詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年9月編
惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。
初めまして部門
・市井由理「JOYHOLIC」(1996年)
・藤井隆「light showers」(2017年)
・岩﨑元是&WINDY「The all songs of WINDY」(2012年)
・新川忠「Paintings of Lights」(2015年)
・たむらぱん「ノウニウノウン」(2009年)
・浜本沙良「Truth Of Lies」(1995年)
・古家学「僕が歩く場所」(1997年)
・チェキッ娘「CXCO」(1999年)
顔見知り部門
・大沢誉志幸「in・Fin・ity」(1985年)
・かの香織「fine」(1991年)
・THE HAKKIN「情緒」(2015年)
このような顔ぶれとなった。久し振りに多くの作品を入手し、いつもに増して充実した内容となっていると思う。今回の収穫月間MVPの選定はこれまでの中でも特に苦労した。
早速、↑で挙げた作品の簡単な感想を述べていく。
・市井由理「JOYHOLIC」(1996年)
- アーティスト: 市井由理,木暮晋也,小泉今日子,DR.CHEEK,菊地成孔,かせきさいだぁ,中森泰弘,ハラミドリ,エリー・グリーンウィッチ,HICKSVILLE,朝本浩文
- 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
- 発売日: 1996/08/21
- メディア: CD
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市井由理はEAST END×YURIのイメージが強く、ソロ作品は聴いたことが無かった。ソロ歌手・市井由理としての唯一のアルバムが今作だが、渋谷系の隠れた名盤として語られることもあり、それで気になって探していた。
お洒落かつポップ、それでいてどこか斜に構えたような雰囲気を持った曲ばかりだった。渋谷系界隈のミュージシャンが多数参加しただけあって、どの曲にも確かな聴きごたえがあった。市井由理のふわふわとした歌声も不思議とそのような曲やサウンドに合っており、聴いていて心地良かった。隠れた名盤と称されるのも頷けるだけの充実感がある作品。
・藤井隆「light showers」(2017年)
藤井隆は芸人がメインでたまに俳優として活動しているイメージが強く、音楽活動に関しては「ナンダカンダ」しか知らない状態だった。今作はフォロワーが絶賛していたこと、テーマが「90年代のCMソングみたいな曲」という旨のもので興味を持ったため、入手した。確かに聴いてみると、現代の音だが何故か懐かしさを感じさせる曲ばかりだった。「全曲に架空のCMタイアップがついている」という設定だけあって、90年代をリアルタイムで過ごしたわけではないのに、当時の深夜番組のCMでも見ているような感覚に襲われた。今作のダイジェスト動画(架空のCM集)も遊び心に満ちたもので面白い。↓ コンセプトアルバムとして徹底された名盤だと思う。
https://m.youtube.com/watch?v=UVns0T9Gsr4
・岩﨑元是&WINDY「The all songs of WINDY」(2012年)※オリジナルのリリースは1986年・1987年。
岩﨑元是&WINDYは数ヶ月前にフォロワーのツイートで名前を知った80年代のバンド。YouTubeで数曲聴いたところ、大滝詠一や山下達郎、オメガトライブ(杉山清貴)を彷彿とさせる曲が多く、好みのど真ん中だった。オリジナルアルバムは2作のみだが、そのどちらもプレミアがついていてそれなりの高値で売られていた。よく行く中古屋にて、2012年にリリースされた岩﨑元是&WINDYの全曲集である今作がたまたま入荷しており、すかさずそれを購入した形。
爽やかで心地良い、洗練されたリゾートミュージック・シティポップを楽しめた。ウォール・オブ・サウンドを取り入れた、分厚いサウンドやコーラスワークも曲によく合っており、一部のナイアガラ関連のファンにも支持された理由がわかった。岩﨑元是のクセのない歌声も曲の心地良さを演出していた。来年の夏は今作と共に過ごしたいと思う。
・新川忠「Paintings of Lights」(2015年)
新川忠及び今作はフォロワーのブログで紹介されており、それで名前を知った。YouTubeで収録曲の「カミーユ・クローデル」「アイリス」を聴き、どちらも自分好みだったので入手した。
80年代のシティポップ・AORのテイストに加え、シンセポップ・ニューウェーブのテイストも感じさせる作風がたまらない。Prefab Sproutを想起させるサウンドで、透明感があって美しいものばかりだった。西洋芸術の影響を取り入れた詞世界も、甘美なメロディーや幻想的なサウンドとよく合っていた。また、作詞・作曲・編曲・歌・演奏・録音・ミックスとあらゆる工程を自らこなす新川の職人的な姿勢にも驚かされた。作風は違うとは思うが、これまでの2作のアルバムも聴いてみたい。
・たむらぱん「ノウニウノウン」(2009年)
- アーティスト: たむらぱん
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2009/06/03
- メディア: CD
