやポップスを楽しめる。ニューウェーブを思わせる曲もある。The Policeを彷彿とさせるバンドと言うべきか。聴いていると、演奏や歌声の格好良さと歌詞の幻想的な世界観に引き込まれてしまう。ベースかボーカルというのもかなり凄い。この手のバンドは数多くいそうなのだが、意外といないもの。自分がラッキーだっただけで、作品を入手するのは少々面倒な印象があるが、YouTubeで楽曲を聴いて興味を持った方には是非とも入手していただきたいと思う。

 

水谷紹「NIGHTINGALE」

NIGHTINGALE

NIGHTINGALE

 

水谷紹は、自分が影響を受けた方のブログで紹介されていたのでその名前を知った。「ポスト高野寛というような売り出し方をされていたようで、それで興味を持った形。

いざ聴いてみると「高野寛でさえも上回るのでは…?」と思うほどにひねくれた楽曲の数々が展開されていた。ポップでありながら、一癖も二癖もあるメロディーや「ぶっ飛んだ」「人を食ったよう」といったフレーズが似合う詞世界はインパクト抜群。一度聴こうものなら、しばらく耳を駆け巡ってしまうようなキャッチー性もたまらない。シンセを駆使した、様々なギミックが散りばめられたサウンド面も圧巻。それでいて、好青年的なイメージのある容姿や歌声である。ここまでほのぼのとした狂気を帯びた作品も中々無いのではと思う。

 

 

次は顔見知り部門。

 

佐藤聖子「CRYSTAL」

CRYSTAL

CRYSTAL

 

佐藤聖子は先月に「SATELLITE☆S」を聴いてハマったが、今作はその次作。セールスが伸び悩んで打ち切られてしまったのか、アルバムのリリースは今作がラストとなった。

そのせいなのかはわからないが、今までよりも「聴かせる」曲が増えた印象がある。ポップ性で言うなら「SATELLITE☆S」の方があったと思うが、今作は佐藤聖子の歌声という魅力をより堪能できるという印象がある。どちらの路線も好きである。自作の楽曲の完成度もかなり高く、シンガーソングライターとしても才能が開花する寸前だったのではないか。今作以降はシングルのみのリリースとなってしまったのは本当に残念に思う。

 

鈴木祥子「Candy Apple Red」

Candy Apple Red

Candy Apple Red

 

鈴木祥子は自分の特に好きな女性アーティストの一人。自分は初期の名盤と言うべきポジションの2ndアルバム「水の冠」が一番好きなのだが、今作はロックに傾倒してからの作品。かなりの期待と少しの不安を抱いて今作を聴いた。

冒頭の楽曲を聴いただけで、自分が思う鈴木祥子の楽曲像ではなくなっていたのがわかった。サウンドも、詞世界も、歌い方も明らかに違う。これだけなら酷評してしまっているのだが、ハマった理由はメロディーにある。美しくポップなメロディーはこれまでとは変わらないどころか、さらに高められている印象があったからだ。今作を聴き始めた時は違和感があったのだが、聴き終えると「これはこれで良いじゃん」と思えた。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

 

詳説・収穫月間MVP 2018年4月編

「収穫月間MVP」の発表が先週の土曜日に行われた。この記事は毎回発表した直後に更新して公開していたものの、今回は色々と忙しくなって遅れてしまった。

 

何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。

 

「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。

以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。

 

長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。

 

初めまして部門

 

比屋定篤子「ささやかれた夢の話」(1999年)

ささやかれた夢の話

ささやかれた夢の話

 

・上野優華「Sweet Dolce」(2017年)

Sweet Dolce (初回限定盤A)

Sweet Dolce (初回限定盤A)

 

 

顔見知り部門

高野寛「Everything is Good」(2017年)

EVERYTHING IS GOOD

EVERYTHING IS GOOD

 

荒木真樹彦「Baby,You Cry」(1990年)

BABY,YOU CRY

BABY,YOU CRY

 

このような結果となった。正直なところ、4月は新規開拓したアーティストの方が圧倒的に多かったので、顔見知り部門の選定は少々無理したような感じになっている。とはいえ、気に入った作品なのは事実。

 

それでは、受賞した作品の簡単な感想を述べていく。

 

比屋定篤子「ささやかれた夢の話」…今までは名前すら知らなかったものの「まわれまわれ」をYoutubeで聴いて、艶のある美しい歌声に魅せられた形。近年のシティポップ・AOR再興の中で、今作も再評価されているのだろうか。中古でもやたら高値で出回っているのが特徴。

どうやら比屋定篤子の本職はボサノヴァのようだが、今作は前述した通りシティポップ・AORに傾倒した作品となっている。一口にそれらのジャンルを挙げても70年代と80年代ではかなり毛色が違うが、今作はどちらかというと70年代寄り。タイトで温かみのあるバンドサウンドと、流麗なメロディーに、聴き手を癒す歌声。それは大貫妙子を彷彿とさせるものだった。聴いていて本当に心地良いし、思わず身体が動いてしまうような部分もある。高値で出回っているのも頷けるような名盤だった。

 

上野優華「Sweet Dolce」…上野優華は昨年名前を知った。というのも、ツイッターでいつもお世話になっているフォロワーさんが突然どハマりし、魂のこもった布教を行っていたからだ。無意識のうちに名前が記憶され、曲名がインプットされていた。今作に収録された「やくそく」は、曇りめがねの本家ブログ「今日はこんな感じ」でかつて行った「2017年のベストソング」で紹介しており、今作を聴けばハマるという気はしていた。案の定ハマってしまった。

リリース当時は18歳だったという若きアーティストの作品に対して使う言葉ではないだろうが、「懐かしい」と思った。自分の好きな90年代のガールポップを想起させる部分が多くあったからだ。アイドルなのかアーティストなのかわからない上野優華のキャラクターもまた、それを思わせた。

曲に表情をつけるように多彩な魅力を持った歌声、ポップ性を忘れないメロディーの数々はまさに自分の好みのど真ん中。「もっと聴かせて!」と思うような、コンパクトな構成も素晴らしい。他の作品も聴いてみたい。

 

 

顔見知り部門

高野寛「Everything is Good」…高野寛は自分の特に好きな男性アーティストの一人。この作品は昨年リリースされたものだが、リリース当時の自分のお財布事情や精神的に色々あったこともあり、リアルタイムで入手できなかった。それを先月に入手した。高野寛の新譜というだけで、決して外すことは無いだろうという不思議な信頼感があった。

