詳説・収穫月間MVP 2018年5月編
前回の発表は少し遅れる形だったものの、今回はタイムリーに行う。
何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。
「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。
以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。
長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。
初めまして部門
・岩下清香「眠らせないで」(1996年)
・佐藤博「AWAKENING」(1982年)
顔見知り部門
・原田真二「Magical Healing」(1985年)
・詩人の血「What if…」(1989年)
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惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。
初めまして部門
・坂口有望「blue signs」(2018年)
・中里あき子「1/200,000の都会」(1987年)
・かの香織「裸であいましょう」(1995年)
顔見知り部門
・原田真二「Urban game」(1988年)
・和田弘樹「Wonder Hero Ⅱ Brand-New Atlas」(1996年)
このような顔ぶれとなった。久し振りに80年代に傾倒したような印象がある。意識していたわけではないのだが。
それでは、受賞した作品の簡単な感想を書いていく。
初めまして部門…
岩下清香「眠らせないで」…岩下清香は全く知らなかったが、今作に参加した作家陣がかなり豪華だったので、それで気になって今作を探し始めた。amazonのページを見る限り、それなりにプレミアがついているようだったが運良く500円で入手することができた。
70〜80年代のシティポップ・AORに傾倒した作風だった。サウンド面の聴きごたえはもちろんのこと、岩下清香の清涼感溢れる歌声も素晴らしいものがあった。同じような歌声の持ち主は沢山いそうなのだが、不思議といない。集中して聴いていても、何かのついでで聴き流していても心地良い曲ばかり。プレミアが付いているのも頷ける作品だった。ここ最近はシティポップ・AORの人気が高まっているので、再発されたら間違いなく再評価されるような作品だと思う。
佐藤博「AWAKENING」…3年ほど前から気になりつつも、何故か放置してきた作品だった。2014年リリースのスペシャル・エディション盤を先月にやっと入手した。日本のシティポップ・AORにおける名盤として挙げられることも多く、かなりの期待をして聴いた。期待した通りどころか、期待以上の作品だった。
佐藤博自らのボーカルの他に、ウェンディ・マシューズという女性歌手をフィーチャーした上質なポップスを堪能できた。シティポップ・AOR、フュージョン、ソウル、ファンク…様々なジャンルを内包した曲は非常に爽やかで心地良いものだった。リンドラムというリズムマシンを全編に渡って使用しているが、そう知っていないと打ち込みだと思えないほどにグルーヴ感がある。
これからはどんどん暑くなっていく。今年の夏を過ごすお供として、まだまだ聴き込んでいきたいと思う。
顔見知り部門…
原田真二「Magical Healing」…原田真二は2月に「DOING WONDERS」を聴いて以来ハマった。今作はそれと同じようなエレクトロファンク路線の作品なので、まず外れは無いと思って聴いた。
全体的に打ち込み主体のサウンドながら、かなりダンサブルなものが揃っていた。最初からテクノやニューウェーブをやっていたのかと思うほどに作り込まれた打ち込みサウンドは圧巻。タイトかつ力強いリズムはこの頃の音楽界特有のものと言えるが、それを十分に堪能することができた。原田真二の作品に共通する、卓越したポップ性も今作では特に冴え渡っていた。どれだけ捻った曲でも、サビは確実にキャッチーなものに仕上げる。一聴しただけでも多くの曲が印象に残った。原田真二の長いキャリアの中で生み出された全ての作品を聴いたわけではないのだが、今作は特に気に入った。
詩人の血「What if…」…詩人の血は3月に「とうめい」を聴いて、その捻くれたポップセンスに魅せられた。先月に今作の他にも「cello-phone」「花と夢」を入手して聴いたが、その中でも今作が一番ハマったので受賞となった。
1stアルバムにありがちな若々しさや初期衝動はほとんど感じられないのだが、緻密に作り込まれたサウンドや心地良いメロディーに引き込まれた。全体的に派手さは控えめで聴かせる曲が多くなっているが、それにも耐え得るメロディーセンスやサウンド構築の技術が素晴らしい。ボーカルの辻睦詞の変幻自在な歌声にも圧倒されるばかり。メンバーの一人だった渡辺善太郎は後に作編曲家・プロデューサーとして活躍するわけだが、その素養はキャリア最初期の今作から発揮されていたのがよくわかる。
当時としては異色過ぎたのかもしれないが、今聴いても古さを感じないどころか新鮮ささえ感じる。再評価されてほしいバンドである。
とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。