詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年3月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年3月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年3月は中々の激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫することができました。今回は特に初めまして部門の方で、選択に迷いました。

 

それでは、「惜しくも受賞を逃した作品」を挙げていきます。

 

【初めまして部門】

森丘祥子「Pink&Blue」(1990年)

・MAYUMI「The Art Of Romance」(1993年)

・詩人の血「とうめい」(1990年)

米川英之「HALF TONE SMILE」(1994年)

佐藤聖子「SATELLITE☆S」(1995年)

・Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」(2013年)

 

【顔見知り部門】

・D-PROJECT「PAGES」(1993年)

・ANNA BANANA「High-Dive」(1993年)

・染谷俊「マーガレット」(1998年)

 

まずは初めまして部門から。

 

森丘祥子「Pink&Blue」

ピンク&ブルー

ピンク&ブルー

 

森丘祥子は「夢で逢えたら」のカバーで名前を知り、その可愛らしい歌声に魅かれた。そのカバーは次作のタイトル曲として収録されるわけだが、今作はアイドル然としたポップスが並んだ作品である。元々アイドルとして活動していたので「然」と付けるのも少々違和感があるが。

歌声という特色を最大限に生かすようなポップな曲ばかりとなれば、まずハズレは無い。オリジナル曲の完成度もさることながら、ハイファイ・セットの「冷たい雨」のカバーも印象的だった。ウォール・オブ・サウンド風のアレンジがされているのだが、原曲には無い新たな魅力に気付かせてくれるようなカバーだった。この手のガールポップ系のアルバムはとにかく自分好み。もう少しこの路線の作品を聴いてみたかった。

 

MAYUMI「The Art Of Romance」

The Art Of Romance

The Art Of Romance

 

MAYUMIは作曲家として活躍しているイメージがあったが、ソロアルバムを入手したのは今回が初だった。とは言っても、作曲家やプロデューサーに徹する形であり、本人がボーカルを担当しているわけでも演奏をしているわけでもない。

3人の外国人ボーカル(男性2人・女性1人)を起用し、曲によってその3者を使い分ける…という形の作品。今井美樹稲垣潤一に提供した曲のセルフカバーもあるのが特徴。当然ながら全編英語詞の作品である。今作にハマったのは、何よりもサウンド面と言える。シティポップ・AORの界隈に教科書があるとすれば、それで紹介しても良いと思えるほどに王道なAORサウンド。演奏には外国人の実力派ミュージシャンを多数起用しているため、聴き心地がとても良い。AORならではの繊細さを漂わせつつも、ガールポップ的なキャッチー性を忘れないMAYUMIのメロディーも絶品。90年代のAORの隠れた傑作である。

 

詩人の血「とうめい」

とうめい

とうめい

 

詩人の血は個人的に好きなレコード会社であるEpicソニー所属だったということや癖の強い名前であることもあって、前から名前だけは知っていたバンドだった。作品を入手したのは今回が初。

名前やボーカルの辻睦詞の容姿だけ見てV系のような作風なのかと思っていたが、実際に聴いてみると渋谷系を通過したようなお洒落かつひねくれたポップスが展開されていた。辻睦詞による独特な詞世界やボーカルは、一度聴けば忘れられない確かなインパクトがあった。多彩なジャンルを取り入れた、カラフルでいびつなサウンドもたまらない。「心地良い違和感」とでも称するべきか。このような楽曲たちは、今聴いても古臭さが無い。他の作品も聴いてみたいと思った。

 

米川英之「HALF TONE SMILE」

HALF TONE SMILE

HALF TONE SMILE

 

米川英之C-C-Bに所属していたというイメージが強いものの、ソロ作品はシティポップ・AORの色が強いと知って気になっていた。そして、1stアルバム「Sweet Voyage」と共に入手した。そちらも良いと思ったのだが、今作の方が気に入ったのでこちらを紹介する。

米川英之の渋くて格好良い歌声は、洗練された楽曲によく合っていた。全曲が米川英之作曲によるものだが、どの曲もしっかりと耳に残る仕上がりになっていたのが流石。サウンド面の聴きごたえは予想通りのものだった。90年代はシティポップ・AORの冬の時代だったと思っているのだが、そのような中でも本格的な作品があったことに驚いた。

 

佐藤聖子「SATELLITE☆S」

SATELLITE☆S

SATELLITE☆S

 