卓越したポップセンスはデビュー30周年を前にしても全く色褪せていなかった。一時期の作品ではアコースティックな方面に傾倒していたが、今作では持ち味のカラフルなアレンジも復活。聴いていて安心できる、優しく心に響くような歌声も相変わらず。歌入りとインストが半々くらいのミニアルバムなのだが、どの曲も確かな良さがあった。これからの高野寛の活躍を期待している。

 

 

荒木真樹彦「Baby,You Cry」…荒木真樹彦は3月にベスト盤「BACCHUS」を聴いて、その音楽性に魅かれた。マルチプレイヤー、渋く色気のある歌声、優れたメロディーセンス、ファンクやAORなど多彩な音楽性…どれも自分の好みそのもの。

今作と同時に入手した1stアルバム「SYBER BEAT」はファンク寄りな作品だったが、2ndである今作はAOR寄りな曲が多くなっていた。ファンキーなノリも素晴らしいが、メロウなノリも魅力的。しっとりした曲だと、そのメロディーセンスや歌声が尚更際立つ。決して派手ではないが楽曲を引き立てる、本人によるギターサウンドもインパクト抜群。荒木真樹彦のオリジナルアルバムは3作持っているが、今のところは今作が一番好き。

 

とりあえず、こんな感じ。次回も楽しみにしていただけたらありがたい。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年3月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年3月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年3月は中々の激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫することができました。今回は特に初めまして部門の方で、選択に迷いました。

 

それでは、「惜しくも受賞を逃した作品」を挙げていきます。

 

【初めまして部門】

森丘祥子「Pink&Blue」(1990年)

・MAYUMI「The Art Of Romance」(1993年)

・詩人の血「とうめい」(1990年)

米川英之「HALF TONE SMILE」(1994年)

佐藤聖子「SATELLITE☆S」(1995年)

・Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」(2013年)

 

【顔見知り部門】

・D-PROJECT「PAGES」(1993年)

・ANNA BANANA「High-Dive」(1993年)

・染谷俊「マーガレット」(1998年)

 

まずは初めまして部門から。

 

森丘祥子「Pink&Blue」

ピンク&ブルー

ピンク&ブルー

 

森丘祥子は「夢で逢えたら」のカバーで名前を知り、その可愛らしい歌声に魅かれた。そのカバーは次作のタイトル曲として収録されるわけだが、今作はアイドル然としたポップスが並んだ作品である。元々アイドルとして活動していたので「然」と付けるのも少々違和感があるが。

歌声という特色を最大限に生かすようなポップな曲ばかりとなれば、まずハズレは無い。オリジナル曲の完成度もさることながら、ハイファイ・セットの「冷たい雨」のカバーも印象的だった。ウォール・オブ・サウンド風のアレンジがされているのだが、原曲には無い新たな魅力に気付かせてくれるようなカバーだった。この手のガールポップ系のアルバムはとにかく自分好み。もう少しこの路線の作品を聴いてみたかった。

 

MAYUMI「The Art Of Romance」

The Art Of Romance

The Art Of Romance

 

MAYUMIは作曲家として活躍しているイメージがあったが、ソロアルバムを入手したのは今回が初だった。とは言っても、作曲家やプロデューサーに徹する形であり、本人がボーカルを担当しているわけでも演奏をしているわけでもない。

3人の外国人ボーカル(男性2人・女性1人)を起用し、曲によってその3者を使い分ける…という形の作品。今井美樹稲垣潤一に提供した曲のセルフカバーもあるのが特徴。当然ながら全編英語詞の作品である。今作にハマったのは、何よりもサウンド面と言える。シティポップ・AORの界隈に教科書があるとすれば、それで紹介しても良いと思えるほどに王道なAORサウンド。演奏には外国人の実力派ミュージシャンを多数起用しているため、聴き心地がとても良い。AORならではの繊細さを漂わせつつも、ガールポップ的なキャッチー性を忘れないMAYUMIのメロディーも絶品。90年代のAORの隠れた傑作である。

 

詩人の血「とうめい」

とうめい

とうめい

 

詩人の血は個人的に好きなレコード会社であるEpicソニー所属だったということや癖の強い名前であることもあって、前から名前だけは知っていたバンドだった。作品を入手したのは今回が初。

名前やボーカルの辻睦詞の容姿だけ見てV系のような作風なのかと思っていたが、実際に聴いてみると渋谷系を通過したようなお洒落かつひねくれたポップスが展開されていた。辻睦詞による独特な詞世界やボーカルは、一度聴けば忘れられない確かなインパクトがあった。多彩なジャンルを取り入れた、カラフルでいびつなサウンドもたまらない。「心地良い違和感」とでも称するべきか。このような楽曲たちは、今聴いても古臭さが無い。他の作品も聴いてみたいと思った。

 

米川英之「HALF TONE SMILE」

HALF TONE SMILE

HALF TONE SMILE

 

米川英之C-C-Bに所属していたというイメージが強いものの、ソロ作品はシティポップ・AORの色が強いと知って気になっていた。そして、1stアルバム「Sweet Voyage」と共に入手した。そちらも良いと思ったのだが、今作の方が気に入ったのでこちらを紹介する。

米川英之の渋くて格好良い歌声は、洗練された楽曲によく合っていた。全曲が米川英之作曲によるものだが、どの曲もしっかりと耳に残る仕上がりになっていたのが流石。サウンド面の聴きごたえは予想通りのものだった。90年代はシティポップ・AORの冬の時代だったと思っているのだが、そのような中でも本格的な作品があったことに驚いた。

 

佐藤聖子「SATELLITE☆S」

SATELLITE☆S

SATELLITE☆S

 

いつ頃からかはわからないが、80年代後半〜90年代中頃くらいのガールポップ系アーティストを深堀りしようと思い立ち、それに括られるアーティストの作品を色々と物色するようになった。佐藤聖子はその中でも代表的な存在であり、数ある作品の中でも今作を最初に入手した。

少し自作があるものの、ほぼ提供曲…という構成はまさにガールポップの王道。タイアップが付いた曲が多く収録されているだけあって、どの曲もとてもキャッチーだった。どの曲がシングル曲なのかわからなくなってしまったほど。可愛らしさ、透明感、力強さなど様々な面を併せ持った佐藤聖子の歌声は「理想の女性ボーカル」そのものだった。今作を1周聴いただけで、あっという間に佐藤聖子にハマってしまった。聴いた後に、他のオリジナルアルバム3作を立て続けに入手してしまったくらい。まだまだ聴き込んでいきたい。

 

Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」

アイネ クライネ リヒトムジーク

アイネ クライネ リヒトムジーク

 

