詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年1月編〜
今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年1月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。
2018年1月はかなりの激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫しました。
閑話休題。今回紹介する作品を挙げていきます。
初めまして部門
・高橋幸宏「NEUROMANTIC ロマン神経症」(1981年)
・斉藤由貴「チャイム」(1986年)
・乃木坂46「透明な色」(タイプB・2015年)
・PINK「PSYCHO-DELICIOUS」(1987年)
・岡本舞子「ハートの扉」(1985年)
・SOFT BALLET「EARTH BORN」(1989年)
顔見知り部門
・戸松遥「Rainbow Road」(2010年)
・SING LIKE TALKING「Heart of Gold」(2018年)
・ORIGINAL LOVE「LOVE! LOVE! & LOVE!」(1991年)
・E-ZEE BAND「Paisley Lover」(1990年)
・NICE MUSIC「POP RATIO」(1995年)
・遊佐未森「momoism」(1993年)
・BUMP OF CHICKEN「jupiter」(2002年)
まずは初めまして部門での惜しくも受賞を逃した作品から。
- アーティスト: 高橋幸宏
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2005/03/24
- メディア: CD
- 購入: 5人 クリック: 23回
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今年の管理人がひっそりと打ち出した目標。それは「ニューウェーブ・ニューロマンティックの知識を深める」というもの。 それの実践にあたって、まず着目したのがこの作品。ほぼ同時期にリリースされたYMOの人気作「BGM」とは似たような作風だという。早速2005年リマスター盤を入手した。
サブタイトル通り、神経質なくらいに作り込まれたサウンド面に圧倒された。高橋幸宏の渋い歌声も印象的だった。予想以上にポップで美しいメロディー揃いだったのも今作に魅かれた理由の一つ。この作品を聴いていてニワカながらに感じたのが、「YMOのメンバーの中で一番テクノな方面を追究していたのは高橋幸宏なんじゃないか?」ということ。失礼ながら、YMOの中で最も地味なメンバーだと勝手に思っていた。そのような印象は今作を聴いてすぐに払拭された。他のソロ作品も聴いていきたいと思う。
斉藤由貴「チャイム」
斉藤由貴に関しては女優のイメージが強く、歌手としては「卒業」や「悲しみよこんにちは」「夢の中へ」のカバーくらいしか知らないという状態だった。ふと聴いてみようと思った際に、今作が比較的人気の高い印象だったので入手した形。
実際に聴いてみると、全曲の質の高さが圧巻だった。サウンド面は全編が打ち込みだが、その当時の音楽に比べるとそれほど派手なものではなく、斉藤由貴のほんわかした歌声の魅力を最大限に引き立てるような仕上がりになっていると感じた。構成としてはバラードが多めなのだが、いかなる曲も自らの世界に落とし込んでいくような斉藤由貴のボーカルが見事だった。とても可愛らしい、それでもどこか神秘的で謎めいた雰囲気を持った歌声。女優として活躍しているのも頷ける。いつ聴いても違和感無く楽しめるような名盤だと思った。
乃木坂46「透明な色」(タイプB)
乃木坂46はフォロワーさんにかなり前から布教されつつも、作品が高価で中々手が出ていない状態だった。この作品はお年玉に物を言わせて購入した。フォロワーさんのツイートやサイトを見ながら、最もバランスの良い形態を選んだつもりである。
やはりメロディーが凄い。そして、知っている曲ばかり。ニワカながらデビュー当初から何となく見てきたのでシングル曲は全て聴き覚えがあった。どの曲も思わず聴き惚れてしまうような美しさと、すぐに耳に残るようなキャッチー性とを併せ持っていた。DISC1を1周聴いただけでハマってしまった。2nd「それぞれの椅子」の通常盤も直後に入手したほど。少しずつではあるが知識を深めていきたい。
PINK「PSYCHO-DELICIOUS」
PINKは80年代を代表するニューウェーブ系バンドにして、「無国籍ファンク」を得意としていた、伝説と言ってもいいほどのバンド。現在はプロデューサーとして活躍する岡野ハジメやホッピー神山が在籍していたことでも知られ、再評価が進んでいるためか、どのアルバムもそれなりにプレミアが付いている。それでも地元のブックオフで今作を入手できた。新譜1枚買えてしまうような価格ではあったが。
