詳説・収穫月間MVP 2019年1月編

受賞作は以下の通り。

 

初めまして部門

 

・microstar「microstar album」(2008年)

マイクロスター・アルバム

マイクロスター・アルバム

 

 

清水宏次朗「MIND BREEZE」(1991年)

マインド・ブリーズ

マインド・ブリーズ

 

 

顔見知り部門

 

佐野元春「VISITORS」(1984年)

VISITORS

VISITORS

 

 

Prefab Sprout「STEVE McQUEEN」(1985年)

スティーヴ・マックイーン

スティーヴ・マックイーン

 

 

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

初めまして部門

 

・The Blue Nile「HATS」(1989年)

ハッツ(デラックス・エディション)(紙ジャケット仕様)

ハッツ(デラックス・エディション)(紙ジャケット仕様)

 

 

エース清水「TIME AXIS」(1993年)

TIME AXIS

TIME AXIS

 

 

・大城光恵「海へ行こうよ」(1994年)

海へ行こうよ

海へ行こうよ

 

 

放課後ティータイム放課後ティータイム Ⅱ」(2010年)

TVアニメ「けいおん! ! 」劇中歌集 放課後ティータイム II(初回限定盤)
 

 

顔見知り部門

大沢誉志幸「CONFUSION」(1984年)

CONFUSION

CONFUSION

 

 

かの香織「カナシイタマシイ」(2001年)

カナシイタマシイ

カナシイタマシイ

 

 

このような顔ぶれとなった。発表からかなり時間が経ってしまったため、受賞を逃した作品も含めて簡単な感想を書いていく。

初めまして部門

 

・microstar「microstar」…自分は元々NICE MUSICというユニットが好きでよく聴いているが、microstarはそのメンバーだった佐藤清喜が飯泉裕子と組んだユニット。

オールディーズからの影響を感じさせる「古びない」メロディーの数々と、生音・打ち込み共に徹底的に作り込まれたサウンドの相性は素晴らしいものがあった。穏やかでゆったりと時間が流れていくような感覚がたまらない。コンパクトな長さも相まって、何度も繰り返し聴いている。NICE MUSIC時代の諸作品を聴いていても思うことだが、佐藤清喜は本当に優れたメロディーメーカーである。新たなポップアルバムの名盤に出逢えた。

 

清水宏次朗「MIND BREEZE」…清水宏次朗は俳優としての姿しか知らないが、かつては音楽活動も積極的に行なっていたようだ。その中でも今作はシティポップ・AORに傾倒した作風のようで、それで名前を知って興味を持った。

その触れ込み通りの作品だった。全編を通して、お洒落で聴きごたえのあるサウンドが展開された曲ばかり。山下達郎角松敏生を彷彿とさせる曲もあった。清水宏次朗の渋い歌声もそうした曲によく合っていたと思う。一曲一曲の完成度も相当に高く、シティポップ・AORが好きな方ならまず外さない作品だろう。

個人的には、自分の好きな80年代バンドの一つであるアイリーン・フォーリーンの安岡孝章が数曲の作曲やアレンジで参加していることに驚いた。まさかこの作品で彼のメロディーセンスを再認識させられるとは思ってもいなかった。内容自体も大好きだが、そうした点でも印象に残った作品。

 

顔見知り部門…

 

佐野元春「VISITORS」…今作は佐野元春のキャリアを通じても屈指の異色な作品として扱われることが多い印象があった。日本におけるヒップホップの先駆けとされることもあり、どのような作品なのかとずっと気になっていた。

自分のイメージする佐野元春の楽曲からはかけ離れた曲ばかりだったが、決して取っつきにくい作品ではなかった。むしろポップな曲も多いため、聴きやすいとさえ感じた。

佐野元春の曲は歌詞も大きな魅力だと思う。今作はいつもに増して歌詞が「突き刺さる」感覚があった。全体を通じてはっきりと意味が分かるものはそこまで無いのだが、断片的な言葉が印象に残って離れない。

今作を語るのは本当に難しい。リアルタイムで今作を聴いたファンはどう感じたのだろう。

 

Prefab Sprout「STEVE McQUEEN」…Prefab Sproutは昨年に聴き始めてハマり、現時点では洋楽の中でも一番好きなバンドとなっている。今作は彼らの出世作及び代表作としてよく取り上げられ、80年代を代表する名盤として紹介されることもある。

パディ・マクアルーンによる美しくポップなメロディーと、緻密に作り込まれたシンセと骨太な生音の絡み。そして、ウェンディ・スミスの透明感のあるコーラス。自分が思うPrefab Sproutの魅力は今作で確立されたと言える。様々なジャンルを消化したメロディーやサウンドに引き込まれるばかりで、あっという間に聴き終えてしまった。またPrefab Sproutが好きになった。

 

惜しくも受賞を逃した作品…

初めまして部門

 

・The Blue Nile「HATS」…The Blue Nileは寡作のシンセポップバンドとして名前を知った。今作は彼らの代表作として挙げられることが多く、収録曲の一つ「The Downtown Lights」を聴いてハマり、すぐに入手した。

今作を初めて通して聴いたのは深夜だった。少し肌寒い中で聴いたのだが、それが今作を楽しむには最適なタイミングだったのではと思う。全編を通して、ボーカルを含めた全ての音が一切の無駄なく鳴らされていた。それがどこまでも甘く美しいメロディーに乗せられる。ここまで幻想的なポップスがあるのかと思った。聴いているうちに夜の世界に溶け込んでいくような感覚があった。それ以来、今作は夜にしか聴いていない。自分にとっては「夜のサウンドトラック」のような存在となっている。

 

エース清水「TIME AXIS」…彼の所属する聖飢魔IIの作品は全く聴いたことが無いのだが、元GRASS VALLEYの本田恭之がサウンドプロデュースに関わっていると知り、今作に興味を持った。