Contrary Paradeは、いつもお世話になっているフォロワーさんからの紹介で名前を知った。自分の好きなグループであるadvantage Lucyに似た音楽性のようで、それを聞いてすぐに作品を入手した。

ずっと聴いていたいと思わせてくれるような心地良さと、お洒落な要素を持ったポップスの数々を楽しめる作品だった。ボーカルのたなかまゆの清涼感のある歌声と、キラキラしたポップサウンドとの相性は素晴らしいものがあった。多彩なアプローチがされた楽曲が展開されているのだが、どの曲もキャッチーなのは共通している。収録曲の「エイプリルシャワー」を一回聴いただけで、今作は自分の好きな作品だ…と予想していたが、見事に当たった。

 

次は顔見知り部門。

 

D-PROJECT「PAGES」

PAGES

PAGES

 

D-PROJECTは2月に「TEMPEST」を入手し、ニューウェーブ色の強いロックやポップスにハマった。しかし、今作はAORやソウルに傾倒した作品となっている。とはいえ、いきなり新たなジャンルを取り入れた時に感じてしまいがちな、ぎこちなさは全く無い。ずっとそのジャンルをやってきたかのような風格があった。

D-PROJECTのボーカルであるジョー・リノイエは、崎谷健次郎東野純直の中間のような透明感や伸びのある歌声が魅力的なのだが、AOR色の強いサウンド面のおかげで、その歌声の良さが引き出されている印象があった。全編通して溢れる、洗練された雰囲気に魅かれた。ニューウェーブを主体としてきたD-PROJECTにとっては今作が異色な作品なのかもしれないが、それでも今作が好き。

 

ANNA BANANA「High-Dive」

High-dive

High-dive

 

※正しい発売日は「1993/6/23」である。

ANNA BANANAは以前「SING SELAH」を聴いた。その頃は歌声が好きだと思ったくらいでそれほどハマらなかったものの、今作を入手してそれが変わった。ちなみに、ANNA BANANAは父親がイタリア人で母親が日系アメリカ人のようだが、楽曲は全て日本語詞である。モデルとしても活動していたという。

今作はアシッドジャズに傾倒していた頃の田島貴男がプロデュースを手掛けており、サウンド面は当時のORIGINAL LOVEの作品そのままと言ったところ。楽曲に関しては、自作(共作含む)と提供が半々になった構成。凝ったサウンド面や、メロウな雰囲気漂う楽曲・ボーカルはいつまでも聴いていたいと思わせてくれる。今後は再評価が進んで、プレミアが付きそうな予感がする。リリース当時のORIGINAL LOVEの作風が好きなら、聴いて損は無いと思う。

 

染谷俊「マーガレット」

マーガレット

マーガレット

 

染谷俊は昨年に初期のアルバム3作を聴いてハマった。尾崎豊を彷彿とさせる力強いメッセージ性に溢れたロックナンバーが印象的だったが、それと同じくらいポップな要素も持っており、その両面に魅かれた。それはピアノロックならではの魅力と言えるだろう。

今作は社会派な要素が少し薄れ、ラブソングが多くなった。そのため、ポップ性が前面に出た作風となっている。ただ、優れたメロディーメーカーとしての実力を実感させてくれるような曲が揃っている。どこまでも真っ直ぐなメッセージも、これまでと何ら変わらない。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

詳説・収穫月間MVP 2018年3月編

管理人のツイッター界隈では毎月第2土曜日恒例?の行事である「#収穫月間MVP」の発表日がやって来た。

 

何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。

 

「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。

以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。

受賞作品と同時に「惜しくも受賞を逃した作品」も発表しているが、これは「他の月だったら受賞しただろうになあ…」「紹介しないでおくのはもったいないかな…?」と思った作品たちである。こちらもMVPと同じくらい素晴らしいと思ったし、他の方にも聴いていただきたい作品だ。

 

長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。

 

初めまして部門

 

飯島真理「ROSÉ」(1983年)

ROSE

ROSE

 

 

田嶋里香「Greetings」(1996年)

Greetings

Greetings

 

顔見知り部門

 

スターダストレビュー「IN THE SUN,IN THE SHADE」(1989年)

IN THE SUN,IN THE SHADE

IN THE SUN,IN THE SHADE

 

アツミサオリ「空色ノスタルジー」(2006年)

空色ノスタルジー

空色ノスタルジー

 

惜しくも受賞を逃した作品

初めまして部門

森丘祥子「Pink&Blue」(1990年)

・MAYUMI「The Art Of Romance」(1993年)

・詩人の血「とうめい」(1990年)

米川英之「HALF TONE SMILE」(1994年)

佐藤聖子「SATELLITE☆S」(1995年)

・Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」(2013年)

 

顔見知り部門

・D-PROJECT「PAGES」(1993年)

・ANNA BANANA「High-Dive」(1993年)

・染谷俊「マーガレット」(1998年)

 

このような顔ぶれとなった。いつになく、女性ボーカルの作品が多めな印象がある。特に意識していたわけではないが。
ここからは、受賞した4作の簡単な感想を書いていく。

 

 

飯島真理「ROSÉ」…飯島真理は「愛・おぼえていますか」をかなり前に聴き、その曲しか知らない状態だった。その頃から、透明感と可愛らしさとを併せ持った歌声に魅かれていたが、本格的に作品を手に取ったのは今回が初だった。
坂本龍一がプロデュースを手掛けただけあって、全編通してシンセが大活躍している。実力派ミュージシャンが多数参加したことによって生まれた、隙のない生音としっかり両立している。徹底的に作り込まれているのに、どこまでもポップに仕上げるそのプロデュース能力に圧倒されたが、飯島真理のメロディーメーカーとしての実力にも驚かされた。どことなくひねくれた展開を見せつつも、サビで一気に聴き手の心を掴んで離さない。
歌声は期待していた通りだった。最初は「べたべたしてるなあ…」と思ってしまったのだが、あっという間に慣れて、心地良いものに変わる。その歌声は、幻想的な今作の世界観を演出していた。一曲一曲の完成度も素晴らしいものがあった。1stにして最高傑作と称されることが多いのも頷ける、確かな名盤だった。飯島真理の作品を、もっと聴き込んでいきたい。

 

 

田嶋里香「Greetings」…いつからかはわからないが、「90年代のガールポップを深堀りしてみよう!」と思い立って、その手のアーティストの作品を色々と漁り始めた。その中で作品を入手して、ハマったのが田嶋里香だった。
「声が美人」という何とも気持ち悪い表現をしてしまうのは恐縮だが、まさにそのようなフレーズがよく似合う。ふんわりしていて、聴いていて心地良い歌声。つまりは自分にとっての「理想の女性ボーカル」である。

