詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年5月編

 

「収穫月間MVP」を受賞する作品があれば、それぞれの部門で2作のみという枠の都合によって惜しくもそれを逃してしまう作品も生まれる。しかし、そのような作品たちも受賞した作品と同じくらい良いと思ったわけで、それを広めずにいるのはあまりにも勿体無い。

こうした理由で毎回「惜しくも受賞を逃した作品」を紹介している。

今回の「惜しくも受賞を逃した作品」たちは以下の通り。

 

初めまして部門

・坂口有望「blue signs」(2018年)

blue signs(初回生産限定盤)(DVD付)

blue signs(初回生産限定盤)(DVD付)

 

 

かの香織「裸であいましょう」(1995年)

裸であいましょう

裸であいましょう

 

 

・中里あき子「1/200,000の都会」(1987年)

 

1/200.000の都会

1/200.000の都会

 

 

1/200,000の都会

1/200,000の都会

 

 

顔見知り部門

原田真二「Urban game」(1988年)

Urban game

Urban game

 

 

和田弘樹「WONDER HERO Ⅱ Brand-New Atlas」(1996年)

WONDER HERO II Brand-New Atlas

WONDER HERO II Brand-New Atlas

 

このような顔ぶれとなった。

 

初めまして部門

・坂口有望「blue signs」…坂口有望は昨年「好-じょし-」を聴いてハマり、その後も何曲か耳にして好印象だった。そのため、少々高値ではあったものの、1stアルバムである今作も入手して聴いてみた。

坂口有望はギター女子というような括りになるのだろうか。この手のアーティストは個人的にも好きなタイプである。作品に関しては、10代後半というタイミングでしか描き出せない感情が詰まっていた。まさか自分よりも年下のアーティストが出てくるとは…という驚きもあったが、その詞世界には色々と共感できた。何より驚いたのは、そのメロディーセンス。どの曲もしっかり耳に残った。まだまだ坂口有望の活躍を見届けていきたい。そう思わせてくれる作品だった。

 

かの香織「裸であいましょう」…かの香織は前から名前だけ知っていたが、作品は聴いたことがないという状態だった。フォロワーさんからのおすすめもあったので、今作を入手して聴いた。

かの香織は女性ポップス職人と言える存在だが、その魅力をしっかり堪能できる作品だと思った。シティポップの雰囲気も漂わせた、お洒落で上質なポップスの数々はとても心地良いものがあった。それと同時に、卓越したメロディーセンスの持ち主だとわかった。かの香織独特の、変幻自在のボーカルも冴え渡っていた。今作がリリースされた当時、ひっそりとガールポップが盛り上がっていたわけだが、それらとはまた少し違った魅力を持ったアーティストだと感じた。中古屋でよく見かけるのが歯がゆい。

 

中里あき子「1/200,000の都会」…この作品及びアーティストの存在は、中古屋で見かけて初めて知った。調べてみると、ごく一部のサイトで高い評価がされていたので気になり、それを購入した形。

本職がアイドルなのか本格的な歌手なのかはわからないが、とても可愛らしく透明感のある歌声の持ち主だった。もっと聴けば「理想の女性ボーカル」の位置につきそうなくらい。一曲一曲の完成度もなかなか高い。サウンド面は時代を感じさせるものばかりだったが、いかにも80年代後半という感じのサウンドは自分好みなので欠点にはならなかった。

 

顔見知り部門

 

原田真二「Urban game」…原田真二はほぼ同じ時期に入手した「Magical Healing」が収穫月間MVPを受賞したが、今作もそれと同じくらいハマった。同一アーティストの作品が収穫月間MVPの席に並ぶのは個人的にはあまり無いことだったので、何となく新鮮な気分。

当時の原田真二エレクトロファンクに傾倒していたわけだが、今作がそのラストとなるアルバム。アップテンポな曲でも、バラードでもとにかくメロディーが印象に残る上に、サウンドへの拘りぶりが凄まじい。卓越したメロディーメーカー・サウンドクリエイターであることを実感させてくれる作品だった。全編を通して才気走っているのがよくわかる。

 

和田弘樹「WONDER HERO Ⅱ Brand-New Atlas」…和田弘樹は2月に入手した「WONDER HERO」を聴いてハマったが、今作はその次作。現在はh-wonder名義で作編曲家として活躍しているのも頷ける、実力と才能がしっかり現れた作品だった。

今作は外部が作詞した曲や、他のミュージシャンと共同で編曲した曲があるのが特徴。これまでもバラエティ豊かで飽きない作風だったが、それによってさらに楽しみどころが増えた。好青年的なイメージの歌声は相変わらず。この手の歌声の持ち主はすっかり減ってしまったので、中々に貴重である。たまには自分で歌ってほしいと思う。

 

とりあえず、こんな感じ。前回の記事を更新してから、だいぶ時間が経ってしまった。放置しだすといつまでも放置してしまう性分が出てしまった。次はまたいつか。

 

詳説・収穫月間MVP 2018年5月編

前回の発表は少し遅れる形だったものの、今回はタイムリーに行う。

 

何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。

 

「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。

以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。

 

長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。

 

初めまして部門

 

岩下清香「眠らせないで」(1996年)

眠らせないで

眠らせないで

 

 

佐藤博「AWAKENING」(1982年)

 

顔見知り部門

 

原田真二「Magical Healing」(1985年)

MAGICAL HEALING

MAGICAL HEALING

 

 

詩人の血「What if…」(1989年)

What if・・・

What if・・・

 

 

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

 

初めまして部門

・坂口有望「blue signs」(2018年)

・中里あき子「1/200,000の都会」(1987年)

かの香織「裸であいましょう」(1995年)

 

顔見知り部門

原田真二「Urban game」(1988年)

和田弘樹「Wonder Hero Ⅱ Brand-New Atlas」(1996年)

 

このような顔ぶれとなった。久し振りに80年代に傾倒したような印象がある。意識していたわけではないのだが。

 

それでは、受賞した作品の簡単な感想を書いていく。

 

