詳説・収穫月間MVP 2019年1月編

受賞作は以下の通り。

 

初めまして部門

 

・microstar「microstar album」(2008年)

マイクロスター・アルバム

マイクロスター・アルバム

 

 

清水宏次朗「MIND BREEZE」(1991年)

マインド・ブリーズ

マインド・ブリーズ

 

 

顔見知り部門

 

佐野元春「VISITORS」(1984年)

VISITORS

VISITORS

 

 

Prefab Sprout「STEVE McQUEEN」(1985年)

スティーヴ・マックイーン

スティーヴ・マックイーン

 

 

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

初めまして部門

 

・The Blue Nile「HATS」(1989年)

ハッツ(デラックス・エディション)(紙ジャケット仕様)

ハッツ(デラックス・エディション)(紙ジャケット仕様)

 

 

エース清水「TIME AXIS」(1993年)

TIME AXIS

TIME AXIS

 

 

・大城光恵「海へ行こうよ」(1994年)

海へ行こうよ

海へ行こうよ

 

 

放課後ティータイム放課後ティータイム Ⅱ」(2010年)

TVアニメ「けいおん! ! 」劇中歌集 放課後ティータイム II(初回限定盤)
 

 

顔見知り部門

大沢誉志幸「CONFUSION」(1984年)

CONFUSION

CONFUSION

 

 

かの香織「カナシイタマシイ」(2001年)

カナシイタマシイ

カナシイタマシイ

 

 

このような顔ぶれとなった。発表からかなり時間が経ってしまったため、受賞を逃した作品も含めて簡単な感想を書いていく。

初めまして部門

 

・microstar「microstar」…自分は元々NICE MUSICというユニットが好きでよく聴いているが、microstarはそのメンバーだった佐藤清喜が飯泉裕子と組んだユニット。

オールディーズからの影響を感じさせる「古びない」メロディーの数々と、生音・打ち込み共に徹底的に作り込まれたサウンドの相性は素晴らしいものがあった。穏やかでゆったりと時間が流れていくような感覚がたまらない。コンパクトな長さも相まって、何度も繰り返し聴いている。NICE MUSIC時代の諸作品を聴いていても思うことだが、佐藤清喜は本当に優れたメロディーメーカーである。新たなポップアルバムの名盤に出逢えた。

 

清水宏次朗「MIND BREEZE」…清水宏次朗は俳優としての姿しか知らないが、かつては音楽活動も積極的に行なっていたようだ。その中でも今作はシティポップ・AORに傾倒した作風のようで、それで名前を知って興味を持った。

その触れ込み通りの作品だった。全編を通して、お洒落で聴きごたえのあるサウンドが展開された曲ばかり。山下達郎角松敏生を彷彿とさせる曲もあった。清水宏次朗の渋い歌声もそうした曲によく合っていたと思う。一曲一曲の完成度も相当に高く、シティポップ・AORが好きな方ならまず外さない作品だろう。

個人的には、自分の好きな80年代バンドの一つであるアイリーン・フォーリーンの安岡孝章が数曲の作曲やアレンジで参加していることに驚いた。まさかこの作品で彼のメロディーセンスを再認識させられるとは思ってもいなかった。内容自体も大好きだが、そうした点でも印象に残った作品。

 

顔見知り部門…

 

佐野元春「VISITORS」…今作は佐野元春のキャリアを通じても屈指の異色な作品として扱われることが多い印象があった。日本におけるヒップホップの先駆けとされることもあり、どのような作品なのかとずっと気になっていた。

自分のイメージする佐野元春の楽曲からはかけ離れた曲ばかりだったが、決して取っつきにくい作品ではなかった。むしろポップな曲も多いため、聴きやすいとさえ感じた。

佐野元春の曲は歌詞も大きな魅力だと思う。今作はいつもに増して歌詞が「突き刺さる」感覚があった。全体を通じてはっきりと意味が分かるものはそこまで無いのだが、断片的な言葉が印象に残って離れない。

今作を語るのは本当に難しい。リアルタイムで今作を聴いたファンはどう感じたのだろう。

 

Prefab Sprout「STEVE McQUEEN」…Prefab Sproutは昨年に聴き始めてハマり、現時点では洋楽の中でも一番好きなバンドとなっている。今作は彼らの出世作及び代表作としてよく取り上げられ、80年代を代表する名盤として紹介されることもある。

パディ・マクアルーンによる美しくポップなメロディーと、緻密に作り込まれたシンセと骨太な生音の絡み。そして、ウェンディ・スミスの透明感のあるコーラス。自分が思うPrefab Sproutの魅力は今作で確立されたと言える。様々なジャンルを消化したメロディーやサウンドに引き込まれるばかりで、あっという間に聴き終えてしまった。またPrefab Sproutが好きになった。