全体を通してAOR色の強いお洒落なポップスの数々を楽しめる作品だった。聖飢魔IIのそれとは全く異なる作風で、後のface to aceでの活動を予見していたかのよう。何より、エース清水によるポップなメロディーと、本田恭之によるカラフルかつ幻想的なシンセの絡みが素晴らしい。「シンセの魔術師」とでも言いたくなるくらい。エース清水と本田恭之は後にface to aceとして活動するわけだが、やはり相性が良かったのだろうと思う。そちらの作品もいずれ聴いてみたいところ。

 

・大城光恵「海へ行こうよ」…大城光恵はフォロワーの好きな女性アーティストという印象があった。YouTubeで何曲か聴いて好印象だったのだが、フォロワーの作った好きなアルバムランキングでかなり上位に入っていたことでさらに興味を持った。

フォークソングからの影響を感じさせる素朴で親しみやすいメロディーと、独特な歌声に引き込まれた。明るくハキハキした可愛らしい歌声と言ったところか…似たような歌声の持ち主はいくらでもいそうだが、意外と思いつかない。90年代ガールポップはそれなりに探索してきたつもりだったが、まだまだ浅かった。もっと好きなアーティストが見つかりそうな気がする。

 

放課後ティータイム放課後ティータイムⅡ」…『けいおん!』は一切観たことがないのだが、豊崎愛生寿美菜子のソロ作品は既に聴いていて好きということもあり、今作にも興味を持った。

聴いていて「!?」となるような詞世界と爽快なバンドサウンドによるポップ・ロックが終始展開されており、聴いていてとても心地良い作品だった。どの曲もメロディーが強い上に、曲ごとにボーカルが異なることもあって、新鮮な気分で聴くことができた。恐らく『けいおん!』を観た上で聴けばもっと楽しめるのだろう。観たいと思ったと共に、他の作品も聴いてみたいとも思った。

 

顔見知り部門

 

大沢誉志幸「CONFUSION」…大沢誉志幸は長らくベスト盤止まりでオリジナルアルバムは聴いてこなかったのだが、昨年に「in・Fin・ity」を入手してからは少しずつ集まってきている。

今作は代表曲「その気×××(mistake)」「そして僕は途方に暮れる」が収録されたヒット作。それだけでなく、銀色夏生(作詞)・大沢誉志幸(作曲)・大村雅朗(編曲)という制作体制の集大成となった作品でもある。外国人ミュージシャンが多数参加したという生音よりも、どちらかというと打ち込みの方が印象に残る。この頃特有のひんやりとした響きの音に包まれるような感覚のある作品で、当時としては最新鋭のサウンドだったのだろうと思う。シングル曲だけのイメージで聴くと少々マニアックな作品という印象もあるが、この手のサウンドが好きな自分はすぐにハマった。

 

かの香織「カナシイタマシイ」…かの香織は去年出逢ったアーティストの中でも特にハマった方に入ってくる。「ポップス職人」という言葉が似合う数少ない女性アーティストだと思う。

今作はインディーズに拠点を移しての作品。タイトル通り「悲しみ」がキーワードとなった曲が並んでいるわけだが、バラードばかりというわけではない。かの香織独特の、美しく盛り上がりのあるメロディーという魅力が遺憾なく発揮された曲が揃っている。徹底的に作り込まれたシンセの音が主体となった、幻想的で聴きごたえのあるサウンド面も素晴らしい。90年代の諸作品と比べても全く遜色が無いどころか、さらに凄みを増している感覚さえあった。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

詳説・収穫月間MVP 2018年12月編

受賞作は以下の通り。

 

初めまして部門

・シオダマサユキ「SUPER MASTERPIECE」(2008年)

SUPER MASTERPIECE

SUPER MASTERPIECE

 

 

坪倉唯子「Loving You」(1990年)

LOVING YOU

LOVING YOU

 

 

顔見知り部門

 

・SECRET CRUISE「TELL YOU WHAT」(1996年)

Tell You What

Tell You What

 

 

藤井隆「ロミオ道行」(2002年)

ロミオ道行

ロミオ道行

 

 

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

 

初めまして部門

・安部純「Be Mine」(1993年)

ビー・マイン

ビー・マイン

 

 

顔見知り部門

星野源「POP VIRUS」(2018年)

 

・Date of Birth「GREATEST HITS 1989-1999」(1989年)

グレイテスト・ヒッツ1989-1999

グレイテスト・ヒッツ1989-1999

 

 

Venus Peter「SPACE DRIVER」(1992年)

SPACE DRIVER

SPACE DRIVER

 

 

・渡辺信平「VOICES〜to your heart〜」(1990年)

ヴォイセス~トゥ・ユア・ハート

ヴォイセス~トゥ・ユア・ハート

 

 

早速、上記の作品の簡単な感想を述べていく。前回と同じく、発表から時間が経ってしまったため受賞作・惜しくも受賞を逃した作品も今回で書くこととする。

 

・シオダマサユキ「SUPER MASTERPIECE」…今作はとあるフォロワーの好きなアルバムランキングの中でもかなり上位に位置しているので、それで気になって探していた。1年半くらい探し続け、旅先のブックオフで今作を見つけた時には感動したことを覚えている。

ブラックミュージックやクラシック、AORなど多彩なジャンルからの影響が感じられる、美しくポップなメロディーに引き込まれた。また、力強いのに甘い歌声は他のアーティストには中々無い魅力だと思う。大江千里やKANを始めとして、ピアノ系男性シンガーソングライターは自分の好きなジャンルなのだが、また新たに好きなアーティストに出逢うことができた。

 

坪倉唯子「Loving You」…坪倉唯子B.B.クィーンズビーイング系アーティストの作品にコーラスで参加しているというイメージが強かった。完全なソロ作品を聴くのは今回が初だったのだが、自分が想像していた音楽性と全く異なっていて驚くばかりだった。

今作は「おどるポンポコリン」がリリースされる1ヶ月前にリリースされたというが、とても同じ人物が歌っているとは思えないほどに落ち着いた作品。全体的にAOR色の強い作風で、かすれ気味の艶やかな歌声がそうした作風によく似合う。B.B.クィーンズでのボーカルとはかなり違っていて、坪倉の歌唱力を実感させられた。他の作品も聴いてみたいところ。

 