初めまして部門…

 

岩下清香「眠らせないで」…岩下清香は全く知らなかったが、今作に参加した作家陣がかなり豪華だったので、それで気になって今作を探し始めた。amazonのページを見る限り、それなりにプレミアがついているようだったが運良く500円で入手することができた。

70〜80年代のシティポップ・AORに傾倒した作風だった。サウンド面の聴きごたえはもちろんのこと、岩下清香の清涼感溢れる歌声も素晴らしいものがあった。同じような歌声の持ち主は沢山いそうなのだが、不思議といない。集中して聴いていても、何かのついでで聴き流していても心地良い曲ばかり。プレミアが付いているのも頷ける作品だった。ここ最近はシティポップ・AORの人気が高まっているので、再発されたら間違いなく再評価されるような作品だと思う。

 

佐藤博「AWAKENING」…3年ほど前から気になりつつも、何故か放置してきた作品だった。2014年リリースのスペシャル・エディション盤を先月にやっと入手した。日本のシティポップ・AORにおける名盤として挙げられることも多く、かなりの期待をして聴いた。期待した通りどころか、期待以上の作品だった。

佐藤博自らのボーカルの他に、ウェンディ・マシューズという女性歌手をフィーチャーした上質なポップスを堪能できた。シティポップ・AORフュージョン、ソウル、ファンク…様々なジャンルを内包した曲は非常に爽やかで心地良いものだった。リンドラムというリズムマシンを全編に渡って使用しているが、そう知っていないと打ち込みだと思えないほどにグルーヴ感がある。

これからはどんどん暑くなっていく。今年の夏を過ごすお供として、まだまだ聴き込んでいきたいと思う。

 

顔見知り部門…

 

原田真二「Magical Healing」…原田真二は2月に「DOING WONDERS」を聴いて以来ハマった。今作はそれと同じようなエレクトロファンク路線の作品なので、まず外れは無いと思って聴いた。

全体的に打ち込み主体のサウンドながら、かなりダンサブルなものが揃っていた。最初からテクノやニューウェーブをやっていたのかと思うほどに作り込まれた打ち込みサウンドは圧巻。タイトかつ力強いリズムはこの頃の音楽界特有のものと言えるが、それを十分に堪能することができた。原田真二の作品に共通する、卓越したポップ性も今作では特に冴え渡っていた。どれだけ捻った曲でも、サビは確実にキャッチーなものに仕上げる。一聴しただけでも多くの曲が印象に残った。原田真二の長いキャリアの中で生み出された全ての作品を聴いたわけではないのだが、今作は特に気に入った。

 

詩人の血「What if…」…詩人の血は3月に「とうめい」を聴いて、その捻くれたポップセンスに魅せられた。先月に今作の他にも「cello-phone」「花と夢」を入手して聴いたが、その中でも今作が一番ハマったので受賞となった。

1stアルバムにありがちな若々しさや初期衝動はほとんど感じられないのだが、緻密に作り込まれたサウンドや心地良いメロディーに引き込まれた。全体的に派手さは控えめで聴かせる曲が多くなっているが、それにも耐え得るメロディーセンスやサウンド構築の技術が素晴らしい。ボーカルの辻睦詞の変幻自在な歌声にも圧倒されるばかり。メンバーの一人だった渡辺善太郎は後に作編曲家・プロデューサーとして活躍するわけだが、その素養はキャリア最初期の今作から発揮されていたのがよくわかる。

当時としては異色過ぎたのかもしれないが、今聴いても古さを感じないどころか新鮮ささえ感じる。再評価されてほしいバンドである。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年4月編

「収穫月間MVP」を受賞する作品があれば、それぞれの部門で2作のみという枠の都合によって惜しくもそれを逃してしまう作品も生まれる。しかし、そのような作品たちも受賞した作品と同じくらい良いと思ったわけで、それを広めずにいるのはあまりにも勿体無い。そのような理由で毎回「惜しくも受賞を逃した作品」を受賞した作品とともに発表しているのだが、今回はうっかりその発表を忘れてしまった。痛恨のミスだった。そのため、そのラインナップは今回のブログで初公開となる。

 

初めまして部門

辻詩音「Catch!」(2010年)

斉藤和義「Because」(1997年)

菊池桃子「ADVENTURE」(1986年)

SUICIDE SPORTS CAR非情のライセンス〜LICENSE TO KILL〜」(1999年)

・DOVE「Parallel Trip」(1990年)

水谷紹「NIGHTINGALE」(1990年)

 

顔見知り部門

佐藤聖子「CRYSTAL」(1995年)

鈴木祥子「Candy Apple Red」(1997年)

 

このような顔ぶれとなった。新しく作品を手に取ったアーティストがかなり多かったため、アンバランスなラインナップとなっている。それでは、これらの作品の簡単な紹介をしていこう。まずは初めまして部門から。

 

 

辻詩音「Catch!」

Catch!(初回生産限定盤)(DVD付)

Catch!(初回生産限定盤)(DVD付)

 

この作品はいつもお世話になっているフォロワーさんの好きなアルバムランキングの比較的上位に入っていることから、前から探していた。半年以上探していたが、やっと先月に入手できた。自分が入手したのとちょうど同じくらいの時期に、別のフォロワーさんも今作を聴いてハマっていた。良いタイミングで手に入れることができたと思う。

とにかく明るく、ポップな作風がたまらない。少しクセがありながらも、それでも可愛らしい歌声は自分の好みそのもの。曲や聴き手に寄り添うような歌声だと感じた。ポップナンバーはもちろんのこと、バラードやロックナンバーでもその歌声が魅力的だった。全曲の完成度もかなり高く、ギター系の女性シンガーソングライターの新たな名盤に出逢えたと思った。

 

斉藤和義「Because」

Because

Because

 

斉藤和義は著名な楽曲しか知らない状態だが、「ちゃんと聴けばハマる」と思っていたアーティストの筆頭格だった。最初はベスト盤から入ろうと思っていたのだが、今作から聴き始めた。ファン人気の高い「月影」や代表曲「歌うたいのバラッド」が収録されていたからだ。