 

惜しくも受賞を逃した作品…

初めまして部門

 

・The Blue Nile「HATS」…The Blue Nileは寡作のシンセポップバンドとして名前を知った。今作は彼らの代表作として挙げられることが多く、収録曲の一つ「The Downtown Lights」を聴いてハマり、すぐに入手した。

今作を初めて通して聴いたのは深夜だった。少し肌寒い中で聴いたのだが、それが今作を楽しむには最適なタイミングだったのではと思う。全編を通して、ボーカルを含めた全ての音が一切の無駄なく鳴らされていた。それがどこまでも甘く美しいメロディーに乗せられる。ここまで幻想的なポップスがあるのかと思った。聴いているうちに夜の世界に溶け込んでいくような感覚があった。それ以来、今作は夜にしか聴いていない。自分にとっては「夜のサウンドトラック」のような存在となっている。

 

エース清水「TIME AXIS」…彼の所属する聖飢魔IIの作品は全く聴いたことが無いのだが、元GRASS VALLEYの本田恭之がサウンドプロデュースに関わっていると知り、今作に興味を持った。

全体を通してAOR色の強いお洒落なポップスの数々を楽しめる作品だった。聖飢魔IIのそれとは全く異なる作風で、後のface to aceでの活動を予見していたかのよう。何より、エース清水によるポップなメロディーと、本田恭之によるカラフルかつ幻想的なシンセの絡みが素晴らしい。「シンセの魔術師」とでも言いたくなるくらい。エース清水と本田恭之は後にface to aceとして活動するわけだが、やはり相性が良かったのだろうと思う。そちらの作品もいずれ聴いてみたいところ。

 

・大城光恵「海へ行こうよ」…大城光恵はフォロワーの好きな女性アーティストという印象があった。YouTubeで何曲か聴いて好印象だったのだが、フォロワーの作った好きなアルバムランキングでかなり上位に入っていたことでさらに興味を持った。

フォークソングからの影響を感じさせる素朴で親しみやすいメロディーと、独特な歌声に引き込まれた。明るくハキハキした可愛らしい歌声と言ったところか…似たような歌声の持ち主はいくらでもいそうだが、意外と思いつかない。90年代ガールポップはそれなりに探索してきたつもりだったが、まだまだ浅かった。もっと好きなアーティストが見つかりそうな気がする。

 

放課後ティータイム放課後ティータイムⅡ」…『けいおん!』は一切観たことがないのだが、豊崎愛生寿美菜子のソロ作品は既に聴いていて好きということもあり、今作にも興味を持った。

聴いていて「!?」となるような詞世界と爽快なバンドサウンドによるポップ・ロックが終始展開されており、聴いていてとても心地良い作品だった。どの曲もメロディーが強い上に、曲ごとにボーカルが異なることもあって、新鮮な気分で聴くことができた。恐らく『けいおん!』を観た上で聴けばもっと楽しめるのだろう。観たいと思ったと共に、他の作品も聴いてみたいとも思った。

 

顔見知り部門

 

大沢誉志幸「CONFUSION」…大沢誉志幸は長らくベスト盤止まりでオリジナルアルバムは聴いてこなかったのだが、昨年に「in・Fin・ity」を入手してからは少しずつ集まってきている。

今作は代表曲「その気×××(mistake)」「そして僕は途方に暮れる」が収録されたヒット作。それだけでなく、銀色夏生(作詞)・大沢誉志幸(作曲)・大村雅朗(編曲)という制作体制の集大成となった作品でもある。外国人ミュージシャンが多数参加したという生音よりも、どちらかというと打ち込みの方が印象に残る。この頃特有のひんやりとした響きの音に包まれるような感覚のある作品で、当時としては最新鋭のサウンドだったのだろうと思う。シングル曲だけのイメージで聴くと少々マニアックな作品という印象もあるが、この手のサウンドが好きな自分はすぐにハマった。

 

かの香織「カナシイタマシイ」…かの香織は去年出逢ったアーティストの中でも特にハマった方に入ってくる。「ポップス職人」という言葉が似合う数少ない女性アーティストだと思う。

今作はインディーズに拠点を移しての作品。タイトル通り「悲しみ」がキーワードとなった曲が並んでいるわけだが、バラードばかりというわけではない。かの香織独特の、美しく盛り上がりのあるメロディーという魅力が遺憾なく発揮された曲が揃っている。徹底的に作り込まれたシンセの音が主体となった、幻想的で聴きごたえのあるサウンド面も素晴らしい。90年代の諸作品と比べても全く遜色が無いどころか、さらに凄みを増している感覚さえあった。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。