それに確かなポップ性を持った曲が並んでいれば、まずハズレは無い。90年代特有の、キラキラシンセサウンドが多用されたポップスには一切の隙がない。1stアルバム「RIKA」も聴いて良いと思ったのだが、こちらは田嶋里香にハマるきっかけとなった「My Friend」が収録されているので、今作に僅差で軍配が上がった形。田嶋里香はアルバム未収録のC/W曲が多いので、シングルを気長に探していきたいと思う。

 

 

スターダストレビュー「IN THE SUN,IN THE SHADE」…スターダストレビューは、かなり前から楽曲やその名前を知っていた。とはいえ「今夜だけきっと」「夢伝説」「木蘭の涙」の3曲しか知らなかったのだが、それでも好きなバンドだった。先月になって、深く聴いてみようとふと思い、オリジナルアルバムを入手した形だ。

洗練された、都会的な雰囲気に溢れた作品だった。それでいて、どの曲もポップ。ほとんどの楽曲の作曲、全曲の編曲を三谷泰弘が手がけていたことには驚いた。個人的には、山下達郎のライブでコーラスを担当しているイメージが強かったためだ。スターダストレビューに在籍していたことは知っていたが、楽曲制作にここまで大きく関与していたとは思わなかった。ボーカリストとしても、根本要に負けず劣らずの存在感を発揮していた。

春に聴いても十分楽しめたが、夏が似合う曲が多く並んでいるので、夏に聴いたらもっと楽しめると感じた。今作でスターダストレビューにハマれたので、他の作品もどんどん聴いていきたいと思う。

 

 

アツミサオリ「空色ノスタルジー」…アツミサオリは昨年「もう少しもう少し…」のシングルを入手していた。歌声が自分好みで、もっと聴いてみたいと思っていたのだが、肝心のアルバムが中々見つからずに悶々としていた。それから1年が経って、やっと今作を入手することができた。今作はフォロワーさんの好きなアルバムランキングで紹介されていて、名盤であることはある程度察しがついていた。

「ギター系女性シンガーソングライター界隈の傑作」とでも言いたくなるような作品だった。どこをどう切り取ってもポップ。全曲がしっかりと耳に残った。アツミサオリ特有の、ふわっとした可愛らしい歌声がとにかく映える曲ばかり。シンプルで温かみのあるバンドサウンドもたまらない。入手するまで苦戦したのに見合うだけの、確かな名盤だった。これからもずっとお世話になりそうだ。

 

とりあえず、こんな感じ。「惜しくも受賞を逃した作品」の感想はまた後日。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年2月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年2月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年2月は中々の激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫することができました。

 

それでは、「惜しくも受賞を逃した作品」を挙げていきます。

 

【初めまして部門】

原田真二「DOING WONDERS」(1986年)
一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」(2010年)
黒川芽以「10 sprout」(2007年)

豊崎愛生「love your life,love my life」(2011年)
・benzo「DAYS」(1999年)

 

【顔見知り部門】

黒沢健一「Focus」(2009年)
GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」(1990年)
角松敏生「TOUCH AND GO」(1986年)
米光美保「FOREVER」(1995年)
山下達郎「POCKET MUSIC」(1986年)

 

まずは初めまして部門から。

 

原田真二「DOING WONDERS」

DOING WONDERS

DOING WONDERS

 

原田真二は前から名前を知っていたが、作品を入手することはないという状態だった。どうしてもデビュー当初の楽曲の印象が強かったのだが、80年代の作品の評価もかなり高かった上に、音楽性が自分好みだと知ってからは気になっていた。そして、入手して聴いたのが今作。

「なんだこの耽美的な作品は…」今作を聴き終えてすぐに、このような感想が出てきた。まるでPrinceのようにファンキーで、官能的で、美しい、何よりポップな曲が揃っていた。

今作には、僕の知っているデビュー当初のアイドル同然だった原田真二はいなかった。全曲の作詞作曲編曲プロデュースに加え、ほとんどの楽器の演奏を自らこなす天才的なアーティストの姿があった。そして、メロディーメーカーとしての卓越した実力を遺憾無く発揮していた。僕は原田真二の才能にもっと溺れて圧倒されたいと思った。

 

一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

 

一風堂は「すみれSeptember Love」しか知らなかったが、久し振りに聴き返して、そのサウンドの格好良さに惚れ直した。

「80年代を深掘りする」「ニューウェーブニューロマンティックに詳しくなる」これらの目標を年初めに立てた僕にとって、一風堂はその二つを達成する存在だった。このような経緯から、このベスト盤を入手した。オリジナルアルバムはオンラインショップ限定販売なので仕方がない。

今作には、今聴いても「格好良い」と感じられるだけの曲が揃っていた。凝った要素と親しみやすさを絶妙なバランスで併せ持った曲たちが素晴らしい。様々なジャンルを自由自在に行き来して、少々ひねくれたポップスやロックを作り出すその技術に圧倒された。

音楽性は多少違うが、一風堂YMOに匹敵するくらい先鋭的な音楽をやっていたバンドではないかと感じた。オリジナルアルバムや、土屋昌巳ソロにも手を伸ばしていきたい。

 

黒川芽以「10 sprout」

黒川芽以は女優としてのイメージしかなかったが、フォロワーさんの布教によって歌手活動も行っていたことを知った。歌の上手い下手に限らず、女優の音楽活動というのは割と好きだ。

あるフォロワーさんが自分より一足早く今作を入手し、その良さを語っていた。それに触発された僕はすぐに入手した。

聴いていて心地の良い歌声に加え、一曲一曲の完成度もかなり高かった。数曲は黒川芽以自らによる作詞や作曲が行われていることを知って、驚いた。音楽活動は今作を最後に終わってしまったわけだが、続けてほしかった。「理想の女性ボーカル」に入るくらいには好きな歌声である。

 

豊崎愛生「love your life,love my life」

love your life,love my life(初回限定盤)(DVD付)

love your life,love my life(初回限定盤)(DVD付)

 

僕は元々、声優の作品には全く無頓着であった。しかし、花澤香菜の作品を聴いてからは様々な声優の作品に手を出すようになった。花澤香菜が「理想の女性ボーカル」なので、他の声優の作品を聴けばより効率良くそのような存在に出逢えるのではと考えたからだ。そして、出逢ったのが豊崎愛生の1stアルバムである今作。

ふわふわとした可愛らしい歌声。聴いていて思わずニヤニヤしてしまった。豊崎愛生がよく聴いているというアーティストから提供された楽曲も、そのラインナップに恥じない確かなクオリティがあった。お洒落な音作りが絶品。一聴しただけですっかりハマってしまった。同じ月に2ndアルバム「Love Letters」も入手して楽しんでいる。まだまだ聴き込んでいきたい。