渋くて、格好良い。自分の思う斉藤和義の楽曲像そのままだった。ダラダラしているようでいて、緊張感もある。独特な雰囲気を持った曲揃いだった。ロックンロール、ブルース、ポップス、昭和歌謡、ジャズなど実に多彩なジャンルを取り込みつつも、まとまりがあるところに驚いた。それは確かなメロディーを持っているからだろう。もっと深く聴いてみたいと思った。

 

菊池桃子「ADVENTURE」

ADVENTURE

ADVENTURE

 

菊池桃子はラ・ムーの作品を先に入手するという不思議な形でハマった。そのため、顔見知り部門にしようかと思ったものの、ソロとしての名義の作品は今回が初だったので初めまして部門にした。

作家として全盛期にあった林哲司が作曲・編曲を行なっているため、まず楽曲面にハズレはない。洗練されたシティポップ・AOR系のサウンドには一切の隙がない。そのようなサウンドに乗っかる、菊池桃子のふんわりとした歌声が何とも心地良い。どうやら菊池桃子は歌が下手という扱いだったようだが、自分はそのような印象は全く持たなかった。アイドルに歌唱力がそれほど求められなくなった世代の人間だからだろうか。他の作品も聴いてみたいところ。

 

SUICIDE SPORTS CAR非情のライセンス〜LICENSE TO KILL〜」

非情のライセンス?LICENCE TO KILL

非情のライセンス?LICENCE TO KILL

 

GRASS VALLEY、REV、ソロと様々な活動を展開し、その全てで全く異なる音楽を披露してきた出口雅之だが、SUICIDE SPORTS CARはスパイ映画をテーマにしたユニット。出口雅之の経歴の中でも最も著名だと思われるREVは全く聴いていないのだが、GRASS VALLEYを聴いてその歌声に魅せられた。それでこのユニットの名前を知った。

スパイ映画はほとんど観たことが無いのだが、そのような自分でも「それっぽい」と思うような、お洒落で格好良い楽曲が並んでいた。マリンバ担当のメンバーがいるからだろうか?Mr.SUICIDE SPORTS CARこと出口雅之のキザなイメージのある歌声もまた、今作のコンセプトによく合っていた。ORIGINAL LOVEや、田島貴男がボーカルを担当していた頃のピチカート・ファイヴが好きなら聴いて損は無いと思う。

 

DOVE「Parallel Trip」

Parallel Trip

Parallel Trip

 

DOVEは中古屋で作品を見かけて初めて名前を知ったバンドだった。そして、帰ってから楽曲をYoutubeで聴き、ハマれそうだと思ったので作品を入手した。その店に作品が揃っていたため、あっさりと3作を揃えてしまったのだが、その中でも今作が一番好きなので今作を紹介する。

3人組とは思えないほどに分厚く、力強いバンドサウンドが主張したロックやポップスを楽しめる。ニューウェーブを思わせる曲もある。The Policeを彷彿とさせるバンドと言うべきか。聴いていると、演奏や歌声の格好良さと歌詞の幻想的な世界観に引き込まれてしまう。ベースかボーカルというのもかなり凄い。この手のバンドは数多くいそうなのだが、意外といないもの。自分がラッキーだっただけで、作品を入手するのは少々面倒な印象があるが、YouTubeで楽曲を聴いて興味を持った方には是非とも入手していただきたいと思う。

 

水谷紹「NIGHTINGALE」

NIGHTINGALE

NIGHTINGALE

 

水谷紹は、自分が影響を受けた方のブログで紹介されていたのでその名前を知った。「ポスト高野寛というような売り出し方をされていたようで、それで興味を持った形。

いざ聴いてみると「高野寛でさえも上回るのでは…?」と思うほどにひねくれた楽曲の数々が展開されていた。ポップでありながら、一癖も二癖もあるメロディーや「ぶっ飛んだ」「人を食ったよう」といったフレーズが似合う詞世界はインパクト抜群。一度聴こうものなら、しばらく耳を駆け巡ってしまうようなキャッチー性もたまらない。シンセを駆使した、様々なギミックが散りばめられたサウンド面も圧巻。それでいて、好青年的なイメージのある容姿や歌声である。ここまでほのぼのとした狂気を帯びた作品も中々無いのではと思う。

 

 

次は顔見知り部門。

 

佐藤聖子「CRYSTAL」

CRYSTAL

CRYSTAL

 

佐藤聖子は先月に「SATELLITE☆S」を聴いてハマったが、今作はその次作。セールスが伸び悩んで打ち切られてしまったのか、アルバムのリリースは今作がラストとなった。

そのせいなのかはわからないが、今までよりも「聴かせる」曲が増えた印象がある。ポップ性で言うなら「SATELLITE☆S」の方があったと思うが、今作は佐藤聖子の歌声という魅力をより堪能できるという印象がある。どちらの路線も好きである。自作の楽曲の完成度もかなり高く、シンガーソングライターとしても才能が開花する寸前だったのではないか。今作以降はシングルのみのリリースとなってしまったのは本当に残念に思う。

 

鈴木祥子「Candy Apple Red」

Candy Apple Red

Candy Apple Red

 

鈴木祥子は自分の特に好きな女性アーティストの一人。自分は初期の名盤と言うべきポジションの2ndアルバム「水の冠」が一番好きなのだが、今作はロックに傾倒してからの作品。かなりの期待と少しの不安を抱いて今作を聴いた。

冒頭の楽曲を聴いただけで、自分が思う鈴木祥子の楽曲像ではなくなっていたのがわかった。サウンドも、詞世界も、歌い方も明らかに違う。これだけなら酷評してしまっているのだが、ハマった理由はメロディーにある。美しくポップなメロディーはこれまでとは変わらないどころか、さらに高められている印象があったからだ。今作を聴き始めた時は違和感があったのだが、聴き終えると「これはこれで良いじゃん」と思えた。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