・SECRET CRUISE「TELL YOU WHAT」…SECRET CRUISEは以前聴いたセルフタイトルの1stアルバムを聴いてハマって以来、ずっと2ndである今作を探していた。

シティポップ・AORに傾倒した作風なのは1stと変わっていない。ただ、1stよりも生音が主体となった曲が多く、さらにサウンド面の聴きごたえが増していた。叙情的かつキャッチーなメロディーの数々も素晴らしく、次から次へと好きな曲が出てきた。一周聴き終えた頃にはすっかり大好きな作品となってしまった。90年代はシティポップ・AORの冬の時代とされることがあるが、その中でもここまでの名盤が生まれていたとは…と驚くばかりだった。

 

藤井隆「ロミオ道行」…藤井隆は「light showers」を聴いてハマった。徹底的に作り込まれたコンセプトとお洒落な曲たちに魅かれた。そして、1stである今作を入手したわけだが、期待を超えてくる名盤だった。

松本隆がプロデュースを手掛けたというだけあって、80年代の歌謡曲やシティポップを彷彿とさせる曲が並んでいる。藤井隆本人もその時代の音楽に造詣が深いようで、ボーカルも様になっていた。筒美京平堀込高樹本間昭光といった実力派作家による曲の完成度も素晴らしい。「ナンダカンダ」「アイモカワラズ」がボーナストラック扱いでラスト2曲に収録されているが、アルバムの流れから切って聴くとやはり名曲。

 

惜しくも受賞を逃した作品

初めまして部門

・安部純「Be Mine」…安部純はアイドルへの楽曲提供やアレンジで活躍している印象が強く、シンガーソングライターとして活動していたことを知ったのがつい最近のこと。

シティポップ・AORの色が強いポップスが展開された作品だった。新川博中村哲がアレンジを手掛けただけあって、演奏には相当な聴きごたえがあった。当たり前とでも言うかのごとくキャッチーにまとめられたメロディーの数々は、彼が後に作家として活躍することを予見していたかのよう。安部の爽やかな歌声も心地良く、また自分で歌ってほしいと思った。

 

顔見知り部門

星野源「POP VIRUS」…星野源の作品は前作「YELLOW DANCER」しか持っていないが、それは大好きな作品。ブラックミュージックを王道なポップスと融合させた作風が自分好みであり、今作もそれを楽しみにしていた。

基本的な作風は前作と変わらないが、さらにディープなブラックミュージックを展開している印象があった。正直なところ、全体としては前作ほどのポップ性は無い。お洒落で上質な曲ばかりなのだが、不穏な雰囲気や猥雑さも感じられるところに引き込まれた。そうした「ひねくれた」部分が親しみやすく料理されており、その味付けが素晴らしい作品だった。

 

・Date of Birth「GREATEST HITS 1989-1999」…Date of Birthはちょうど1年前にベスト「King of Waltz」を聴いてハマった。英語詞の曲が多いため、洋楽志向が強いというよりは洋楽そのものをやっているような音楽性が特徴的。

「未来のベスト盤」という旨のテーマの作品らしく、今作は全編英語詞。ギターサウンドを前面に出し、サイケなポップス・ロックが展開された作品となっている。どこかで聴いたことのあるようなサウンドが印象的。それでいて、メロディーはキャッチーかつ美しいものばかり。ねじれたポップセンスがたまらない作品で、Date of Birthにさらにハマった。

 

Venus Peter「SPACE DRIVER」…Venus Peterはかなり前に次作「BIG “SAD” TABLE」を入手した。そちらは日本語主体によるサイケデリックなロックが展開されており、それでハマった。ただ、一般的には今作の方が人気でよく語られる印象がある。

マッドチェスターと呼ばれたジャンルからの影響を感じさせる、サイケなギターポップ・ギターロックが展開された作品。中でも一番好きな曲がオープニングの「Every Planets Son」である。この曲は本家ブログの「2018年に出逢ったベストソング 下半期編」でも紹介したくらい好きな曲。その後も高揚感に満ちた曲が次々と登場する。渋谷系を代表する名盤だろう。

 

・渡辺信平「VOICES〜to your heart〜」…一昨年に2ndアルバム「MUSIC」を聴いてハマった。リゾートミュージックに傾倒していた時期の山下達郎楠瀬誠志郎に似た路線のアーティストで、デビュー作である今作でもその魅力が発揮されていた。

ポップなメロディーとシンセ主体で構成されたキラキラしたサウンドの相性はぴったり。この頃のシンセの音色が好きな自分にはたまらない。渡辺の鼻にかかった甘い歌声による分厚いコーラスワークもそうした魅力をさらに高めている。山下達郎フォロワーであることはよくわかるが、渡辺信平オリジナルの部分も多くある。90年代シティポップにおける良作の一つだと思う。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

詳説・収穫月間MVP 2018年11月編

今回の受賞作品はこちら。

 

初めまして部門

Buono!Buono!2」(2009年)

Buono! 2 (初回限定盤)

Buono! 2 (初回限定盤)

 

 

中江有里「mémoire(メモワール)」(1992年)

メモワール

メモワール

 

 

顔見知り部門

大江千里「Untitled Love Songs」(2002年)

Untitled Love Songs

Untitled Love Songs

 

 

浜田省吾「Home Bound」(1980年)

Home Bound

Home Bound

 

↑リマスター盤。

 

このような顔ぶれとなった。惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

 

初めまして部門

・sisters「映画」(1999年)

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田村英里子「Behind the Heart」(1990年)

ビハインド・ザ・ハート

ビハインド・ザ・ハート

 

 

顔見知り部門

ORIGINAL LOVE「EYES」(1993年)

EYES

EYES

 

 

早速、受賞した作品の簡単な感想を書いていく。今回は発表からあまりにも時間が経ち過ぎてしまったので、「惜しくも受賞を逃した作品」の感想もセットで書いていく。

 

初めまして部門…

 

Buono!Buono!2」…2018年は48グループ・坂道系を始めとしたアイドルに深くハマり、色々と聴き進めた年だった。ただ、ハロプロ系はあまり聴けていない状態。その中で聴いた数少ないハロプロ系のグループがBuono!だった。

