詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年4月編

「収穫月間MVP」を受賞する作品があれば、それぞれの部門で2作のみという枠の都合によって惜しくもそれを逃してしまう作品も生まれる。しかし、そのような作品たちも受賞した作品と同じくらい良いと思ったわけで、それを広めずにいるのはあまりにも勿体無い。そのような理由で毎回「惜しくも受賞を逃した作品」を受賞した作品とともに発表しているのだが、今回はうっかりその発表を忘れてしまった。痛恨のミスだった。そのため、そのラインナップは今回のブログで初公開となる。

 

初めまして部門

辻詩音「Catch!」(2010年)

斉藤和義「Because」(1997年)

菊池桃子「ADVENTURE」(1986年)

SUICIDE SPORTS CAR非情のライセンス〜LICENSE TO KILL〜」(1999年)

・DOVE「Parallel Trip」(1990年)

水谷紹「NIGHTINGALE」(1990年)

 

顔見知り部門

佐藤聖子「CRYSTAL」(1995年)

鈴木祥子「Candy Apple Red」(1997年)

 

このような顔ぶれとなった。新しく作品を手に取ったアーティストがかなり多かったため、アンバランスなラインナップとなっている。それでは、これらの作品の簡単な紹介をしていこう。まずは初めまして部門から。

 

 

辻詩音「Catch!」

Catch!(初回生産限定盤)(DVD付)

Catch!(初回生産限定盤)(DVD付)

 

この作品はいつもお世話になっているフォロワーさんの好きなアルバムランキングの比較的上位に入っていることから、前から探していた。半年以上探していたが、やっと先月に入手できた。自分が入手したのとちょうど同じくらいの時期に、別のフォロワーさんも今作を聴いてハマっていた。良いタイミングで手に入れることができたと思う。

とにかく明るく、ポップな作風がたまらない。少しクセがありながらも、それでも可愛らしい歌声は自分の好みそのもの。曲や聴き手に寄り添うような歌声だと感じた。ポップナンバーはもちろんのこと、バラードやロックナンバーでもその歌声が魅力的だった。全曲の完成度もかなり高く、ギター系の女性シンガーソングライターの新たな名盤に出逢えたと思った。

 

斉藤和義「Because」

Because

Because

 

斉藤和義は著名な楽曲しか知らない状態だが、「ちゃんと聴けばハマる」と思っていたアーティストの筆頭格だった。最初はベスト盤から入ろうと思っていたのだが、今作から聴き始めた。ファン人気の高い「月影」や代表曲「歌うたいのバラッド」が収録されていたからだ。

渋くて、格好良い。自分の思う斉藤和義の楽曲像そのままだった。ダラダラしているようでいて、緊張感もある。独特な雰囲気を持った曲揃いだった。ロックンロール、ブルース、ポップス、昭和歌謡、ジャズなど実に多彩なジャンルを取り込みつつも、まとまりがあるところに驚いた。それは確かなメロディーを持っているからだろう。もっと深く聴いてみたいと思った。

 

菊池桃子「ADVENTURE」

ADVENTURE

ADVENTURE

 

菊池桃子はラ・ムーの作品を先に入手するという不思議な形でハマった。そのため、顔見知り部門にしようかと思ったものの、ソロとしての名義の作品は今回が初だったので初めまして部門にした。

作家として全盛期にあった林哲司が作曲・編曲を行なっているため、まず楽曲面にハズレはない。洗練されたシティポップ・AOR系のサウンドには一切の隙がない。そのようなサウンドに乗っかる、菊池桃子のふんわりとした歌声が何とも心地良い。どうやら菊池桃子は歌が下手という扱いだったようだが、自分はそのような印象は全く持たなかった。アイドルに歌唱力がそれほど求められなくなった世代の人間だからだろうか。他の作品も聴いてみたいところ。

 

SUICIDE SPORTS CAR非情のライセンス〜LICENSE TO KILL〜」

非情のライセンス?LICENCE TO KILL

非情のライセンス?LICENCE TO KILL

 

GRASS VALLEY、REV、ソロと様々な活動を展開し、その全てで全く異なる音楽を披露してきた出口雅之だが、SUICIDE SPORTS CARはスパイ映画をテーマにしたユニット。出口雅之の経歴の中でも最も著名だと思われるREVは全く聴いていないのだが、GRASS VALLEYを聴いてその歌声に魅せられた。それでこのユニットの名前を知った。