 

詳説・収穫月間MVP 2018年4月編

「収穫月間MVP」の発表が先週の土曜日に行われた。この記事は毎回発表した直後に更新して公開していたものの、今回は色々と忙しくなって遅れてしまった。

 

何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。

 

「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。

以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。

 

長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。

 

初めまして部門

 

比屋定篤子「ささやかれた夢の話」(1999年)

ささやかれた夢の話

ささやかれた夢の話

 

・上野優華「Sweet Dolce」(2017年)

Sweet Dolce (初回限定盤A)

Sweet Dolce (初回限定盤A)

 

 

顔見知り部門

高野寛「Everything is Good」(2017年)

EVERYTHING IS GOOD

EVERYTHING IS GOOD

 

荒木真樹彦「Baby,You Cry」(1990年)

BABY,YOU CRY

BABY,YOU CRY

 

このような結果となった。正直なところ、4月は新規開拓したアーティストの方が圧倒的に多かったので、顔見知り部門の選定は少々無理したような感じになっている。とはいえ、気に入った作品なのは事実。

 

それでは、受賞した作品の簡単な感想を述べていく。

 

比屋定篤子「ささやかれた夢の話」…今までは名前すら知らなかったものの「まわれまわれ」をYoutubeで聴いて、艶のある美しい歌声に魅せられた形。近年のシティポップ・AOR再興の中で、今作も再評価されているのだろうか。中古でもやたら高値で出回っているのが特徴。

どうやら比屋定篤子の本職はボサノヴァのようだが、今作は前述した通りシティポップ・AORに傾倒した作品となっている。一口にそれらのジャンルを挙げても70年代と80年代ではかなり毛色が違うが、今作はどちらかというと70年代寄り。タイトで温かみのあるバンドサウンドと、流麗なメロディーに、聴き手を癒す歌声。それは大貫妙子を彷彿とさせるものだった。聴いていて本当に心地良いし、思わず身体が動いてしまうような部分もある。高値で出回っているのも頷けるような名盤だった。

 

上野優華「Sweet Dolce」…上野優華は昨年名前を知った。というのも、ツイッターでいつもお世話になっているフォロワーさんが突然どハマりし、魂のこもった布教を行っていたからだ。無意識のうちに名前が記憶され、曲名がインプットされていた。今作に収録された「やくそく」は、曇りめがねの本家ブログ「今日はこんな感じ」でかつて行った「2017年のベストソング」で紹介しており、今作を聴けばハマるという気はしていた。案の定ハマってしまった。

リリース当時は18歳だったという若きアーティストの作品に対して使う言葉ではないだろうが、「懐かしい」と思った。自分の好きな90年代のガールポップを想起させる部分が多くあったからだ。アイドルなのかアーティストなのかわからない上野優華のキャラクターもまた、それを思わせた。

曲に表情をつけるように多彩な魅力を持った歌声、ポップ性を忘れないメロディーの数々はまさに自分の好みのど真ん中。「もっと聴かせて!」と思うような、コンパクトな構成も素晴らしい。他の作品も聴いてみたい。

 

 

顔見知り部門

高野寛「Everything is Good」…高野寛は自分の特に好きな男性アーティストの一人。この作品は昨年リリースされたものだが、リリース当時の自分のお財布事情や精神的に色々あったこともあり、リアルタイムで入手できなかった。それを先月に入手した。高野寛の新譜というだけで、決して外すことは無いだろうという不思議な信頼感があった。

卓越したポップセンスはデビュー30周年を前にしても全く色褪せていなかった。一時期の作品ではアコースティックな方面に傾倒していたが、今作では持ち味のカラフルなアレンジも復活。聴いていて安心できる、優しく心に響くような歌声も相変わらず。歌入りとインストが半々くらいのミニアルバムなのだが、どの曲も確かな良さがあった。これからの高野寛の活躍を期待している。

 

 

荒木真樹彦「Baby,You Cry」…荒木真樹彦は3月にベスト盤「BACCHUS」を聴いて、その音楽性に魅かれた。マルチプレイヤー、渋く色気のある歌声、優れたメロディーセンス、ファンクやAORなど多彩な音楽性…どれも自分の好みそのもの。

今作と同時に入手した1stアルバム「SYBER BEAT」はファンク寄りな作品だったが、2ndである今作はAOR寄りな曲が多くなっていた。ファンキーなノリも素晴らしいが、メロウなノリも魅力的。しっとりした曲だと、そのメロディーセンスや歌声が尚更際立つ。決して派手ではないが楽曲を引き立てる、本人によるギターサウンドもインパクト抜群。荒木真樹彦のオリジナルアルバムは3作持っているが、今のところは今作が一番好き。

 

とりあえず、こんな感じ。次回も楽しみにしていただけたらありがたい。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年3月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年3月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年3月は中々の激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫することができました。今回は特に初めまして部門の方で、選択に迷いました。

 

それでは、「惜しくも受賞を逃した作品」を挙げていきます。

 

【初めまして部門】

森丘祥子「Pink&Blue」(1990年)

・MAYUMI「The Art Of Romance」(1993年)

・詩人の血「とうめい」(1990年)

米川英之「HALF TONE SMILE」(1994年)

佐藤聖子「SATELLITE☆S」(1995年)

・Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」(2013年)

 

【顔見知り部門】

・D-PROJECT「PAGES」(1993年)

・ANNA BANANA「High-Dive」(1993年)

・染谷俊「マーガレット」(1998年)

 

まずは初めまして部門から。

 

森丘祥子「Pink&Blue」

ピンク&ブルー

ピンク&ブルー

 

森丘祥子は「夢で逢えたら」のカバーで名前を知り、その可愛らしい歌声に魅かれた。そのカバーは次作のタイトル曲として収録されるわけだが、今作はアイドル然としたポップスが並んだ作品である。元々アイドルとして活動していたので「然」と付けるのも少々違和感があるが。

