詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年2月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年2月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年2月は中々の激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫することができました。

 

それでは、「惜しくも受賞を逃した作品」を挙げていきます。

 

【初めまして部門】

原田真二「DOING WONDERS」(1986年)
一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」(2010年)
黒川芽以「10 sprout」(2007年)

豊崎愛生「love your life,love my life」(2011年)
・benzo「DAYS」(1999年)

 

【顔見知り部門】

黒沢健一「Focus」(2009年)
GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」(1990年)
角松敏生「TOUCH AND GO」(1986年)
米光美保「FOREVER」(1995年)
山下達郎「POCKET MUSIC」(1986年)

 

まずは初めまして部門から。

 

原田真二「DOING WONDERS」

DOING WONDERS

DOING WONDERS

 

原田真二は前から名前を知っていたが、作品を入手することはないという状態だった。どうしてもデビュー当初の楽曲の印象が強かったのだが、80年代の作品の評価もかなり高かった上に、音楽性が自分好みだと知ってからは気になっていた。そして、入手して聴いたのが今作。

「なんだこの耽美的な作品は…」今作を聴き終えてすぐに、このような感想が出てきた。まるでPrinceのようにファンキーで、官能的で、美しい、何よりポップな曲が揃っていた。

今作には、僕の知っているデビュー当初のアイドル同然だった原田真二はいなかった。全曲の作詞作曲編曲プロデュースに加え、ほとんどの楽器の演奏を自らこなす天才的なアーティストの姿があった。そして、メロディーメーカーとしての卓越した実力を遺憾無く発揮していた。僕は原田真二の才能にもっと溺れて圧倒されたいと思った。

 

一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

 

一風堂は「すみれSeptember Love」しか知らなかったが、久し振りに聴き返して、そのサウンドの格好良さに惚れ直した。

「80年代を深掘りする」「ニューウェーブニューロマンティックに詳しくなる」これらの目標を年初めに立てた僕にとって、一風堂はその二つを達成する存在だった。このような経緯から、このベスト盤を入手した。オリジナルアルバムはオンラインショップ限定販売なので仕方がない。

今作には、今聴いても「格好良い」と感じられるだけの曲が揃っていた。凝った要素と親しみやすさを絶妙なバランスで併せ持った曲たちが素晴らしい。様々なジャンルを自由自在に行き来して、少々ひねくれたポップスやロックを作り出すその技術に圧倒された。

音楽性は多少違うが、一風堂YMOに匹敵するくらい先鋭的な音楽をやっていたバンドではないかと感じた。オリジナルアルバムや、土屋昌巳ソロにも手を伸ばしていきたい。

 

黒川芽以「10 sprout」

黒川芽以は女優としてのイメージしかなかったが、フォロワーさんの布教によって歌手活動も行っていたことを知った。歌の上手い下手に限らず、女優の音楽活動というのは割と好きだ。

あるフォロワーさんが自分より一足早く今作を入手し、その良さを語っていた。それに触発された僕はすぐに入手した。

聴いていて心地の良い歌声に加え、一曲一曲の完成度もかなり高かった。数曲は黒川芽以自らによる作詞や作曲が行われていることを知って、驚いた。音楽活動は今作を最後に終わってしまったわけだが、続けてほしかった。「理想の女性ボーカル」に入るくらいには好きな歌声である。

 

豊崎愛生「love your life,love my life」

love your life,love my life(初回限定盤)(DVD付)

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僕は元々、声優の作品には全く無頓着であった。しかし、花澤香菜の作品を聴いてからは様々な声優の作品に手を出すようになった。花澤香菜が「理想の女性ボーカル」なので、他の声優の作品を聴けばより効率良くそのような存在に出逢えるのではと考えたからだ。そして、出逢ったのが豊崎愛生の1stアルバムである今作。

ふわふわとした可愛らしい歌声。聴いていて思わずニヤニヤしてしまった。豊崎愛生がよく聴いているというアーティストから提供された楽曲も、そのラインナップに恥じない確かなクオリティがあった。お洒落な音作りが絶品。一聴しただけですっかりハマってしまった。同じ月に2ndアルバム「Love Letters」も入手して楽しんでいる。まだまだ聴き込んでいきたい。

 

benzo「DAYS」

DAYS

DAYS

 

benzoというバンド名も作品名も知らなかったが、派手なジャケ写は何となく見覚えがあった。90年代後半のシティポップの名盤として紹介されることが多かったからだろうか。また、サニーデイ・サービスのファンなので、benzoのメンバーだった高野勲の活躍も、今作を手に取る前から知っていた。

いざ聴いてみると、どこか懐かしくお洒落な楽曲に魅せられた。洋楽からの影響をサウンド面で表現しつつも、曲全体としては日本的な情緒を漂わせる。そのセンスが絶妙だった。この手の音楽は、時代を経ても変わらずに楽しめると思う。これからも定期的に聴いていきたい。