ロック色の強い曲が多いグループで、今作はそれが顕著だという予備知識を入れて聴いたが、まさにその通り。まだ幼さの残る3人のボーカルと激しいバンドサウンドの絡みは不思議と心地良く、聴いていてとても楽しい作品だった。シングル曲はもちろんのこと、アルバム曲も耳馴染みの良い曲ばかりですぐに印象に残る曲が多かった。早くも好きな作品となった。

 

中江有里「mémoire(メモワール)」…中江有里はコメンテーターや作家というイメージが強く、アイドル活動をしていたというのは全く知らなかった。本人としては忘れたい過去なのだろうか。

凛とした雰囲気のジャケ写からも察しがつくように、全体を通して明るさに満ちた作品というわけではない。透明感のある歌声を生かした、上質な曲が並んでいた。ポップな曲もあれど、あくまで上品さを失わないような仕上がり。アイドルというよりも、女優と言った方が合うのではと感じた。とはいえ歌声は自分の好みだったので、まだ入手していない2ndアルバムも入手したいと思う。

 

顔見知り部門…

 

大江千里「Untitled Love Songs」…大江千里は自分の一番好きなアーティストと言っていい存在なのだが、90年代後半以降の作品は歌声の変化のせいかあまり聴いてこなかった。ただ、今作は違った。

自分が思う大江千里の全盛期は80年代後半なのだが、その頃を彷彿とさせる入魂の名盤だった。90年代後半以降の作品は苦しそうな歌声が気になってあまり楽しめないということがあったものの、今作に限ってはそれが無かった。メロディーもアレンジも自分の好きなタイプのものが次々に出てきて、歌声がさほど気にならなかった。タイトル通りラブソング主体の詞世界にも引き込まれた。やはり大江千里は素晴らしい詩人だ。自分の中に長らく眠っていた大江千里への熱を蘇らせてくれる作品だった。

 

浜田省吾「Home Bound」…浜田省吾大江千里と同じく、自分の音楽遍歴の中で大きな存在となっているアーティスト。ただ、初期の作品は持っていないものが多く、かなりの人気作である今作もこの頃にやっと入手した。

ベスト盤で馴染みのある曲が多く収録されており、今作そのものもすぐにハマった。ロサンゼルスでレコーディングされた(浜田省吾にとっては初の海外レコーディング)ようで、ロック色がかなり強い作風がたまらない。今作以前の作品を聴いた時の違和感の正体はそれだったとわかった。浜田省吾自ら「第2のデビューアルバム」と称しただけあって、確かな完成度を誇る作品だった。

 

惜しくも受賞を逃した作品…

 

初めまして部門

 

sisters「映画」…sistersはフォロワーの影響で名前を知り、作品を入手した。女性3人組のバンドは数多くあれど、sistersは相当にマイナーだと思う。

凝ったコーラスワークが印象的なポップスを楽しめる作品だった。ボーカルの伊藤千恵の切なさに満ちた歌声は好みのどストライクで、聴いていてとても心地良かった。繊細さと力強さの間で絶妙なバランスが保たれている印象があり、気高ささえ感じられるほどだった。入手困難だとは思うが、他の作品も聴いてみたい。

 

田村英里子「Behind the Heart」…田村英里子アメリカで活躍する女優ということで名前を知っていたが、これまたアイドルという過去を知らなかった形。

80年代の終わり〜90年代後半頃まではアイドル冬の時代と称されることがあるが、今作はまさにその頃の雰囲気を感じさせる作品だった。ポップではあるがどこか陰がある感じ。ただ、シティポップの要素を散りばめた上質な曲たちはどれも完成度が高かった。歌声も自分の好きな部類で、聴き心地が良かった。他の作品も入手したいと思う。

 

顔見知り部門

 

ORIGINAL LOVE「EYES」…アシッドジャズの名盤として挙げられることがある「結晶」と、セールス的に飛躍を遂げた渋谷系の名盤「風の歌を聴け」の間で何とも地味な印象の作品。今作について語られることは少ないと思う。そのため、今作の入手が遅れてしまっていた。

ジャズやファンク、ソウル、ブラジル音楽など多彩なジャンルを取り入れた雑多なポップスに圧倒される作品だった。自分が勝手に思っているORIGINAL LOVEの王道的な作風はこの頃のものだったとわかった。田島貴男の歌い方もデビュー当初から変わり、この頃に定まったようだ。過渡期の作品といってしまえばそれまでだが、過小評価されるには惜しい。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。

 

詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年10月編

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

 

初めまして部門

指田郁也「しろくろ」(2013年)

山崎あおい「アオイロ」(2014年)

Jellyfish「Spilt Milk」(1993年)

大森洋平「20 R.P.M.」(1997年)

 

顔見知り部門

Mr.Children「重力と呼吸」(2018年)

近藤名奈「最高の笑顔を花束にして」(1994年)

COKEBERRY「Sugar Plum Fairy」(1996年)

オオゼキタク「夜明けのスピード」(2004年)

 

早速、↑に挙げた作品の簡単な感想を書いていこう。

 

 

指田郁也「しろくろ」

しろくろ(初回限定盤)
 

指田郁也は前から名前だけ知っていたが、趣味の合うフォロワーさんが今作を高評価していたことで興味を持った。

山下達郎小田和正マイケル・マクドナルドなどから影響を受けたというだけあって、洗練されたポップスの数々を楽しむことができた。シティポップ・AORテイストの強い曲、ファンクの要素を持った曲、ロック色の強い曲など多彩な作風に引き込まれた。「花になれ」「バラッド」を先に聴いていたためか、バラードシンガーとしてのイメージが強かった。ただ、今作を聴いて指田郁也が幅広い音楽性を持ったシンガーソングライターであることがよくわかった。

 

山崎あおい「アオイロ」

山崎あおいは先月くらいからフォロワーさんの間でじわじわと人気が広がっていた印象があり、その中で自分も興味を持って今作を入手した。

この手のギター弾き語り系の女性シンガーソングライターはかなり好みだ。歌声も透明感があって爽やかな感じで自分の好きなタイプだったので、一聴しただけでハマった。様々な曲調を揃えた作風で、それぞれで山崎あおいの魅力を引き出すような作品になっていたと思う。優れたメロディーメーカーでもあると実感した。今作以外にも数作リリースしているが、そのどれも気に入りそう。早く聴きたい。