歌声という特色を最大限に生かすようなポップな曲ばかりとなれば、まずハズレは無い。オリジナル曲の完成度もさることながら、ハイファイ・セットの「冷たい雨」のカバーも印象的だった。ウォール・オブ・サウンド風のアレンジがされているのだが、原曲には無い新たな魅力に気付かせてくれるようなカバーだった。この手のガールポップ系のアルバムはとにかく自分好み。もう少しこの路線の作品を聴いてみたかった。

 

MAYUMI「The Art Of Romance」

The Art Of Romance

The Art Of Romance

 

MAYUMIは作曲家として活躍しているイメージがあったが、ソロアルバムを入手したのは今回が初だった。とは言っても、作曲家やプロデューサーに徹する形であり、本人がボーカルを担当しているわけでも演奏をしているわけでもない。

3人の外国人ボーカル(男性2人・女性1人)を起用し、曲によってその3者を使い分ける…という形の作品。今井美樹稲垣潤一に提供した曲のセルフカバーもあるのが特徴。当然ながら全編英語詞の作品である。今作にハマったのは、何よりもサウンド面と言える。シティポップ・AORの界隈に教科書があるとすれば、それで紹介しても良いと思えるほどに王道なAORサウンド。演奏には外国人の実力派ミュージシャンを多数起用しているため、聴き心地がとても良い。AORならではの繊細さを漂わせつつも、ガールポップ的なキャッチー性を忘れないMAYUMIのメロディーも絶品。90年代のAORの隠れた傑作である。

 

詩人の血「とうめい」

とうめい

とうめい

 

詩人の血は個人的に好きなレコード会社であるEpicソニー所属だったということや癖の強い名前であることもあって、前から名前だけは知っていたバンドだった。作品を入手したのは今回が初。

名前やボーカルの辻睦詞の容姿だけ見てV系のような作風なのかと思っていたが、実際に聴いてみると渋谷系を通過したようなお洒落かつひねくれたポップスが展開されていた。辻睦詞による独特な詞世界やボーカルは、一度聴けば忘れられない確かなインパクトがあった。多彩なジャンルを取り入れた、カラフルでいびつなサウンドもたまらない。「心地良い違和感」とでも称するべきか。このような楽曲たちは、今聴いても古臭さが無い。他の作品も聴いてみたいと思った。

 

米川英之「HALF TONE SMILE」

HALF TONE SMILE

HALF TONE SMILE

 

米川英之C-C-Bに所属していたというイメージが強いものの、ソロ作品はシティポップ・AORの色が強いと知って気になっていた。そして、1stアルバム「Sweet Voyage」と共に入手した。そちらも良いと思ったのだが、今作の方が気に入ったのでこちらを紹介する。

米川英之の渋くて格好良い歌声は、洗練された楽曲によく合っていた。全曲が米川英之作曲によるものだが、どの曲もしっかりと耳に残る仕上がりになっていたのが流石。サウンド面の聴きごたえは予想通りのものだった。90年代はシティポップ・AORの冬の時代だったと思っているのだが、そのような中でも本格的な作品があったことに驚いた。

 

佐藤聖子「SATELLITE☆S」

SATELLITE☆S

SATELLITE☆S

 

いつ頃からかはわからないが、80年代後半〜90年代中頃くらいのガールポップ系アーティストを深堀りしようと思い立ち、それに括られるアーティストの作品を色々と物色するようになった。佐藤聖子はその中でも代表的な存在であり、数ある作品の中でも今作を最初に入手した。

少し自作があるものの、ほぼ提供曲…という構成はまさにガールポップの王道。タイアップが付いた曲が多く収録されているだけあって、どの曲もとてもキャッチーだった。どの曲がシングル曲なのかわからなくなってしまったほど。可愛らしさ、透明感、力強さなど様々な面を併せ持った佐藤聖子の歌声は「理想の女性ボーカル」そのものだった。今作を1周聴いただけで、あっという間に佐藤聖子にハマってしまった。聴いた後に、他のオリジナルアルバム3作を立て続けに入手してしまったくらい。まだまだ聴き込んでいきたい。

 

Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」

アイネ クライネ リヒトムジーク

アイネ クライネ リヒトムジーク

 

Contrary Paradeは、いつもお世話になっているフォロワーさんからの紹介で名前を知った。自分の好きなグループであるadvantage Lucyに似た音楽性のようで、それを聞いてすぐに作品を入手した。

ずっと聴いていたいと思わせてくれるような心地良さと、お洒落な要素を持ったポップスの数々を楽しめる作品だった。ボーカルのたなかまゆの清涼感のある歌声と、キラキラしたポップサウンドとの相性は素晴らしいものがあった。多彩なアプローチがされた楽曲が展開されているのだが、どの曲もキャッチーなのは共通している。収録曲の「エイプリルシャワー」を一回聴いただけで、今作は自分の好きな作品だ…と予想していたが、見事に当たった。

 

次は顔見知り部門。

 

D-PROJECT「PAGES」

PAGES

PAGES

 

D-PROJECTは2月に「TEMPEST」を入手し、ニューウェーブ色の強いロックやポップスにハマった。しかし、今作はAORやソウルに傾倒した作品となっている。とはいえ、いきなり新たなジャンルを取り入れた時に感じてしまいがちな、ぎこちなさは全く無い。ずっとそのジャンルをやってきたかのような風格があった。

D-PROJECTのボーカルであるジョー・リノイエは、崎谷健次郎東野純直の中間のような透明感や伸びのある歌声が魅力的なのだが、AOR色の強いサウンド面のおかげで、その歌声の良さが引き出されている印象があった。全編通して溢れる、洗練された雰囲気に魅かれた。ニューウェーブを主体としてきたD-PROJECTにとっては今作が異色な作品なのかもしれないが、それでも今作が好き。

 

ANNA BANANA「High-Dive」

High-dive

High-dive

 

※正しい発売日は「1993/6/23」である。

ANNA BANANAは以前「SING SELAH」を聴いた。その頃は歌声が好きだと思ったくらいでそれほどハマらなかったものの、今作を入手してそれが変わった。ちなみに、ANNA BANANAは父親がイタリア人で母親が日系アメリカ人のようだが、楽曲は全て日本語詞である。モデルとしても活動していたという。