 

benzo「DAYS」

DAYS

DAYS

 

benzoというバンド名も作品名も知らなかったが、派手なジャケ写は何となく見覚えがあった。90年代後半のシティポップの名盤として紹介されることが多かったからだろうか。また、サニーデイ・サービスのファンなので、benzoのメンバーだった高野勲の活躍も、今作を手に取る前から知っていた。

いざ聴いてみると、どこか懐かしくお洒落な楽曲に魅せられた。洋楽からの影響をサウンド面で表現しつつも、曲全体としては日本的な情緒を漂わせる。そのセンスが絶妙だった。この手の音楽は、時代を経ても変わらずに楽しめると思う。これからも定期的に聴いていきたい。

 

【顔見知り部門】

 

黒沢健一「Focus」

Focus

Focus

 

僕はL⇔Rが大好きでよく聴いているのだが、黒沢健一のソロはそこまで聴いてはいない。作風の違いははっきりと理解しているのだが、どうしてもL⇔Rの作品に集中して聴いてしまう。そうした状況で入手したのが今作。

30分台というかなり短い作品ではあるが、どの曲も本当にポップでしっかり耳に残る。天才ポップス職人としての実力が冴え渡っているのがよくわかった。歌声こそ前よりも変わっていたが、メロディーに関しては一切変わりが無かった。日常のワンシーンに寄り添うような、優しく美しい曲たち。これぞポップス!と言いたくなるような作品だった。「first」「B」と今作しか持っていないものの、その中だと最も好きな作品になった。黒沢健一のソロ作品はまだまだ持っていないものが多いので、少しずつ集めていきたい。

 

GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」

瓦礫の街

瓦礫の街

 

GRASS VALLEYは昨年の11月に初めて聴いて、その格好良さに魅せられた。「80年代にもこんなバンドがいたのか!」と衝撃を受けたのと同時に、ニューウェーブニューロマンティックに興味を持つきっかけとなった。いつのまにか、GRASS VALLEYは自分にとって大きな存在になっていた。

今作もやはり、全く期待を裏切らない力作だった。ドラムの上領亘が脱退する前にリリースされた最後の作品で、バンドとしての形を何とか存続させるためにコンセプトアルバムの形式をとっている。戦地に住む少年少女の物語…という感じだろうか。聴いていて、どんどん作品の世界に引き込まれていくような感覚があった。格好良いのに、どこか幻想的な雰囲気を持ったGRASS VALLEYならではの楽曲はこれまでの作品と何ら変わっていない。

これまでに入手した作品もハマったが、今作も愛聴盤となりそうだ。

 

角松敏生「TOUCH AND GO」

Touch And Go

Touch And Go

 

角松敏生は前から好きなアーティストだが、ほとんどの作品が高価ということもあって、中々深く聴き込めていないという状態だった。ただ、1月に「AFTER 5 CLASH」を聴いてその格好良さに圧倒されて、同じく人気作である今作を手に取った。

当時としては最新鋭のエレクトリックサウンドと、隙のないバンドサウンドとを両立させたAORやファンクを楽しめた。コンパクトな作品ではあるが全曲が存在感を放っていて、聴きごたえが凄い。キレの良いファンクから、聴き惚れてしまうようなバラードまで幅広い。曲順の妙とでも言うのか、何度聴いても聴き飽きない。卓越したメロディーメーカー・サウンドクリエイターであったことの証左となる名盤だった。

 

米光美保「FOREVER」

FOREVER

FOREVER

 

米光美保は昨年の12月に「From My Heart」を聴いて、透明感溢れる歌声に魅かれた。今作は「From My Heart」と同様に、角松敏生がプロデュースを手掛けた。近年のシティポップ ・AORの再興の影響を受けてか、プレミアがついているようだ。

プロデューサーのネームバリューを抜きにしても良いと思えるだけの作品だった。プレミアがついているのも頷ける。打ち込みを多用しつつも、しっかりとバンドサウンドと共存させたサウンド面は確かな聴きごたえがあった。一曲一曲の完成度や、米光美保の表情豊かなボーカルも素晴らしい。大橋純子吉田美奈子の楽曲のカバーも収録されているのだが、原曲の存在感に劣らない新たな解釈がされていて楽しめた。シンガーとしての実力の高さを再確認させられた作品だった。「From My Heart」と同じく、好きな作品になった。

 

山下達郎「POCKET MUSIC」

POCKET MUSIC

POCKET MUSIC

 

山下達郎は自分にとっては普遍的な存在にまで上がった、特に好きなアーティスト。しかし、作品が割と高価で出回っていることもあって、オリジナルアルバムは今年に入るまでは中々集まっていない状態だった。

今作がリリースされた頃はデジタルレコーディングが始まったので、山下達郎もそれに対応するために奮闘した「実験作」という位置付けだろうか。音作りに使用したパソコンがクレジットされているのは何とも時代性を感じた。とは言っても、生音とはしっかり共存していた上に、山下達郎らしい普遍性に満ちたポップスの数々は一切変わっていなかった。いつになくメッセージ性の強い、内省的な詞世界も印象的だった。キャリアを通じてもかなり地味な作品だとは思うが、長く聴いていけるような作品だとも感じた。

 

2月も素晴らしい収穫ばかりだった。これからももっと素晴らしい作品に出逢いたい。

とりあえず、こんな感じ。またいつか。

詳説・収穫月間MVP 2018年2月編

管理人のツイッター界隈では毎月第2土曜日恒例?の行事である「#収穫月間MVP」の発表日がやって来た。

 

昨年は無計画に大量の収穫を行っていたため消化に苦戦していたものの、昨年末くらいから計画的な購入を心がけるようになったので消化に苦戦することはなくなった。少しだけ成長したのかもしれない。

 

何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。

 

「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。

以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。

受賞作品と同時に「惜しくも受賞を逃した作品」も発表しているが、これは「他の月だったら受賞しただろうになあ…」「紹介しないでおくのはもったいないかな…?」と思った作品たちである。こちらもMVPと同じくらい素晴らしいと思ったし、他の方にも聴いていただきたい作品だ。

 

長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。

 

初めまして部門

Instant Cytron「Change This World」(1995年)

CHANGE THIS WORLD

CHANGE THIS WORLD

 


米村裕美「もういちどあの場所へ」(1991年)

もういちどあの場所へ

もういちどあの場所へ

 

 

 顔見知り部門

 