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たむらぱんはCMソングのイメージが強く、独特な歌声とその風変わりなアーティスト名が印象に残っていた。今作はフォロワーの好きなアルバムランキングでも比較的上位に入っており、どのような作品か気になっていた。
聴き流しているだけでも、本当に同じアーティストが作ったのかと思ってしまうほどに多彩な曲調が揃っていた。「変幻自在」というフレーズがよく似合うメロディーメーカーだと実感した。伸びのある澄んだ声も相まって、聴いていて心地の良い曲ばかり。たむらぱん本人による、徹底的に作り込まれたアレンジの数々にも圧倒された。他の作品も聴いてみたいと思った。
・浜本沙良「Truths Of Lies」(1995年)
80年代後半〜90年代後半のマニアックなガールポップ系アーティストを探っていくというのは、今年の自分の収穫生活における大きなテーマの一つだと思っている。その中で見つけたのがこのアーティスト。
当時同じフォーライフ所属だった今井美樹のような甘く艶のある歌声が映える、都会的な雰囲気のある作風だった。シティポップ・AORのテイストを取り入れた曲に加え、ジャズやボサノバの要素を持った曲もあり、サウンド面にも聴きごたえがあった。前作「Puff」も入手したい。
・古家学「僕が歩く場所」(1997年)
古家学は自分よりも先にフォロワーがハマって色々と布教していたイメージが強く、それで自分も気になっていた。YouTubeで今作の収録曲を少し聴いてみたところ、自分の好みだったのですぐに今作を入手した。
浜田省吾を思わせる、ストレートで力強いロック・ポップスを楽しめる作品だった。初めて聴いたはずなのに、遠い昔にどこかで聴いたことのあるような…そうした感覚があった。少し掠れた甘い歌声もかなり好き。自分で好きなアーティストは色々と見つけてきたつもりだが、今回のように見つけられないこともよくある。フォロワーからの布教はそうした存在を拾い上げるきっかけになるので貴重だ。今作はもうハマったので、古家学の他の作品も探してみようと思う。
・チェキッ娘「CXCO」(1999年)
元メンバーの熊切あさ美や下川みくにの影響で、チェキッ娘という名前自体は割と前から知っていた。ただ、曲は全く知らない状態。去年〜今年で一気にアイドルポップスにハマったためチェキッ娘にも興味を持ち、唯一のオリジナルアルバムである今作を手に取った。
充実したコーラスワークが心地良い、どこか懐かしく切ないポップスの数々は自分の求めるアイドルポップスの典型だった。ダンスパフォーマンスに力を入れるアイドルグループは多くあれど、コーラスワークに力を入れるアイドルグループというのはかなり少ないと思う。良い意味での「素人臭い」雰囲気は今でも良いと思えるだけの力がある。
顔見知り部門
・大沢誉志幸「in・Fin・ity」(1985年)
「そして僕は途方に暮れる」はかなり前から好きな曲で、長らくその曲しか知らない状態だった。昨年にベスト盤を入手してバラード以外の面を知って、さらに聴き込もうと思いつつも放置していた。今作はフォロワーのブログで高評価だった上に、PINKのホッピー神山・岡野ハジメ・矢壁アツノブが参加していたため、オリジナルアルバムの中で今作を最初に入手した。
予想通り、生音・シンセ共に凄まじい聴きごたえのある曲ばかりだった。ホッピー神山のアレンジも冴え渡っており、今作の格好良さを演出していた。「そして僕は途方に暮れる」の影響で、大沢誉志幸はバラードシンガーとしてのイメージがかなり強い。当然今作でもそうした曲はあるのだが、それ以上にファンクナンバーの印象が強い作品。ファンクナンバーでは勢いのあるボーカルを聴かせてくれる。大沢誉志幸はバラードシンガーだと思っている方にこそ聴いていただきたい名盤。
・かの香織「fine」(1991年)
かの香織は今年から聴き始めた女性アーティストの中でも特に好きな方に入ってくる。渋谷系やシティポップのテイストを感じさせる、お洒落でポップな作風は自分好みそのもの。自分にとっては、鈴木祥子と並んで数少ない「女性ポップス職人」と言える存在。
今作はかの香織のソロデビュー作で、佐久間正英が全面的なプロデュースを手掛けている。ショコラータ時代のエキセントリックな部分はぐっと抑え、ナチュラルで親しみやすいポップスを追求した作品という印象。シンセ主体の飾り過ぎないアレンジもそれを引き立てる。どの曲もしっかりメロディーが残るのが見事。かの香織の卓越したポップセンスには脱帽するばかり。
・THE HAKKIN「情緒」(2015年)
THE HAKKINは1月に前作「晩成」を入手し、80年代のソニー系バンドのような楽曲の数々に魅了された。楽曲だけでなく、アートワークの数々も凝っている。実際にアルバムを入手していただけるとわかるが、ケースのあらゆる部分に80年代のソニー系アーティストの作品を思わせる部分が散りばめられている。その手の作品を集める自分は思わずニヤリとしてしまった。「晩成」の次作で、最初で最後のフルアルバムとなった今作もその路線を突き詰めたものだった。
80年代のニューウェーブ・ニューロマンティックを今の音で蘇らせたような曲たちは、世代ではないのに何故か懐かしいと思ってしまうほどだった。色気のある低音が持ち味のボーカル・長澤佑哉の歌声が映える曲が揃っており、ギターの浅野麻人・ベースの春日賀賀も味わい深い演奏で曲を彩る。80年代に影響を受けた若手アーティストは多くいるが、中でも80年代後半のバンド(特にソニー系)を彷彿とさせる曲を展開しているのはTHE HAKKINくらいだったと思う。2015年11月に「バブル崩壊」と称して活動を終えたが、それが非常に惜しまれる。
今回はこんな感じ。次はまたいつか。