今作はアシッドジャズに傾倒していた頃の田島貴男がプロデュースを手掛けており、サウンド面は当時のORIGINAL LOVEの作品そのままと言ったところ。楽曲に関しては、自作(共作含む)と提供が半々になった構成。凝ったサウンド面や、メロウな雰囲気漂う楽曲・ボーカルはいつまでも聴いていたいと思わせてくれる。今後は再評価が進んで、プレミアが付きそうな予感がする。リリース当時のORIGINAL LOVEの作風が好きなら、聴いて損は無いと思う。

 

染谷俊「マーガレット」

マーガレット

マーガレット

 

染谷俊は昨年に初期のアルバム3作を聴いてハマった。尾崎豊を彷彿とさせる力強いメッセージ性に溢れたロックナンバーが印象的だったが、それと同じくらいポップな要素も持っており、その両面に魅かれた。それはピアノロックならではの魅力と言えるだろう。

今作は社会派な要素が少し薄れ、ラブソングが多くなった。そのため、ポップ性が前面に出た作風となっている。ただ、優れたメロディーメーカーとしての実力を実感させてくれるような曲が揃っている。どこまでも真っ直ぐなメッセージも、これまでと何ら変わらない。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

詳説・収穫月間MVP 2018年3月編

管理人のツイッター界隈では毎月第2土曜日恒例?の行事である「#収穫月間MVP」の発表日がやって来た。

 

何度も説明してきたが、今一度「収穫月間MVP」についての説明を行う。

 

「収穫月間MVP」は前の月に初めて作品を入手したアーティストが対象の「初めまして部門」と、それ以前から作品を入手していたアーティストが対象の「顔見知り部門」とがある。それぞれ2作品ずつ。

以前から作品を入手していたが、塩漬けにしていて聴いていなかった作品が対象の「感動の再会部門」と題した部門も一応ある。管理人は一度だけそれを適用したことがあるが、それ以降は対象作品が無かったため使っていない。

受賞作品と同時に「惜しくも受賞を逃した作品」も発表しているが、これは「他の月だったら受賞しただろうになあ…」「紹介しないでおくのはもったいないかな…?」と思った作品たちである。こちらもMVPと同じくらい素晴らしいと思ったし、他の方にも聴いていただきたい作品だ。

 

長くなってしまったが前置きはここまで。ツイッターで既に受賞作品は発表したが、こちらでも発表させていただく。

 

初めまして部門

 

飯島真理「ROSÉ」(1983年)

ROSE

ROSE

 

 

田嶋里香「Greetings」(1996年)

Greetings

Greetings

 

顔見知り部門

 

スターダストレビュー「IN THE SUN,IN THE SHADE」(1989年)

IN THE SUN,IN THE SHADE

IN THE SUN,IN THE SHADE

 

アツミサオリ「空色ノスタルジー」(2006年)

空色ノスタルジー

空色ノスタルジー

 

惜しくも受賞を逃した作品

初めまして部門

森丘祥子「Pink&Blue」(1990年)

・MAYUMI「The Art Of Romance」(1993年)

・詩人の血「とうめい」(1990年)

米川英之「HALF TONE SMILE」(1994年)

佐藤聖子「SATELLITE☆S」(1995年)

・Contrary Parade「アイネ クライネ リヒトムジーク」(2013年)

 

顔見知り部門

・D-PROJECT「PAGES」(1993年)

・ANNA BANANA「High-Dive」(1993年)

・染谷俊「マーガレット」(1998年)

 

このような顔ぶれとなった。いつになく、女性ボーカルの作品が多めな印象がある。特に意識していたわけではないが。
ここからは、受賞した4作の簡単な感想を書いていく。

 

 

飯島真理「ROSÉ」…飯島真理は「愛・おぼえていますか」をかなり前に聴き、その曲しか知らない状態だった。その頃から、透明感と可愛らしさとを併せ持った歌声に魅かれていたが、本格的に作品を手に取ったのは今回が初だった。
坂本龍一がプロデュースを手掛けただけあって、全編通してシンセが大活躍している。実力派ミュージシャンが多数参加したことによって生まれた、隙のない生音としっかり両立している。徹底的に作り込まれているのに、どこまでもポップに仕上げるそのプロデュース能力に圧倒されたが、飯島真理のメロディーメーカーとしての実力にも驚かされた。どことなくひねくれた展開を見せつつも、サビで一気に聴き手の心を掴んで離さない。
歌声は期待していた通りだった。最初は「べたべたしてるなあ…」と思ってしまったのだが、あっという間に慣れて、心地良いものに変わる。その歌声は、幻想的な今作の世界観を演出していた。一曲一曲の完成度も素晴らしいものがあった。1stにして最高傑作と称されることが多いのも頷ける、確かな名盤だった。飯島真理の作品を、もっと聴き込んでいきたい。

 

 

田嶋里香「Greetings」…いつからかはわからないが、「90年代のガールポップを深堀りしてみよう!」と思い立って、その手のアーティストの作品を色々と漁り始めた。その中で作品を入手して、ハマったのが田嶋里香だった。
「声が美人」という何とも気持ち悪い表現をしてしまうのは恐縮だが、まさにそのようなフレーズがよく似合う。ふんわりしていて、聴いていて心地良い歌声。つまりは自分にとっての「理想の女性ボーカル」である。

それに確かなポップ性を持った曲が並んでいれば、まずハズレは無い。90年代特有の、キラキラシンセサウンドが多用されたポップスには一切の隙がない。1stアルバム「RIKA」も聴いて良いと思ったのだが、こちらは田嶋里香にハマるきっかけとなった「My Friend」が収録されているので、今作に僅差で軍配が上がった形。田嶋里香はアルバム未収録のC/W曲が多いので、シングルを気長に探していきたいと思う。

 

 