いつ頃からかはわからないが、80年代後半〜90年代中頃くらいのガールポップ系アーティストを深堀りしようと思い立ち、それに括られるアーティストの作品を色々と物色するようになった。佐藤聖子はその中でも代表的な存在であり、数ある作品の中でも今作を最初に入手した。

少し自作があるものの、ほぼ提供曲…という構成はまさにガールポップの王道。タイアップが付いた曲が多く収録されているだけあって、どの曲もとてもキャッチーだった。どの曲がシングル曲なのかわからなくなってしまったほど。可愛らしさ、透明感、力強さなど様々な面を併せ持った佐藤聖子の歌声は「理想の女性ボーカル」そのものだった。今作を1周聴いただけで、あっという間に佐藤聖子にハマってしまった。聴いた後に、他のオリジナルアルバム3作を立て続けに入手してしまったくらい。まだまだ聴き込んでいきたい。

 

Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」

アイネ クライネ リヒトムジーク

アイネ クライネ リヒトムジーク

 

Contrary Paradeは、いつもお世話になっているフォロワーさんからの紹介で名前を知った。自分の好きなグループであるadvantage Lucyに似た音楽性のようで、それを聞いてすぐに作品を入手した。

ずっと聴いていたいと思わせてくれるような心地良さと、お洒落な要素を持ったポップスの数々を楽しめる作品だった。ボーカルのたなかまゆの清涼感のある歌声と、キラキラしたポップサウンドとの相性は素晴らしいものがあった。多彩なアプローチがされた楽曲が展開されているのだが、どの曲もキャッチーなのは共通している。収録曲の「エイプリルシャワー」を一回聴いただけで、今作は自分の好きな作品だ…と予想していたが、見事に当たった。

 

次は顔見知り部門。

 

D-PROJECT「PAGES」

PAGES

PAGES

 

D-PROJECTは2月に「TEMPEST」を入手し、ニューウェーブ色の強いロックやポップスにハマった。しかし、今作はAORやソウルに傾倒した作品となっている。とはいえ、いきなり新たなジャンルを取り入れた時に感じてしまいがちな、ぎこちなさは全く無い。ずっとそのジャンルをやってきたかのような風格があった。

D-PROJECTのボーカルであるジョー・リノイエは、崎谷健次郎東野純直の中間のような透明感や伸びのある歌声が魅力的なのだが、AOR色の強いサウンド面のおかげで、その歌声の良さが引き出されている印象があった。全編通して溢れる、洗練された雰囲気に魅かれた。ニューウェーブを主体としてきたD-PROJECTにとっては今作が異色な作品なのかもしれないが、それでも今作が好き。

 

ANNA BANANA「High-Dive」

High-dive

High-dive

 

※正しい発売日は「1993/6/23」である。

ANNA BANANAは以前「SING SELAH」を聴いた。その頃は歌声が好きだと思ったくらいでそれほどハマらなかったものの、今作を入手してそれが変わった。ちなみに、ANNA BANANAは父親がイタリア人で母親が日系アメリカ人のようだが、楽曲は全て日本語詞である。モデルとしても活動していたという。

今作はアシッドジャズに傾倒していた頃の田島貴男がプロデュースを手掛けており、サウンド面は当時のORIGINAL LOVEの作品そのままと言ったところ。楽曲に関しては、自作(共作含む)と提供が半々になった構成。凝ったサウンド面や、メロウな雰囲気漂う楽曲・ボーカルはいつまでも聴いていたいと思わせてくれる。今後は再評価が進んで、プレミアが付きそうな予感がする。リリース当時のORIGINAL LOVEの作風が好きなら、聴いて損は無いと思う。

 

染谷俊「マーガレット」

マーガレット

マーガレット

 

染谷俊は昨年に初期のアルバム3作を聴いてハマった。尾崎豊を彷彿とさせる力強いメッセージ性に溢れたロックナンバーが印象的だったが、それと同じくらいポップな要素も持っており、その両面に魅かれた。それはピアノロックならではの魅力と言えるだろう。

今作は社会派な要素が少し薄れ、ラブソングが多くなった。そのため、ポップ性が前面に出た作風となっている。ただ、優れたメロディーメーカーとしての実力を実感させてくれるような曲が揃っている。どこまでも真っ直ぐなメッセージも、これまでと何ら変わらない。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。