詳説・収穫月間MVP 2018年12月編

受賞作は以下の通り。

 

初めまして部門

・シオダマサユキ「SUPER MASTERPIECE」(2008年)

SUPER MASTERPIECE

SUPER MASTERPIECE

 

 

坪倉唯子「Loving You」(1990年)

LOVING YOU

LOVING YOU

 

 

顔見知り部門

 

・SECRET CRUISE「TELL YOU WHAT」(1996年)

Tell You What

Tell You What

 

 

藤井隆「ロミオ道行」(2002年)

ロミオ道行

ロミオ道行

 

 

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

 

初めまして部門

・安部純「Be Mine」(1993年)

ビー・マイン

ビー・マイン

 

 

顔見知り部門

星野源「POP VIRUS」(2018年)

 

・Date of Birth「GREATEST HITS 1989-1999」(1989年)

グレイテスト・ヒッツ1989-1999

グレイテスト・ヒッツ1989-1999

 

 

Venus Peter「SPACE DRIVER」(1992年)

SPACE DRIVER

SPACE DRIVER

 

 

・渡辺信平「VOICES〜to your heart〜」(1990年)

ヴォイセス~トゥ・ユア・ハート

ヴォイセス~トゥ・ユア・ハート

 

 

早速、上記の作品の簡単な感想を述べていく。前回と同じく、発表から時間が経ってしまったため受賞作・惜しくも受賞を逃した作品も今回で書くこととする。

 

・シオダマサユキ「SUPER MASTERPIECE」…今作はとあるフォロワーの好きなアルバムランキングの中でもかなり上位に位置しているので、それで気になって探していた。1年半くらい探し続け、旅先のブックオフで今作を見つけた時には感動したことを覚えている。

ブラックミュージックやクラシック、AORなど多彩なジャンルからの影響が感じられる、美しくポップなメロディーに引き込まれた。また、力強いのに甘い歌声は他のアーティストには中々無い魅力だと思う。大江千里やKANを始めとして、ピアノ系男性シンガーソングライターは自分の好きなジャンルなのだが、また新たに好きなアーティストに出逢うことができた。

 

坪倉唯子「Loving You」…坪倉唯子B.B.クィーンズビーイング系アーティストの作品にコーラスで参加しているというイメージが強かった。完全なソロ作品を聴くのは今回が初だったのだが、自分が想像していた音楽性と全く異なっていて驚くばかりだった。

今作は「おどるポンポコリン」がリリースされる1ヶ月前にリリースされたというが、とても同じ人物が歌っているとは思えないほどに落ち着いた作品。全体的にAOR色の強い作風で、かすれ気味の艶やかな歌声がそうした作風によく似合う。B.B.クィーンズでのボーカルとはかなり違っていて、坪倉の歌唱力を実感させられた。他の作品も聴いてみたいところ。

 

・SECRET CRUISE「TELL YOU WHAT」…SECRET CRUISEは以前聴いたセルフタイトルの1stアルバムを聴いてハマって以来、ずっと2ndである今作を探していた。

シティポップ・AORに傾倒した作風なのは1stと変わっていない。ただ、1stよりも生音が主体となった曲が多く、さらにサウンド面の聴きごたえが増していた。叙情的かつキャッチーなメロディーの数々も素晴らしく、次から次へと好きな曲が出てきた。一周聴き終えた頃にはすっかり大好きな作品となってしまった。90年代はシティポップ・AORの冬の時代とされることがあるが、その中でもここまでの名盤が生まれていたとは…と驚くばかりだった。

 

藤井隆「ロミオ道行」…藤井隆は「light showers」を聴いてハマった。徹底的に作り込まれたコンセプトとお洒落な曲たちに魅かれた。そして、1stである今作を入手したわけだが、期待を超えてくる名盤だった。

松本隆がプロデュースを手掛けたというだけあって、80年代の歌謡曲やシティポップを彷彿とさせる曲が並んでいる。藤井隆本人もその時代の音楽に造詣が深いようで、ボーカルも様になっていた。筒美京平堀込高樹本間昭光といった実力派作家による曲の完成度も素晴らしい。「ナンダカンダ」「アイモカワラズ」がボーナストラック扱いでラスト2曲に収録されているが、アルバムの流れから切って聴くとやはり名曲。

 

惜しくも受賞を逃した作品

初めまして部門

・安部純「Be Mine」…安部純はアイドルへの楽曲提供やアレンジで活躍している印象が強く、シンガーソングライターとして活動していたことを知ったのがつい最近のこと。

シティポップ・AORの色が強いポップスが展開された作品だった。新川博中村哲がアレンジを手掛けただけあって、演奏には相当な聴きごたえがあった。当たり前とでも言うかのごとくキャッチーにまとめられたメロディーの数々は、彼が後に作家として活躍することを予見していたかのよう。安部の爽やかな歌声も心地良く、また自分で歌ってほしいと思った。

 

顔見知り部門

星野源「POP VIRUS」…星野源の作品は前作「YELLOW DANCER」しか持っていないが、それは大好きな作品。ブラックミュージックを王道なポップスと融合させた作風が自分好みであり、今作もそれを楽しみにしていた。

基本的な作風は前作と変わらないが、さらにディープなブラックミュージックを展開している印象があった。正直なところ、全体としては前作ほどのポップ性は無い。お洒落で上質な曲ばかりなのだが、不穏な雰囲気や猥雑さも感じられるところに引き込まれた。そうした「ひねくれた」部分が親しみやすく料理されており、その味付けが素晴らしい作品だった。

 

・Date of Birth「GREATEST HITS 1989-1999」…Date of Birthはちょうど1年前にベスト「King of Waltz」を聴いてハマった。英語詞の曲が多いため、洋楽志向が強いというよりは洋楽そのものをやっているような音楽性が特徴的。

「未来のベスト盤」という旨のテーマの作品らしく、今作は全編英語詞。ギターサウンドを前面に出し、サイケなポップス・ロックが展開された作品となっている。どこかで聴いたことのあるようなサウンドが印象的。それでいて、メロディーはキャッチーかつ美しいものばかり。ねじれたポップセンスがたまらない作品で、Date of Birthにさらにハマった。

 

Venus Peter「SPACE DRIVER」…Venus Peterはかなり前に次作「BIG “SAD” TABLE」を入手した。そちらは日本語主体によるサイケデリックなロックが展開されており、それでハマった。ただ、一般的には今作の方が人気でよく語られる印象がある。

マッドチェスターと呼ばれたジャンルからの影響を感じさせる、サイケなギターポップ・ギターロックが展開された作品。中でも一番好きな曲がオープニングの「Every Planets Son」である。この曲は本家ブログの「2018年に出逢ったベストソング 下半期編」でも紹介したくらい好きな曲。その後も高揚感に満ちた曲が次々と登場する。渋谷系を代表する名盤だろう。

 

・渡辺信平「VOICES〜to your heart〜」…一昨年に2ndアルバム「MUSIC」を聴いてハマった。リゾートミュージックに傾倒していた時期の山下達郎楠瀬誠志郎に似た路線のアーティストで、デビュー作である今作でもその魅力が発揮されていた。

ポップなメロディーとシンセ主体で構成されたキラキラしたサウンドの相性はぴったり。この頃のシンセの音色が好きな自分にはたまらない。渡辺の鼻にかかった甘い歌声による分厚いコーラスワークもそうした魅力をさらに高めている。山下達郎フォロワーであることはよくわかるが、渡辺信平オリジナルの部分も多くある。90年代シティポップにおける良作の一つだと思う。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。