スターダストレビュー「IN THE SUN,IN THE SHADE」…スターダストレビューは、かなり前から楽曲やその名前を知っていた。とはいえ「今夜だけきっと」「夢伝説」「木蘭の涙」の3曲しか知らなかったのだが、それでも好きなバンドだった。先月になって、深く聴いてみようとふと思い、オリジナルアルバムを入手した形だ。

洗練された、都会的な雰囲気に溢れた作品だった。それでいて、どの曲もポップ。ほとんどの楽曲の作曲、全曲の編曲を三谷泰弘が手がけていたことには驚いた。個人的には、山下達郎のライブでコーラスを担当しているイメージが強かったためだ。スターダストレビューに在籍していたことは知っていたが、楽曲制作にここまで大きく関与していたとは思わなかった。ボーカリストとしても、根本要に負けず劣らずの存在感を発揮していた。

春に聴いても十分楽しめたが、夏が似合う曲が多く並んでいるので、夏に聴いたらもっと楽しめると感じた。今作でスターダストレビューにハマれたので、他の作品もどんどん聴いていきたいと思う。

 

 

アツミサオリ「空色ノスタルジー」…アツミサオリは昨年「もう少しもう少し…」のシングルを入手していた。歌声が自分好みで、もっと聴いてみたいと思っていたのだが、肝心のアルバムが中々見つからずに悶々としていた。それから1年が経って、やっと今作を入手することができた。今作はフォロワーさんの好きなアルバムランキングで紹介されていて、名盤であることはある程度察しがついていた。

「ギター系女性シンガーソングライター界隈の傑作」とでも言いたくなるような作品だった。どこをどう切り取ってもポップ。全曲がしっかりと耳に残った。アツミサオリ特有の、ふわっとした可愛らしい歌声がとにかく映える曲ばかり。シンプルで温かみのあるバンドサウンドもたまらない。入手するまで苦戦したのに見合うだけの、確かな名盤だった。これからもずっとお世話になりそうだ。

 

とりあえず、こんな感じ。「惜しくも受賞を逃した作品」の感想はまた後日。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品〜2018年2月編〜

今回は「詳説・収穫月間MVP 2018年2月編」の続き。タイトル通り「惜しくも受賞を逃した作品」についての簡単な感想を書いていきます。

2018年2月は中々の激戦区で、それこそ「他の月だったら受賞していただろうなあ」と思うような作品を数多く収穫することができました。

 

それでは、「惜しくも受賞を逃した作品」を挙げていきます。

 

【初めまして部門】

原田真二「DOING WONDERS」(1986年)
一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」(2010年)
黒川芽以「10 sprout」(2007年)

豊崎愛生「love your life,love my life」(2011年)
・benzo「DAYS」(1999年)

 

【顔見知り部門】

黒沢健一「Focus」(2009年)
GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」(1990年)
角松敏生「TOUCH AND GO」(1986年)
米光美保「FOREVER」(1995年)
山下達郎「POCKET MUSIC」(1986年)

 

まずは初めまして部門から。

 

原田真二「DOING WONDERS」

DOING WONDERS

DOING WONDERS

 

原田真二は前から名前を知っていたが、作品を入手することはないという状態だった。どうしてもデビュー当初の楽曲の印象が強かったのだが、80年代の作品の評価もかなり高かった上に、音楽性が自分好みだと知ってからは気になっていた。そして、入手して聴いたのが今作。

「なんだこの耽美的な作品は…」今作を聴き終えてすぐに、このような感想が出てきた。まるでPrinceのようにファンキーで、官能的で、美しい、何よりポップな曲が揃っていた。

今作には、僕の知っているデビュー当初のアイドル同然だった原田真二はいなかった。全曲の作詞作曲編曲プロデュースに加え、ほとんどの楽器の演奏を自らこなす天才的なアーティストの姿があった。そして、メロディーメーカーとしての卓越した実力を遺憾無く発揮していた。僕は原田真二の才能にもっと溺れて圧倒されたいと思った。

 

一風堂「ESSENCE:THE BEST OF IPPUDO」

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

 

一風堂は「すみれSeptember Love」しか知らなかったが、久し振りに聴き返して、そのサウンドの格好良さに惚れ直した。

「80年代を深掘りする」「ニューウェーブニューロマンティックに詳しくなる」これらの目標を年初めに立てた僕にとって、一風堂はその二つを達成する存在だった。このような経緯から、このベスト盤を入手した。オリジナルアルバムはオンラインショップ限定販売なので仕方がない。

今作には、今聴いても「格好良い」と感じられるだけの曲が揃っていた。凝った要素と親しみやすさを絶妙なバランスで併せ持った曲たちが素晴らしい。様々なジャンルを自由自在に行き来して、少々ひねくれたポップスやロックを作り出すその技術に圧倒された。

音楽性は多少違うが、一風堂YMOに匹敵するくらい先鋭的な音楽をやっていたバンドではないかと感じた。オリジナルアルバムや、土屋昌巳ソロにも手を伸ばしていきたい。

 

黒川芽以「10 sprout」

黒川芽以は女優としてのイメージしかなかったが、フォロワーさんの布教によって歌手活動も行っていたことを知った。歌の上手い下手に限らず、女優の音楽活動というのは割と好きだ。

あるフォロワーさんが自分より一足早く今作を入手し、その良さを語っていた。それに触発された僕はすぐに入手した。

聴いていて心地の良い歌声に加え、一曲一曲の完成度もかなり高かった。数曲は黒川芽以自らによる作詞や作曲が行われていることを知って、驚いた。音楽活動は今作を最後に終わってしまったわけだが、続けてほしかった。「理想の女性ボーカル」に入るくらいには好きな歌声である。

 

豊崎愛生「love your life,love my life」

love your life,love my life(初回限定盤)(DVD付)

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僕は元々、声優の作品には全く無頓着であった。しかし、花澤香菜の作品を聴いてからは様々な声優の作品に手を出すようになった。花澤香菜が「理想の女性ボーカル」なので、他の声優の作品を聴けばより効率良くそのような存在に出逢えるのではと考えたからだ。そして、出逢ったのが豊崎愛生の1stアルバムである今作。