 

Jellyfish「Spilt Milk」

こぼれたミルクに泣かないで

こぼれたミルクに泣かないで

 

Jellyfishは90年代におけるパワーポップバンドの代表的存在で、リリースした2作のアルバムがどちらも名盤として名高いアメリカのバンド。1stの「Bellybutton」も入手したが、2ndのこちらの方が好きなので紹介する。

ビートルズビーチボーイズQueen、Badfinger、Elton John、ELO、XTCなどといった先達からの影響を強く感じさせる、どこまでもポップで楽しげな雰囲気のある曲たちがたまらない。その中にひねくれた部分やマニアックな要素が詰まっているのも魅力的。ボーカルのアンディ・スターマーもクセのない歌声で聴きやすい。奥田民生PUFFYとのつながりもあるので、日本人にも親しみやすい洋楽だと思う。そこまで洋楽を聴く方でもない自分でもすぐにハマった。

 

大森洋平「20R.P.M.」

20R.P.M.

20R.P.M.

 

直近にリリースされた曲をフォロワーさんが高評価していて、それで大森洋平の名前を知った。その後、デビュー曲の「彼女」を好きになり、それが収録された1stアルバムの今作を入手した形。自分が思っていた以上にキャリアの長いシンガーソングライターだった。

参加ミュージシャンを見て浜田省吾の作品とメンバーが似ていると思って聴いたが、まさにその雰囲気を感じさせる曲ばかりだった。軽快かつ力強いロック・ポップスというのか、開放的な作風に魅かれた。アップテンポな曲でもバラードナンバーでも確かな力を持ったメロディーが展開されていて、メロディーメーカーとしての実力がよくわかった。今作以降の作品も入手したい。

 

 

顔見知り部門

 

Mr.Children「重力と呼吸」

重力と呼吸

重力と呼吸

 

ミスチル史上最長のブランクを経てリリースされた作品にして、小林武史が一切参加していない初の作品。ベテランどころか既に大御所の域に達しつつある印象のミスチルだが、バンド史を通じてもかなりの変化があった中で制作・リリースされた作品と言える。当然、情報が出た時からずっと楽しみにしていた。

ここまでバンドサウンドが前面に出た作品は今までに無かったんじゃないか。爽快なロックナンバーに重厚なロックバラードが次々と登場する印象がある。ただ正直なところ、1回聴いただけではよくわからなかった。聴き進める度に曲がするすると耳を離れていく感覚があり「なんだこれ?」とすら思った。2回目は少しだけ印象が上がった。そこからも少しずつ印象が良くなった。しかし、どうしてもサウンド面ばかりが印象に残る。今作を聴いて、ミスチルはまだ過渡期だと感じた。完全セルフプロデュースとなった今の体制がまだ盤石ではないのかもしれない。以降のミスチルの作品に期待。

 

近藤名奈「最高の笑顔を花束にして」

最高の笑顔を花束にして

最高の笑顔を花束にして

 

近藤名奈はかなり前から聴いていて、それなりに好きなガールポップ系アーティスト。ただ、あるフォロワーさんが途端に近藤名奈にハマり、自分よりも早く作品を揃えた。その中で今作を特に絶賛しており、それにつられるような形で自分も今作を入手した。

これまでの2作よりもさらに歌声の力強さや訴求力が増している印象があった。「大人っぽくなった」という表現が合う。元々透明感や清涼感のある歌声の持ち主だが、今作から新たな魅力が見つかった。詞世界についても、ラブソングが多くなったと思う。サウンド面で聴きごたえのある曲も多く、特に気に入った作品。

 

COKEBERRY「Sugar Plum Fairy」

Sugar Plum Fairy

Sugar Plum Fairy

 

COKEBERRYは昨年に「こころのうた」を聴いたが、そちらはオルタナロック色の強い作風でそこまでハマらなかった。当初からこちらを収穫したかったのだが、入手するまでにかなり時間がかかった。

シティポップ・AOR、ソウル、ファンクなどの要素を取り入れた曲が展開されており、ボーカルのミーマのひんやりした感じの歌声が映える曲ばかりだった。特にオープニングの「Our Way(Is Goin’ On)」はかなりの名曲だと思う。良くも悪くもこの曲が強過ぎる印象もあるが、全体を通してメロディーや演奏に聴きごたえのある作品である。この手のグルーヴィーな音楽が評価されやすい現在の方が親しまれるのではないか。

 

オオゼキタク「夜明けのスピード」

夜明けのスピード

夜明けのスピード

 

オオゼキタクは昨年聴いた「コバルト原チャリ」「デラックス・コレクション」を聴いてハマった。歌謡曲のような心地良くどこか切ないメロディーがたまらない。多彩なアプローチをしつつもポップにまとめるメロディーセンスに圧倒された。

わずか6曲入りのミニアルバムなのだが、その分どの曲もしっかり耳に残った。ポップな曲もバラードのどちらにも引き込まれる。今作でも前述したメロディーセンスが遺憾無く発揮されていた。オオゼキタクほど哀愁漂う曲を多く生み出せるソングライターも中々いないのではないか。


とりあえず、こんな感じ。次はまたいつか。

 

 

 





 

詳説・収穫月間MVP 2018年10月編

今回の受賞作品はこちら。

 

初めまして部門

・miyuki「ぜんぶ言ってしまおう」(1994年)

ぜんぶ言ってしまおう

ぜんぶ言ってしまおう

 

 

・OPCELL「OPCELL」(1995年)

OPCELL

OPCELL

 

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顔見知り部門

Prefab Sprout「From Langley Park to Memphis」(1988年)

ラングレー・パークからの挨拶状

ラングレー・パークからの挨拶状

 

 

Paris Blue「a groovy kind of Love 恋はごきげん」(1993年)

A Groovy Kind of Love

A Groovy Kind of Love

 

 