いざ聴いてみると、その格好良さと意味のわからない世界観に圧倒された。バンドにもかかわらず、ギターがあまり前面に出ないサウンドが印象的で、むしろベースやシンセの主張がかなり激しい。お互いの主張がぶつかり合うようなサウンドを時には切り裂き、時には味方につけるような福岡ユタカの野性味溢れるボーカルが素晴らしい。どこまでも伸びていくような高音や日本語の響きを大切にしている感じも良い。聴いていると思わず笑ってしまうくらい存在感の強いボーカルだ。他の作品も聴いてみたい。
岡本舞子「ハートの扉」
岡本舞子は80年代のマイナーアイドルながら、楽曲の質の高さが再評価され、このアルバムは長らくプレミアが付いていたようだ。それが2017年の12月にタワレコ限定で紙ジャケ+リマスター+ボーナストラックで再発された。丁度その時期に岡本舞子や今作の名前を知って気になっていたので「これを逃したら絶対プレミア化するぞ…?」という危機感を感じて購入した。
聴いてみると、確かに洗練された楽曲揃いで存分に楽しめた。80年代を代表する作曲家・編曲家である山川恵津子が全曲の作曲・編曲を担当しており、全体的にシティポップ色の強い内容だった。阿久悠や秋元康による詞世界も味わい深いものがあった。楽曲の完成度もそうだが、岡本舞子の歌唱力もアイドル離れした実力があって、前述したサウンド面の魅力を高めていた。半ば衝動買いのような形で購入したが、素晴らしい内容で無事救われた。同時再発された2nd「ファッシネイション」も入手したい。
SOFT BALLET「EARTH BORN」
SOFT BALLETは何となく名前だけ知っていた感じだったが、フォロワーさんのブログで高評価だったので今作にも収録されたデビュー曲「BODY TO BODY」を聴いてハマり、今作を入手した。BODY TO BODYは曲そのものの格好良さもそうだが、癖の強いPVにも引き込まれた。どうやらソフトバレエはPVがハイセンス過ぎることでも有名らしい。
格好良いのにどこか怪しい、むしろ「気持ち悪い」というフレーズが似合いそうな曲を楽しめた。かなりマニアックに作り込んだ作品を想像していたものの、予想以上にポップな曲が多くて驚いた。ポップな方面は森岡賢が、マニアックな方面は藤井麻輝が主に手がけていたようだが、二人の方向性の違いが絶妙にマッチしていた。遠藤遼一の渋い低音ボーカルも男でありながら聴き惚れるような格好良さがあった。よりマニアックな方面を追究した後の作品も聴いていきたい。
以降は顔見知り部門での「惜しくも受賞を逃した作品」の感想を紹介していく。
戸松遥「Rainbow Road」
戸松遥は昨年「Sunny Side Story」を聴いてその明るさ全開のポップな内容に魅かれてハマった。2ndを先に聴いてから1stの今作を聴くという形になったが、作風はそこまで変わらなかったので安定して楽しめた。
「あれ…?歌い方がコロコロ変わってる…?」一曲聴き進める度に思っていたこと。一曲ごとに違うキャラクターを表現するというようなコンセプトの作品らしく、それを忠実に再現していた。タイトルからも察しがつくように、まさに「七色の歌声」と言ったところ。一曲一曲の完成度も冴え渡っており、とにかくポップでキャッチーな曲揃い。適度なアイドル性を持ったガールポップは管理人の大好きな分野である。こんなのハマらないわけがない。
SING LIKE TALKING「Heart of Gold」
SLTは本家ブログ「今日はこんな感じ」で今作以外全てのレビューを行なったくらい好きなグループである。管理人がSLTを聴き始めてから初めてのオリジナルアルバム。ずっと期待していたのでリリースされた時の喜びは大きかった。
シングル曲が多めの構成だったのである程度察しがついていたが、やはり安定感抜群な内容だった。コンパクトな構成は何度でも聴きたくなるような中毒性を生んでいると思う。シングルで聴いた段階では微妙だと思った曲も、アルバムという形で聴くと良い曲だと感じられた。ベテランとなってもなお、新たな音楽性にチャレンジし続けるSLTの勇姿をまだまだ見届けていきたい。
ORIGINAL LOVE「LOVE! LOVE! & LOVE!」
- アーティスト: ORIGINAL LOVE,田島貴男,宮田繁男,小西康陽,木原龍太郎,井上トミオ,村山孝志,森宣之,オリジナル・ラブ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1991/07/12
- メディア: CD
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ORIGINAL LOVEは好きだが、深く聴き込んでいるかと言うとそうでもないという微妙な立ち位置。とはいえ、この1stアルバムはたまたま安く見かけたので購入した。
アシッドジャズやファンク色の強いサウンドがたまらない作品だった。2枚組でそれなりにボリュームのある作品なのだが、演奏に耳を傾けていると思いの外あっという間に終わってしまった。若さを感じさせる田島貴男のボーカルが今とは違った魅力を出していた。ORIGINAL LOVEの場合、アルバム単位で好きな作品はあまり無いのだが、今作はアルバム単位でハマれた。他の作品も少しずつ聴いていきたいと思えた。