 

【顔見知り部門】

 

黒沢健一「Focus」

Focus

Focus

 

僕はL⇔Rが大好きでよく聴いているのだが、黒沢健一のソロはそこまで聴いてはいない。作風の違いははっきりと理解しているのだが、どうしてもL⇔Rの作品に集中して聴いてしまう。そうした状況で入手したのが今作。

30分台というかなり短い作品ではあるが、どの曲も本当にポップでしっかり耳に残る。天才ポップス職人としての実力が冴え渡っているのがよくわかった。歌声こそ前よりも変わっていたが、メロディーに関しては一切変わりが無かった。日常のワンシーンに寄り添うような、優しく美しい曲たち。これぞポップス!と言いたくなるような作品だった。「first」「B」と今作しか持っていないものの、その中だと最も好きな作品になった。黒沢健一のソロ作品はまだまだ持っていないものが多いので、少しずつ集めていきたい。

 

GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」

瓦礫の街

瓦礫の街

 

GRASS VALLEYは昨年の11月に初めて聴いて、その格好良さに魅せられた。「80年代にもこんなバンドがいたのか!」と衝撃を受けたのと同時に、ニューウェーブニューロマンティックに興味を持つきっかけとなった。いつのまにか、GRASS VALLEYは自分にとって大きな存在になっていた。

今作もやはり、全く期待を裏切らない力作だった。ドラムの上領亘が脱退する前にリリースされた最後の作品で、バンドとしての形を何とか存続させるためにコンセプトアルバムの形式をとっている。戦地に住む少年少女の物語…という感じだろうか。聴いていて、どんどん作品の世界に引き込まれていくような感覚があった。格好良いのに、どこか幻想的な雰囲気を持ったGRASS VALLEYならではの楽曲はこれまでの作品と何ら変わっていない。

これまでに入手した作品もハマったが、今作も愛聴盤となりそうだ。

 

角松敏生「TOUCH AND GO」

Touch And Go

Touch And Go

 

角松敏生は前から好きなアーティストだが、ほとんどの作品が高価ということもあって、中々深く聴き込めていないという状態だった。ただ、1月に「AFTER 5 CLASH」を聴いてその格好良さに圧倒されて、同じく人気作である今作を手に取った。

当時としては最新鋭のエレクトリックサウンドと、隙のないバンドサウンドとを両立させたAORやファンクを楽しめた。コンパクトな作品ではあるが全曲が存在感を放っていて、聴きごたえが凄い。キレの良いファンクから、聴き惚れてしまうようなバラードまで幅広い。曲順の妙とでも言うのか、何度聴いても聴き飽きない。卓越したメロディーメーカー・サウンドクリエイターであったことの証左となる名盤だった。

 

米光美保「FOREVER」

FOREVER

FOREVER

 

米光美保は昨年の12月に「From My Heart」を聴いて、透明感溢れる歌声に魅かれた。今作は「From My Heart」と同様に、角松敏生がプロデュースを手掛けた。近年のシティポップ ・AORの再興の影響を受けてか、プレミアがついているようだ。

プロデューサーのネームバリューを抜きにしても良いと思えるだけの作品だった。プレミアがついているのも頷ける。打ち込みを多用しつつも、しっかりとバンドサウンドと共存させたサウンド面は確かな聴きごたえがあった。一曲一曲の完成度や、米光美保の表情豊かなボーカルも素晴らしい。大橋純子吉田美奈子の楽曲のカバーも収録されているのだが、原曲の存在感に劣らない新たな解釈がされていて楽しめた。シンガーとしての実力の高さを再確認させられた作品だった。「From My Heart」と同じく、好きな作品になった。

 

山下達郎「POCKET MUSIC」

POCKET MUSIC

POCKET MUSIC

 

山下達郎は自分にとっては普遍的な存在にまで上がった、特に好きなアーティスト。しかし、作品が割と高価で出回っていることもあって、オリジナルアルバムは今年に入るまでは中々集まっていない状態だった。

今作がリリースされた頃はデジタルレコーディングが始まったので、山下達郎もそれに対応するために奮闘した「実験作」という位置付けだろうか。音作りに使用したパソコンがクレジットされているのは何とも時代性を感じた。とは言っても、生音とはしっかり共存していた上に、山下達郎らしい普遍性に満ちたポップスの数々は一切変わっていなかった。いつになくメッセージ性の強い、内省的な詞世界も印象的だった。キャリアを通じてもかなり地味な作品だとは思うが、長く聴いていけるような作品だとも感じた。

 

2月も素晴らしい収穫ばかりだった。これからももっと素晴らしい作品に出逢いたい。

とりあえず、こんな感じ。またいつか。