このような顔ぶれとなった。惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

初めまして部門

指田郁也「しろくろ」(2013年)

山崎あおい「アオイロ」(2014年)

Jellyfish「Spilt Milk」(1993年)

大森洋平「20R.P.M.」(1997年)

 

顔見知り部門

Mr.Children「重力と呼吸」(2018年)

近藤名奈「最高の笑顔を花束にして」(1994年)

COKEBERRY「Sugar Plum Fairy」(1996年)

オオゼキタク「夜明けのスピード」(2004年)

 

それでは、受賞作品の簡単な紹介と感想を書いていこう。

 

miyuki「ぜんぶ言ってしまおう」…miyukiはフォロワーの書いたディスクレビューの中に他の作品が掲載されていて名前を知り、気になっていた。動画サイトで曲を聴き、その可愛らしい歌声にすぐ魅せられた。コスモ石油のCMのサウンドロゴを手掛けたようで、CM好きな自分としてはその点も好印象だった。

確かなメロディーセンスが発揮された曲たちと可愛らしい歌声には何度聴いても引き込まれるばかりだった。今で言うアニメ声のような感じなので、好き嫌いがくっきり分かれるだろう。今作には切ない恋模様を描いた曲もあるが、それによく合った歌声だと思う。ポップな曲はもちろんのこと、バラードにも歌声が合うのは驚き。他の作品も入手したい。

 

OPCELL「OPCELL」…元GRASS VALLEYの本田恭之が関わったユニットだからという理由で名前を知った。ジャケ写から何となく察しがついていたが、往年のシティポップやリゾートミュージックを90年代の音で蘇らせたような作風。ボーカルのKEN蘭宮こと山本寛太郎の作品は聴いたことがなかったが、甘く色気のある歌声だったので違和感無く聴けた。本田恭之によるシンセも、曲を効果的に盛り上げて彩りを添えていた。本田恭之のキーボードプレイが好きなので、全編に渡ってそれを楽しめたのは本当に大きい。本田が作曲した曲が無かったのは少々残念だが、GRASS VALLEYのシンセの使い方が好きな方は聴いて損のない作品だと思う。

 

顔見知り部門…

 

Prefab Sprout「From Langley Park to Memphis」…Prefab Sproutは9月に2枚組のベスト盤を聴いてハマった。パディ・マクアルーンによる美しいメロディーと、幻想的な雰囲気を感じさせるシンセを始めとしたサウンド面の絡みが非常に心地良く、ベスト盤を聴き終える頃にはすっかり魅せられていた。初めて手に取ったPrefab Sproutのオリジナルアルバムが今作。なお、洋楽の作品が収穫月間MVPを受賞するのは初。

「The King of Rock 'N' Roll」「Nightingales」「Hey Manhattan!」など、自分がベスト盤を聴いていて好きになった曲が数多く詰め込まれていただけに、一聴しただけですぐに今作が好きになった。パディ・マクアルーンのメロディーメーカーとしての才能には圧倒されるばかりだった。ポップな方面もメロウな方面も相当に力が入っており、バンド史の中でもセールスを狙いに行った作品であったことがよくわかる。他の作品も間違いなくハマれるはず。洋楽でここまでハマったアーティストも久し振りだ。

 

Paris Blue「a groovy kind of Love 恋はごきげん」…Paris Blueは昨年に初めて聴いてハマり、ボーカルの谷口實希の歌声には恋をしたと言っていいほど。アルバム5作・ミニアルバム2作をリリースして活動を終えたわけだが、自分が最後に入手したアルバムが今作。

先行シングルの「雨が降る」はYouTubeで先に聴いていて大好きな曲だったが、それ以外にも好きな曲が次々と見つかった。お洒落で可愛らしい雰囲気を持った曲の数々は自分好みそのもの。一回通して聴いただけで大好きな作品になることを確信したくらいだ。ここ最近で、とあるフォロワーもParis Blueにハマった。「この人だったら間違いなくハマる」と思って布教し続けていただけに感慨深い。「今更か」と思ってしまうこともあるのだが。

 

とりあえず、こんな感じ。次はまたいつか。

詳説・惜しくも受賞を逃した作品 2018年9月編

惜しくも受賞を逃した作品は以下の通り。

 

初めまして部門

市井由理「JOYHOLIC」(1996年)

藤井隆「light showers」(2017年)

・岩﨑元是&WINDY「The all songs of WINDY」(2012年)

・新川忠「Paintings of Lights」(2015年)

たむらぱん「ノウニウノウン」(2009年)

浜本沙良「Truth Of Lies」(1995年)

・古家学「僕が歩く場所」(1997年)

チェキッ娘「CXCO」(1999年)

 

顔見知り部門

大沢誉志幸「in・Fin・ity」(1985年)

かの香織「fine」(1991年)

・THE HAKKIN「情緒」(2015年)

 

このような顔ぶれとなった。久し振りに多くの作品を入手し、いつもに増して充実した内容となっていると思う。今回の収穫月間MVPの選定はこれまでの中でも特に苦労した。

 

早速、↑で挙げた作品の簡単な感想を述べていく。

 

市井由理「JOYHOLIC」(1996年)

JOYHOLIC

JOYHOLIC

 

市井由理EAST END×YURIのイメージが強く、ソロ作品は聴いたことが無かった。ソロ歌手・市井由理としての唯一のアルバムが今作だが、渋谷系の隠れた名盤として語られることもあり、それで気になって探していた。

お洒落かつポップ、それでいてどこか斜に構えたような雰囲気を持った曲ばかりだった。渋谷系界隈のミュージシャンが多数参加しただけあって、どの曲にも確かな聴きごたえがあった。市井由理のふわふわとした歌声も不思議とそのような曲やサウンドに合っており、聴いていて心地良かった。隠れた名盤と称されるのも頷けるだけの充実感がある作品。


藤井隆「light showers」(2017年)

light showers

light showers

 