E-ZEE BAND「Paisley Lover」
- アーティスト: E-ZEE BAND,AKIRA IKUMA,KENSUKE TSUDA,MAMORU TANABE
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 1990/10/25
- メディア: CD
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E-ZEE BANDは昨年に出逢ってハマったファンクバンド。FLYING KIDSと比べても遜色のないファンキーっぷりに加え、優れたポップセンスに魅せられた。D-51のプロデューサーとしても知られる生熊朗がボーカルを担当していたが、その甘い歌声も魅力的。そんなE-ZEE BANDの1stが今作。
「Paisley」というPrinceを彷彿とさせるフレーズから既に期待していたが、いざ聴いたら日本人離れしたファンクを展開していて圧倒された。最早Princeが乗り移っているかのような生熊朗のボーカルや、何らの隙のないバンドサウンドがたまらない。全体を通して熱のある作風も見事。
E-ZEE BANDのような素晴らしいファンクバンドや今作のような素晴らしい作品が評価されずに埋もれているのが本当に惜しい。今聴いても古臭くないどころか、今聴いても最新鋭の音楽として聴けてしまう感じがする。25年ほど早い音楽をやっていたということだろうか?
NICE MUSIC「POP RATIO」
- アーティスト: nice music,佐藤清喜,清水雄史,サエキけんぞう,冨田恵一,nice misic,90 WEST JAZZ BAND
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 1995/10/21
- メディア: CD
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NICE MUSICは昨年に、フォロワーさんのブログで作品が高評価されていたのがきっかけで名前を知った。男性二人で少々頼りないボーカル、お洒落なジャケットデザインなどから「フリッパーズ・ギターの後釜」と思っていたのだが、今作の前にリリースされた「ACROSS THE UNIVERSE」を昨年に聴いてその印象を打ち砕かれてハマった。
「ACROSS THE UNIVERSE」と同じく、打ち込み主体のテクノポップ的なサウンドと、ポップで美しいメロディーとの絡みが魅力的な楽曲ばかり。情報を仕入れずに聴いていると、どの曲がシングル曲なのかわからなくなるほどだった。ラストアルバムにして初めて外部のミュージシャンをアレンジに招いたためか、さらに多彩なアプローチがされたサウンドを楽しめた。メロディーも一切のハズレなし。ボーカルの弱さすら気にならないほどの楽曲が揃っていれば駄作だなんて言えるはずが無い。
遊佐未森「momoism」
遊佐未森は昨年ベスト盤を聴いてその神秘的な世界観に魅せられた。オリジナルアルバムを入手したのは今作が初であった。調べたところかなり人気の高い作品という印象があり、今作ならもっと遊佐未森にハマれると思ったからだ。
「全編ドラム無し」という作風にはかなりの衝撃を受けたが、それでもしっかり成立していた。それだけ徹底的にサウンドを作り込んだということだろう。童話の世界に迷い込んだかのような歌詞とメルヘンな歌声がたまらない。「俺にもこういうのを楽しめる心が残ってたんだ…?」と自分の中に眠る少年の心を蘇らせながら聴いていた。一曲一曲の完成度や流れも淀みのないもので、何度も聴きたくなるような魅力がある作品だった。これからももっと遊佐未森の作品と戯れていきたい。
BUMP OF CHICKEN「jupiter」
- アーティスト: BUMP OF CHICKEN,Motoo Fujiwara,Hiroaki Masukawa
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2002/02/20
- メディア: CD
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バンプはフォロワーさんから「掘り下げてそうで掘り下げてない」という旨のことを指摘されたことがある。ちゃんと聴けばハマるだろうとは思っていたが、中々手を出していなかった。昨年に「ユグドラシル」を聴いて良いなと思ったが、それっきりだった。
「天体観測が収録されたアルバム」というイメージで聴いていたが、アルバム曲もしっかり耳に残るような曲ばかりで楽しめた。この作品について調べていたら「青春時代を過ごしている間に聴くべき作品」というような評価があった。確かにそんな気もする。その頃にしかわからないような感情が激しいギターサウンドに乗せて絶妙に描かれていた。何となく、バンプの楽曲の魅力がわかってきた。これでやっとバンプを深掘りできそうだ。
1月は素晴らしい収穫ばかりでした。2月はどうなるのでしょうか。どんな作品に出逢えるか楽しみで仕方がありません。
とりあえず、こんな感じ。記事は以上です。