スパイ映画はほとんど観たことが無いのだが、そのような自分でも「それっぽい」と思うような、お洒落で格好良い楽曲が並んでいた。マリンバ担当のメンバーがいるからだろうか?Mr.SUICIDE SPORTS CARこと出口雅之のキザなイメージのある歌声もまた、今作のコンセプトによく合っていた。ORIGINAL LOVEや、田島貴男がボーカルを担当していた頃のピチカート・ファイヴが好きなら聴いて損は無いと思う。

 

DOVE「Parallel Trip」

Parallel Trip

Parallel Trip

 

DOVEは中古屋で作品を見かけて初めて名前を知ったバンドだった。そして、帰ってから楽曲をYoutubeで聴き、ハマれそうだと思ったので作品を入手した。その店に作品が揃っていたため、あっさりと3作を揃えてしまったのだが、その中でも今作が一番好きなので今作を紹介する。

3人組とは思えないほどに分厚く、力強いバンドサウンドが主張したロックやポップスを楽しめる。ニューウェーブを思わせる曲もある。The Policeを彷彿とさせるバンドと言うべきか。聴いていると、演奏や歌声の格好良さと歌詞の幻想的な世界観に引き込まれてしまう。ベースかボーカルというのもかなり凄い。この手のバンドは数多くいそうなのだが、意外といないもの。自分がラッキーだっただけで、作品を入手するのは少々面倒な印象があるが、YouTubeで楽曲を聴いて興味を持った方には是非とも入手していただきたいと思う。

 

水谷紹「NIGHTINGALE」

NIGHTINGALE

NIGHTINGALE

 

水谷紹は、自分が影響を受けた方のブログで紹介されていたのでその名前を知った。「ポスト高野寛というような売り出し方をされていたようで、それで興味を持った形。

いざ聴いてみると「高野寛でさえも上回るのでは…?」と思うほどにひねくれた楽曲の数々が展開されていた。ポップでありながら、一癖も二癖もあるメロディーや「ぶっ飛んだ」「人を食ったよう」といったフレーズが似合う詞世界はインパクト抜群。一度聴こうものなら、しばらく耳を駆け巡ってしまうようなキャッチー性もたまらない。シンセを駆使した、様々なギミックが散りばめられたサウンド面も圧巻。それでいて、好青年的なイメージのある容姿や歌声である。ここまでほのぼのとした狂気を帯びた作品も中々無いのではと思う。

 

 

次は顔見知り部門。

 

佐藤聖子「CRYSTAL」

CRYSTAL

CRYSTAL

 

佐藤聖子は先月に「SATELLITE☆S」を聴いてハマったが、今作はその次作。セールスが伸び悩んで打ち切られてしまったのか、アルバムのリリースは今作がラストとなった。

そのせいなのかはわからないが、今までよりも「聴かせる」曲が増えた印象がある。ポップ性で言うなら「SATELLITE☆S」の方があったと思うが、今作は佐藤聖子の歌声という魅力をより堪能できるという印象がある。どちらの路線も好きである。自作の楽曲の完成度もかなり高く、シンガーソングライターとしても才能が開花する寸前だったのではないか。今作以降はシングルのみのリリースとなってしまったのは本当に残念に思う。

 

鈴木祥子「Candy Apple Red」

Candy Apple Red

Candy Apple Red

 

鈴木祥子は自分の特に好きな女性アーティストの一人。自分は初期の名盤と言うべきポジションの2ndアルバム「水の冠」が一番好きなのだが、今作はロックに傾倒してからの作品。かなりの期待と少しの不安を抱いて今作を聴いた。

冒頭の楽曲を聴いただけで、自分が思う鈴木祥子の楽曲像ではなくなっていたのがわかった。サウンドも、詞世界も、歌い方も明らかに違う。これだけなら酷評してしまっているのだが、ハマった理由はメロディーにある。美しくポップなメロディーはこれまでとは変わらないどころか、さらに高められている印象があったからだ。今作を聴き始めた時は違和感があったのだが、聴き終えると「これはこれで良いじゃん」と思えた。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。