藤井隆は芸人がメインでたまに俳優として活動しているイメージが強く、音楽活動に関しては「ナンダカンダ」しか知らない状態だった。今作はフォロワーが絶賛していたこと、テーマが「90年代のCMソングみたいな曲」という旨のもので興味を持ったため、入手した。確かに聴いてみると、現代の音だが何故か懐かしさを感じさせる曲ばかりだった。「全曲に架空のCMタイアップがついている」という設定だけあって、90年代をリアルタイムで過ごしたわけではないのに、当時の深夜番組のCMでも見ているような感覚に襲われた。今作のダイジェスト動画(架空のCM集)も遊び心に満ちたもので面白い。↓ コンセプトアルバムとして徹底された名盤だと思う。

 

https://m.youtube.com/watch?v=UVns0T9Gsr4

 

・岩﨑元是&WINDY「The all songs of WINDY」(2012年)※オリジナルのリリースは1986年・1987年。

The all songs of WINDY

The all songs of WINDY

 

岩﨑元是&WINDYは数ヶ月前にフォロワーのツイートで名前を知った80年代のバンド。YouTubeで数曲聴いたところ、大滝詠一山下達郎オメガトライブ(杉山清貴)を彷彿とさせる曲が多く、好みのど真ん中だった。オリジナルアルバムは2作のみだが、そのどちらもプレミアがついていてそれなりの高値で売られていた。よく行く中古屋にて、2012年にリリースされた岩﨑元是&WINDYの全曲集である今作がたまたま入荷しており、すかさずそれを購入した形。

爽やかで心地良い、洗練されたリゾートミュージック・シティポップを楽しめた。ウォール・オブ・サウンドを取り入れた、分厚いサウンドやコーラスワークも曲によく合っており、一部のナイアガラ関連のファンにも支持された理由がわかった。岩﨑元是のクセのない歌声も曲の心地良さを演出していた。来年の夏は今作と共に過ごしたいと思う。

 

・新川忠「Paintings of Lights」(2015年)

Paintings of Lights

Paintings of Lights

 

新川忠及び今作はフォロワーのブログで紹介されており、それで名前を知った。YouTubeで収録曲の「カミーユ・クローデル」「アイリス」を聴き、どちらも自分好みだったので入手した。

80年代のシティポップ・AORのテイストに加え、シンセポップ・ニューウェーブのテイストも感じさせる作風がたまらない。Prefab Sproutを想起させるサウンドで、透明感があって美しいものばかりだった。西洋芸術の影響を取り入れた詞世界も、甘美なメロディーや幻想的なサウンドとよく合っていた。また、作詞・作曲・編曲・歌・演奏・録音・ミックスとあらゆる工程を自らこなす新川の職人的な姿勢にも驚かされた。作風は違うとは思うが、これまでの2作のアルバムも聴いてみたい。

 

たむらぱん「ノウニウノウン」(2009年)

ノウニウノウン(初回限定盤)(DVD付)

ノウニウノウン(初回限定盤)(DVD付)

 

たむらぱんはCMソングのイメージが強く、独特な歌声とその風変わりなアーティスト名が印象に残っていた。今作はフォロワーの好きなアルバムランキングでも比較的上位に入っており、どのような作品か気になっていた。

聴き流しているだけでも、本当に同じアーティストが作ったのかと思ってしまうほどに多彩な曲調が揃っていた。「変幻自在」というフレーズがよく似合うメロディーメーカーだと実感した。伸びのある澄んだ声も相まって、聴いていて心地の良い曲ばかり。たむらぱん本人による、徹底的に作り込まれたアレンジの数々にも圧倒された。他の作品も聴いてみたいと思った。

 

浜本沙良「Truths Of Lies」(1995年)

Truth of Lies

Truth of Lies

 

80年代後半〜90年代後半のマニアックなガールポップ系アーティストを探っていくというのは、今年の自分の収穫生活における大きなテーマの一つだと思っている。その中で見つけたのがこのアーティスト。

当時同じフォーライフ所属だった今井美樹のような甘く艶のある歌声が映える、都会的な雰囲気のある作風だった。シティポップ・AORのテイストを取り入れた曲に加え、ジャズやボサノバの要素を持った曲もあり、サウンド面にも聴きごたえがあった。前作「Puff」も入手したい。

 

・古家学「僕が歩く場所」(1997年)

僕が歩く場所

僕が歩く場所

 

古家学は自分よりも先にフォロワーがハマって色々と布教していたイメージが強く、それで自分も気になっていた。YouTubeで今作の収録曲を少し聴いてみたところ、自分の好みだったのですぐに今作を入手した。

浜田省吾を思わせる、ストレートで力強いロック・ポップスを楽しめる作品だった。初めて聴いたはずなのに、遠い昔にどこかで聴いたことのあるような…そうした感覚があった。少し掠れた甘い歌声もかなり好き。自分で好きなアーティストは色々と見つけてきたつもりだが、今回のように見つけられないこともよくある。フォロワーからの布教はそうした存在を拾い上げるきっかけになるので貴重だ。今作はもうハマったので、古家学の他の作品も探してみようと思う。

 

チェキッ娘「CXCO」(1999年)

CXCO

CXCO

 

元メンバーの熊切あさ美下川みくにの影響で、チェキッ娘という名前自体は割と前から知っていた。ただ、曲は全く知らない状態。去年〜今年で一気にアイドルポップスにハマったためチェキッ娘にも興味を持ち、唯一のオリジナルアルバムである今作を手に取った。

充実したコーラスワークが心地良い、どこか懐かしく切ないポップスの数々は自分の求めるアイドルポップスの典型だった。ダンスパフォーマンスに力を入れるアイドルグループは多くあれど、コーラスワークに力を入れるアイドルグループというのはかなり少ないと思う。良い意味での「素人臭い」雰囲気は今でも良いと思えるだけの力がある。

 

顔見知り部門

 

大沢誉志幸「in・Fin・ity」(1985年)

in・fin・ity

in・fin・ity

 

「そして僕は途方に暮れる」はかなり前から好きな曲で、長らくその曲しか知らない状態だった。昨年にベスト盤を入手してバラード以外の面を知って、さらに聴き込もうと思いつつも放置していた。今作はフォロワーのブログで高評価だった上に、PINKのホッピー神山岡野ハジメ・矢壁アツノブが参加していたため、オリジナルアルバムの中で今作を最初に入手した。