ふわふわとした可愛らしい歌声。聴いていて思わずニヤニヤしてしまった。豊崎愛生がよく聴いているというアーティストから提供された楽曲も、そのラインナップに恥じない確かなクオリティがあった。お洒落な音作りが絶品。一聴しただけですっかりハマってしまった。同じ月に2ndアルバム「Love Letters」も入手して楽しんでいる。まだまだ聴き込んでいきたい。

 

benzo「DAYS」

DAYS

DAYS

 

benzoというバンド名も作品名も知らなかったが、派手なジャケ写は何となく見覚えがあった。90年代後半のシティポップの名盤として紹介されることが多かったからだろうか。また、サニーデイ・サービスのファンなので、benzoのメンバーだった高野勲の活躍も、今作を手に取る前から知っていた。

いざ聴いてみると、どこか懐かしくお洒落な楽曲に魅せられた。洋楽からの影響をサウンド面で表現しつつも、曲全体としては日本的な情緒を漂わせる。そのセンスが絶妙だった。この手の音楽は、時代を経ても変わらずに楽しめると思う。これからも定期的に聴いていきたい。

 

【顔見知り部門】

 

黒沢健一「Focus」

Focus

Focus

 

僕はL⇔Rが大好きでよく聴いているのだが、黒沢健一のソロはそこまで聴いてはいない。作風の違いははっきりと理解しているのだが、どうしてもL⇔Rの作品に集中して聴いてしまう。そうした状況で入手したのが今作。

30分台というかなり短い作品ではあるが、どの曲も本当にポップでしっかり耳に残る。天才ポップス職人としての実力が冴え渡っているのがよくわかった。歌声こそ前よりも変わっていたが、メロディーに関しては一切変わりが無かった。日常のワンシーンに寄り添うような、優しく美しい曲たち。これぞポップス!と言いたくなるような作品だった。「first」「B」と今作しか持っていないものの、その中だと最も好きな作品になった。黒沢健一のソロ作品はまだまだ持っていないものが多いので、少しずつ集めていきたい。

 

GRASS VALLEY「瓦礫の街〜SEEK FOR LOVE〜」

瓦礫の街

瓦礫の街

 

GRASS VALLEYは昨年の11月に初めて聴いて、その格好良さに魅せられた。「80年代にもこんなバンドがいたのか!」と衝撃を受けたのと同時に、ニューウェーブニューロマンティックに興味を持つきっかけとなった。いつのまにか、GRASS VALLEYは自分にとって大きな存在になっていた。

今作もやはり、全く期待を裏切らない力作だった。ドラムの上領亘が脱退する前にリリースされた最後の作品で、バンドとしての形を何とか存続させるためにコンセプトアルバムの形式をとっている。戦地に住む少年少女の物語…という感じだろうか。聴いていて、どんどん作品の世界に引き込まれていくような感覚があった。格好良いのに、どこか幻想的な雰囲気を持ったGRASS VALLEYならではの楽曲はこれまでの作品と何ら変わっていない。

これまでに入手した作品もハマったが、今作も愛聴盤となりそうだ。

 

角松敏生「TOUCH AND GO」

Touch And Go

Touch And Go

 

角松敏生は前から好きなアーティストだが、ほとんどの作品が高価ということもあって、中々深く聴き込めていないという状態だった。ただ、1月に「AFTER 5 CLASH」を聴いてその格好良さに圧倒されて、同じく人気作である今作を手に取った。

当時としては最新鋭のエレクトリックサウンドと、隙のないバンドサウンドとを両立させたAORやファンクを楽しめた。コンパクトな作品ではあるが全曲が存在感を放っていて、聴きごたえが凄い。キレの良いファンクから、聴き惚れてしまうようなバラードまで幅広い。曲順の妙とでも言うのか、何度聴いても聴き飽きない。卓越したメロディーメーカー・サウンドクリエイターであったことの証左となる名盤だった。

 

米光美保「FOREVER」

FOREVER

FOREVER

 

米光美保は昨年の12月に「From My Heart」を聴いて、透明感溢れる歌声に魅かれた。今作は「From My Heart」と同様に、角松敏生がプロデュースを手掛けた。近年のシティポップ ・AORの再興の影響を受けてか、プレミアがついているようだ。

プロデューサーのネームバリューを抜きにしても良いと思えるだけの作品だった。プレミアがついているのも頷ける。打ち込みを多用しつつも、しっかりとバンドサウンドと共存させたサウンド面は確かな聴きごたえがあった。一曲一曲の完成度や、米光美保の表情豊かなボーカルも素晴らしい。大橋純子吉田美奈子の楽曲のカバーも収録されているのだが、原曲の存在感に劣らない新たな解釈がされていて楽しめた。シンガーとしての実力の高さを再確認させられた作品だった。「From My Heart」と同じく、好きな作品になった。

 

山下達郎「POCKET MUSIC」

POCKET MUSIC

POCKET MUSIC

 

山下達郎は自分にとっては普遍的な存在にまで上がった、特に好きなアーティスト。しかし、作品が割と高価で出回っていることもあって、オリジナルアルバムは今年に入るまでは中々集まっていない状態だった。

今作がリリースされた頃はデジタルレコーディングが始まったので、山下達郎もそれに対応するために奮闘した「実験作」という位置付けだろうか。音作りに使用したパソコンがクレジットされているのは何とも時代性を感じた。とは言っても、生音とはしっかり共存していた上に、山下達郎らしい普遍性に満ちたポップスの数々は一切変わっていなかった。いつになくメッセージ性の強い、内省的な詞世界も印象的だった。キャリアを通じてもかなり地味な作品だとは思うが、長く聴いていけるような作品だとも感じた。

 

2月も素晴らしい収穫ばかりだった。これからももっと素晴らしい作品に出逢いたい。

とりあえず、こんな感じ。またいつか。