・PINK「光の子」(1986年)

光の子

光の子

 

 

山口由子「COVER GIRL」(1996年)

COVER GIRL

COVER GIRL

 

 

惜しくも受賞を逃した作品

初めまして部門

黒川芽以「10 sprout」(2007年)

豊崎愛生「love your life,love my life」(2011年)

原田真二「DOING WONDERS」(1986年)

一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」(2010年)

・benzo「DAYS」(1999年)

 

顔見知り部門

角松敏生「TOUCH AND GO」(1986年)

GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」(1990年)

黒沢健一「Focus」(2009年)

米光美保「FOREVER」(1995年)

山下達郎「POCKET MUSIC」(1986年)

 

このような顔ぶれとなった。先月に引き続き、80年代デビューのアーティストの作品が比較的多くなった。今年の初めに「今年は80年代を掘り下げる」という旨の宣言をしたことが影響しているのだろうか?特に意識しているわけではないのだが。

 

ここからは、それぞれの部門で受賞した4作品の簡単な感想を書いていく。

初めまして部門

 

Instant Cytron「Change This World」…このユニット及び作品を知ったのは去年の12月頃。今作に収録されている「しあわせな時間」をYouTubeで耳にして、ボーカルの片岡知子の可愛らしい歌声や卓越したポップセンスに魅かれて以来、今作を探し求めていた。その1曲だけで今作が素晴らしい作品であり、Instant Cytronが自分好みのアーティストであると判断したというわけだ。

やっと入手して聴いたが、自分の判断は何ら間違っていなかった。聴いているとワクワクするようなきらめき、子供の頃を思い出させてくれるような懐かしさや切なさを持ったメロディーに彩られたポップスが展開されていた。ただただ、聴いていて心地が良い。それは、シンプルなバンドサウンドと、徹底的に練られたホーンやストリングスのアレンジによるものが大きいと思う。

何より、片岡知子の歌声に終始魅了された。自分にとっての「理想の女性ボーカル」に片岡知子が加わった。いつまでだって聴いていたい。どうして終わりが来てしまうのだろう。そう思わせてくれる「しあわせな時間」をくれた。

余談だが、今作の裏ジャケットが大好きだ。小さな頃だけにしか見られなかった、夢の中のような光景が描かれたイラストがたまらない。個人的には、こちらが正規のジャケ写だと思っている。どのアーティストのジャケ写の中でも特に好きな部類に入ってくる。↓こんな感じ。

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米村裕美「もういちどあの場所へ」…米村裕美も昨年の12月に名前を知った。「素直になりたい」を聴いて、ふんわりとした優しく可愛らしい歌声と、懐かしさを感じさせる詞世界やメロディーに魅かれた。しばらく探していたが、先月にアルバム3作を入手して聴いた。

楽曲単位なら、前述した「素直になりたい」(3rdアルバム「うたをうたえば」収録)や2ndアルバム「How are you?」収録の「Treasure」が特に好きなのだが、アルバム単位だと1stの今作が好き。

「子供の頃の夏」をテーマにした、コンセプトアルバムに近い感覚のある作品である。派手さはあまり無い作品なのだが、どの曲も確かなポップ性を持っているので、すぐに耳に残る。当時売り出し中だった編曲家の亀田誠治が全曲の編曲を行なっているが、そのサウンドメイキングの技術が今作の大きな魅力でもある。バンドサウンドを主体にしつつ、シンセを絶妙なバランスで織り交ぜたサウンドは今作の懐かしさや心地良さを効果的に演出している。 

米村裕美はあまり著名なアーティストではないが、再評価されてもいいのではと感じさせてくれる作品だった。決して古びることのない確かなメロディーセンスや、 普遍性のある詞世界の持ち主であることを実感した。

 

顔見知り部門

 

PINK「光の子」…PINKは先月の「惜しくも受賞を逃した作品」で、彼らにハマったきっかけになった3rdアルバム「PSYCHO-DELICIOUS」を紹介したが、今作は2ndアルバム。

「無国籍サウンド」と形容される、後にも先にもPINKしか展開していなかったようなサウンド面が圧巻。それは格好良く、力強く、美しい。そのようなサウンドですらかき消さんばかりの勢いで「雄叫び」を披露する福岡ユタカのボーカルはもはや誰にも止められない。止める気も起こらないほどのパフォーマンスだ。

今作は、最初から最後まで全速力で駆け抜けていくような感覚を持った作品となっている。そのためか、圧倒的なサウンド面やボーカルという魅力がさらに引き立てられている印象がある。もちろん、各楽曲の完成度も素晴らしいものがある。各作品共に聴き込みが浅いので説得力が無いが、今のところPINKの作品の中で一番好き。

 

山口由子「COVER GIRL」…山口由子に関しては、ギターの弾き語りに傾倒した頃の作品を最初に聴いた。その頃は本気でハマるまでには至らなかったものの、昨年末に90年代ガールポップの超王道な作品「しあわせのみつけかた」を聴いて、その歌声やポップ性に魅かれた。今作はその路線を引き継ぎ、さらにポップ性を高めたものとなっている。

今作について、あるフォロワーさんはZARDをやってる」と称していた。「まさか…そんなわけ…」と思って聴いてみたら、おっしゃる通りだった。

「外れ曲無し」とは今作のような作品のことを言うのだろう。10曲で46分程度というかなりコンパクトな作品なのだが、その全ての曲の完成度が高い上に、流れが完璧。そして、全曲が自分好み。

可愛らしさ、透明感、優しさ、力強さ、訴求力…あらゆる要素を備えた山口由子の歌声は、まさに僕にとっての理想そのものだ。他の作品よりもその魅力が遺憾無く発揮されている印象があった。

まだ出逢ってから日が浅いのだが、全ての女性ボーカルの作品の中でも特に好きな作品に入ってくる。そんな確信を持てた名盤だった。

 

とりあえず、こんな感じ。「惜しくも受賞を逃した作品」の感想はまた後日。乞うご期待。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年1月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年1月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年1月はかなりの激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫しました。

 

閑話休題。今回紹介する作品を挙げていきます。

初めまして部門

高橋幸宏「NEUROMANTIC ロマン神経症」(1981年)

斉藤由貴「チャイム」(1986年)

乃木坂46「透明な色」(タイプB・2015年)

・PINK「PSYCHO-DELICIOUS」(1987年)

岡本舞子「ハートの扉」(1985年)

SOFT BALLET「EARTH BORN」(1989年)

 

顔見知り部門

戸松遥「Rainbow Road」(2010年)

SING LIKE TALKING「Heart of Gold」(2018年)

ORIGINAL LOVE「LOVE! LOVE! & LOVE!」(1991年)

・E-ZEE BAND「Paisley Lover」(1990年)

・NICE MUSIC「POP RATIO」(1995年)

遊佐未森「momoism」(1993年)

BUMP OF CHICKEN「jupiter」(2002年)

 

まずは初めまして部門での惜しくも受賞を逃した作品から。

 

高橋幸宏「NEUROMANTIC ロマン神経症

ニウロマンティック ロマン神経症

ニウロマンティック ロマン神経症

 

 今年の管理人がひっそりと打ち出した目標。それはニューウェーブニューロマンティックの知識を深める」というもの。 それの実践にあたって、まず着目したのがこの作品。ほぼ同時期にリリースされたYMOの人気作「BGM」とは似たような作風だという。早速2005年リマスター盤を入手した。

サブタイトル通り、神経質なくらいに作り込まれたサウンド面に圧倒された。高橋幸宏の渋い歌声も印象的だった。予想以上にポップで美しいメロディー揃いだったのも今作に魅かれた理由の一つ。この作品を聴いていてニワカながらに感じたのが、YMOのメンバーの中で一番テクノな方面を追究していたのは高橋幸宏なんじゃないか?」ということ。失礼ながら、YMOの中で最も地味なメンバーだと勝手に思っていた。そのような印象は今作を聴いてすぐに払拭された。他のソロ作品も聴いていきたいと思う。

 

斉藤由貴「チャイム」 

チャイム

チャイム

 

 斉藤由貴に関しては女優のイメージが強く、歌手としては「卒業」や「悲しみよこんにちは」「夢の中へ」のカバーくらいしか知らないという状態だった。ふと聴いてみようと思った際に、今作が比較的人気の高い印象だったので入手した形。

実際に聴いてみると、全曲の質の高さが圧巻だった。サウンド面は全編が打ち込みだが、その当時の音楽に比べるとそれほど派手なものではなく、斉藤由貴のほんわかした歌声の魅力を最大限に引き立てるような仕上がりになっていると感じた。構成としてはバラードが多めなのだが、いかなる曲も自らの世界に落とし込んでいくような斉藤由貴のボーカルが見事だった。とても可愛らしい、それでもどこか神秘的で謎めいた雰囲気を持った歌声。女優として活躍しているのも頷ける。いつ聴いても違和感無く楽しめるような名盤だと思った。

 

乃木坂46「透明な色」(タイプB)

透明な色(Type-B)

透明な色(Type-B)

 

 乃木坂46はフォロワーさんにかなり前から布教されつつも、作品が高価で中々手が出ていない状態だった。この作品はお年玉に物を言わせて購入した。フォロワーさんのツイートやサイトを見ながら、最もバランスの良い形態を選んだつもりである。

やはりメロディーが凄い。そして、知っている曲ばかり。ニワカながらデビュー当初から何となく見てきたのでシングル曲は全て聴き覚えがあった。どの曲も思わず聴き惚れてしまうような美しさと、すぐに耳に残るようなキャッチー性とを併せ持っていた。DISC1を1周聴いただけでハマってしまった。2nd「それぞれの椅子」の通常盤も直後に入手したほど。少しずつではあるが知識を深めていきたい。

 

PINK「PSYCHO-DELICIOUS」 

PSYCHO-DELICIOUS

PSYCHO-DELICIOUS

 

 PINKは80年代を代表するニューウェーブ系バンドにして、「無国籍ファンク」を得意としていた、伝説と言ってもいいほどのバンド。現在はプロデューサーとして活躍する岡野ハジメホッピー神山が在籍していたことでも知られ、再評価が進んでいるためか、どのアルバムもそれなりにプレミアが付いている。それでも地元のブックオフで今作を入手できた。新譜1枚買えてしまうような価格ではあったが。

いざ聴いてみると、その格好良さと意味のわからない世界観に圧倒された。バンドにもかかわらず、ギターがあまり前面に出ないサウンドが印象的で、むしろベースやシンセの主張がかなり激しい。お互いの主張がぶつかり合うようなサウンドを時には切り裂き、時には味方につけるような福岡ユタカの野性味溢れるボーカルが素晴らしい。どこまでも伸びていくような高音や日本語の響きを大切にしている感じも良い。聴いていると思わず笑ってしまうくらい存在感の強いボーカルだ。他の作品も聴いてみたい。

 

岡本舞子「ハートの扉」 

ハートの扉

ハートの扉

 

  岡本舞子は80年代のマイナーアイドルながら、楽曲の質の高さが再評価され、このアルバムは長らくプレミアが付いていたようだ。それが2017年の12月にタワレコ限定で紙ジャケ+リマスター+ボーナストラックで再発された。丁度その時期に岡本舞子や今作の名前を知って気になっていたので「これを逃したら絶対プレミア化するぞ…?」という危機感を感じて購入した。

聴いてみると、確かに洗練された楽曲揃いで存分に楽しめた。80年代を代表する作曲家・編曲家である山川恵津子が全曲の作曲・編曲を担当しており、全体的にシティポップ色の強い内容だった。阿久悠秋元康による詞世界も味わい深いものがあった。楽曲の完成度もそうだが、岡本舞子の歌唱力もアイドル離れした実力があって、前述したサウンド面の魅力を高めていた。半ば衝動買いのような形で購入したが、素晴らしい内容で無事救われた。同時再発された2nd「ファッシネイション」も入手したい。

 

SOFT BALLET「EARTH BORN」

EARTH BORN

EARTH BORN

 

 SOFT BALLETは何となく名前だけ知っていた感じだったが、フォロワーさんのブログで高評価だったので今作にも収録されたデビュー曲「BODY TO BODY」を聴いてハマり、今作を入手した。BODY TO BODYは曲そのものの格好良さもそうだが、癖の強いPVにも引き込まれた。どうやらソフトバレエはPVがハイセンス過ぎることでも有名らしい。

格好良いのにどこか怪しい、むしろ「気持ち悪い」というフレーズが似合いそうな曲を楽しめた。かなりマニアックに作り込んだ作品を想像していたものの、予想以上にポップな曲が多くて驚いた。ポップな方面は森岡賢が、マニアックな方面は藤井麻輝が主に手がけていたようだが、二人の方向性の違いが絶妙にマッチしていた。遠藤遼一の渋い低音ボーカルも男でありながら聴き惚れるような格好良さがあった。よりマニアックな方面を追究した後の作品も聴いていきたい。

 

以降は顔見知り部門での「惜しくも受賞を逃した作品」の感想を紹介していく。

 

戸松遥「Rainbow Road」

Rainbow Road(初回生産限定盤)(DVD付)

Rainbow Road(初回生産限定盤)(DVD付)

 

戸松遥は昨年「Sunny Side Story」を聴いてその明るさ全開のポップな内容に魅かれてハマった。2ndを先に聴いてから1stの今作を聴くという形になったが、作風はそこまで変わらなかったので安定して楽しめた。

「あれ…?歌い方がコロコロ変わってる…?」一曲聴き進める度に思っていたこと。一曲ごとに違うキャラクターを表現するというようなコンセプトの作品らしく、それを忠実に再現していた。タイトルからも察しがつくように、まさに「七色の歌声」と言ったところ。一曲一曲の完成度も冴え渡っており、とにかくポップでキャッチーな曲揃い。適度なアイドル性を持ったガールポップは管理人の大好きな分野である。こんなのハマらないわけがない。

 

SING LIKE TALKING「Heart of Gold」

Heart Of Gold(初回限定盤)(DVD付)

Heart Of Gold(初回限定盤)(DVD付)

 

 SLTは本家ブログ「今日はこんな感じ」で今作以外全てのレビューを行なったくらい好きなグループである。管理人がSLTを聴き始めてから初めてのオリジナルアルバム。ずっと期待していたのでリリースされた時の喜びは大きかった。

シングル曲が多めの構成だったのである程度察しがついていたが、やはり安定感抜群な内容だった。コンパクトな構成は何度でも聴きたくなるような中毒性を生んでいると思う。シングルで聴いた段階では微妙だと思った曲も、アルバムという形で聴くと良い曲だと感じられた。ベテランとなってもなお、新たな音楽性にチャレンジし続けるSLTの勇姿をまだまだ見届けていきたい。

 

ORIGINAL LOVE「LOVE! LOVE! & LOVE!」

LOVE!LOVE!&LOVE

LOVE!LOVE!&LOVE

 

 ORIGINAL LOVEは好きだが、深く聴き込んでいるかと言うとそうでもないという微妙な立ち位置。とはいえ、この1stアルバムはたまたま安く見かけたので購入した。

アシッドジャズやファンク色の強いサウンドがたまらない作品だった。2枚組でそれなりにボリュームのある作品なのだが、演奏に耳を傾けていると思いの外あっという間に終わってしまった。若さを感じさせる田島貴男のボーカルが今とは違った魅力を出していた。ORIGINAL LOVEの場合、アルバム単位で好きな作品はあまり無いのだが、今作はアルバム単位でハマれた。他の作品も少しずつ聴いていきたいと思えた。

 

E-ZEE BAND「Paisley Lover」

PAISLEY LOVER

PAISLEY LOVER

 

 

 E-ZEE BANDは昨年に出逢ってハマったファンクバンド。FLYING KIDSと比べても遜色のないファンキーっぷりに加え、優れたポップセンスに魅せられた。D-51のプロデューサーとしても知られる生熊朗がボーカルを担当していたが、その甘い歌声も魅力的。そんなE-ZEE BANDの1stが今作。

「Paisley」というPrinceを彷彿とさせるフレーズから既に期待していたが、いざ聴いたら日本人離れしたファンクを展開していて圧倒された。最早Princeが乗り移っているかのような生熊朗のボーカルや、何らの隙のないバンドサウンドがたまらない。全体を通して熱のある作風も見事。

E-ZEE BANDのような素晴らしいファンクバンドや今作のような素晴らしい作品が評価されずに埋もれているのが本当に惜しい。今聴いても古臭くないどころか、今聴いても最新鋭の音楽として聴けてしまう感じがする。25年ほど早い音楽をやっていたということだろうか?

 

NICE MUSIC「POP RATIO」

POP RATIO

POP RATIO

 

 NICE MUSICは昨年に、フォロワーさんのブログで作品が高評価されていたのがきっかけで名前を知った。男性二人で少々頼りないボーカル、お洒落なジャケットデザインなどから「フリッパーズ・ギターの後釜」と思っていたのだが、今作の前にリリースされた「ACROSS THE UNIVERSE」を昨年に聴いてその印象を打ち砕かれてハマった。

「ACROSS THE UNIVERSE」と同じく、打ち込み主体のテクノポップ的なサウンドと、ポップで美しいメロディーとの絡みが魅力的な楽曲ばかり。情報を仕入れずに聴いていると、どの曲がシングル曲なのかわからなくなるほどだった。ラストアルバムにして初めて外部のミュージシャンをアレンジに招いたためか、さらに多彩なアプローチがされたサウンドを楽しめた。メロディーも一切のハズレなし。ボーカルの弱さすら気にならないほどの楽曲が揃っていれば駄作だなんて言えるはずが無い。

 

遊佐未森「momoism」

momoism

momoism

 

 遊佐未森は昨年ベスト盤を聴いてその神秘的な世界観に魅せられた。オリジナルアルバムを入手したのは今作が初であった。調べたところかなり人気の高い作品という印象があり、今作ならもっと遊佐未森にハマれると思ったからだ。

「全編ドラム無し」という作風にはかなりの衝撃を受けたが、それでもしっかり成立していた。それだけ徹底的にサウンドを作り込んだということだろう。童話の世界に迷い込んだかのような歌詞とメルヘンな歌声がたまらない。「俺にもこういうのを楽しめる心が残ってたんだ…?」と自分の中に眠る少年の心を蘇らせながら聴いていた。一曲一曲の完成度や流れも淀みのないもので、何度も聴きたくなるような魅力がある作品だった。これからももっと遊佐未森の作品と戯れていきたい。

 

BUMP OF CHICKEN「jupiter」

jupiter

jupiter

 

 バンプはフォロワーさんから「掘り下げてそうで掘り下げてない」という旨のことを指摘されたことがある。ちゃんと聴けばハマるだろうとは思っていたが、中々手を出していなかった。昨年に「ユグドラシル」を聴いて良いなと思ったが、それっきりだった。

天体観測が収録されたアルバム」というイメージで聴いていたが、アルバム曲もしっかり耳に残るような曲ばかりで楽しめた。この作品について調べていたら「青春時代を過ごしている間に聴くべき作品」というような評価があった。確かにそんな気もする。その頃にしかわからないような感情が激しいギターサウンドに乗せて絶妙に描かれていた。何となく、バンプの楽曲の魅力がわかってきた。これでやっとバンプを深掘りできそうだ。

 

1月は素晴らしい収穫ばかりでした。2月はどうなるのでしょうか。どんな作品に出逢えるか楽しみで仕方がありません。

とりあえず、こんな感じ。記事は以上です。