予想通り、生音・シンセ共に凄まじい聴きごたえのある曲ばかりだった。ホッピー神山のアレンジも冴え渡っており、今作の格好良さを演出していた。「そして僕は途方に暮れる」の影響で、大沢誉志幸はバラードシンガーとしてのイメージがかなり強い。当然今作でもそうした曲はあるのだが、それ以上にファンクナンバーの印象が強い作品。ファンクナンバーでは勢いのあるボーカルを聴かせてくれる。大沢誉志幸はバラードシンガーだと思っている方にこそ聴いていただきたい名盤。

 

かの香織「fine」(1991年)

ファイン

ファイン

 

かの香織は今年から聴き始めた女性アーティストの中でも特に好きな方に入ってくる。渋谷系やシティポップのテイストを感じさせる、お洒落でポップな作風は自分好みそのもの。自分にとっては、鈴木祥子と並んで数少ない「女性ポップス職人」と言える存在。

今作はかの香織のソロデビュー作で、佐久間正英が全面的なプロデュースを手掛けている。ショコラータ時代のエキセントリックな部分はぐっと抑え、ナチュラルで親しみやすいポップスを追求した作品という印象。シンセ主体の飾り過ぎないアレンジもそれを引き立てる。どの曲もしっかりメロディーが残るのが見事。かの香織の卓越したポップセンスには脱帽するばかり。

 

・THE HAKKIN「情緒」(2015年)

情緒

情緒

 

THE HAKKINは1月に前作「晩成」を入手し、80年代のソニー系バンドのような楽曲の数々に魅了された。楽曲だけでなく、アートワークの数々も凝っている。実際にアルバムを入手していただけるとわかるが、ケースのあらゆる部分に80年代のソニー系アーティストの作品を思わせる部分が散りばめられている。その手の作品を集める自分は思わずニヤリとしてしまった。「晩成」の次作で、最初で最後のフルアルバムとなった今作もその路線を突き詰めたものだった。

80年代のニューウェーブニューロマンティックを今の音で蘇らせたような曲たちは、世代ではないのに何故か懐かしいと思ってしまうほどだった。色気のある低音が持ち味のボーカル・長澤佑哉の歌声が映える曲が揃っており、ギターの浅野麻人・ベースの春日賀賀も味わい深い演奏で曲を彩る。80年代に影響を受けた若手アーティストは多くいるが、中でも80年代後半のバンド(特にソニー系)を彷彿とさせる曲を展開しているのはTHE HAKKINくらいだったと思う。2015年11月に「バブル崩壊」と称して活動を終えたが、それが非常に惜しまれる。

 

今回はこんな感じ。次はまたいつか。

詳説・収穫月間MVP 2018年9月編

今月も「#収穫月間MVP」発表の時期がやってきた。いつもは受賞作品を発表した直後にこの記事を更新するのだが、今回は少し遅れた更新となる。早速受賞した作品を挙げていこう。

 

初めまして部門

 

レベッカREBECCA Ⅳ Maybe Tomorrow」(1985年)

REBECCA IV~Maybe Tomorrow~

REBECCA IV~Maybe Tomorrow~

 

 

QlairQlair Archives」(2005年)

アイドル・ミラクルバイブルシリーズ Qlair Archives

アイドル・ミラクルバイブルシリーズ Qlair Archives

 

 

顔見知り部門

 

詩人の血「I love ‘LOVE GENERATION’」(1993年)

i love`LOVE GENERATION'

i love`LOVE GENERATION'

 

 

高橋幸宏「WHAT,ME WORRY?」(1982年)

What,Me Worry?

What,Me Worry?

 

 

惜しくも受賞を逃した作品

 

初めまして部門

市井由理「JOYHOLIC」(1996年)

藤井隆「light showers」(2017年)

・岩﨑元是&WINDY「The all songs of WINDY」(2012年)

たむらぱん「ノウニウノウン」(2009年)

浜本沙良「Truth Of Lies」(1995年)

・新川忠「Paintings of Lights」(2015年)

・古家学「僕が歩く場所」(1997年)

チェキッ娘「CXCO」(1999年)

 

顔見知り部門

大沢誉志幸「in・Fin・ity」(1985年)

かの香織「fine」(1991年)

・THE HAKKIN「情緒」(2015年)

 

このような顔ぶれとなった。今年は1980年代の作品をより深く突き詰めようと考えて始まったが、それが反映された作品が多くなっていると思う。

 

それでは、受賞した作品の簡単な解説と感想を書いていこう。

初めまして部門

 

レベッカREBECCA Ⅳ Maybe Tomorrow」…レベッカに関しては、長らく「フレンズ」しか知らない、ただその曲が大好きという状態だった。しかし、LINDBERGJUDY AND MARYといったレベッカに影響を受けたと思われるバンドはもれなく好きだ。しっかり聴けばハマると思い、特に人気の高い今作を手に取った形。自分が入手したのは2013年リマスター・Blu-Spec CD2盤。

当時大ヒットを記録した作品というだけあって、バンドサウンドとシンセとを見事に両立させたロック・ポップスが展開されていた。天下を取るきっかけになったと言える「フレンズ」も収録されており、やはり全体を通しての勢いが凄まじい。どの曲がシングル曲かわからなくなるほどだった。後半になればなるほど勢いを増していく構成にも圧倒された。80年代の王道なヒットアルバムと言ったところ。

 

QlairQlair Archives」…90年代はアイドル不遇の時代とよく言われるが、その中でも素晴らしい曲を残したアイドルは多くいた。曲の完成度に拘るアイドル「楽曲系」「楽曲派」の元祖とも称されるQlairはその代表格だろう。去年〜今年にかけてすっかりアイドルポップにハマった自分が彼女たちに興味を持たないはずがなかった。そして、大学の近くにあるブックオフで今作を衝動買いした。決して安くはなかったが、全曲集となれば値段は気にならなかった。

洗練されたポップな曲に作り込まれたサウンド、丁寧で美しいコーラスワーク。本当に心地良い曲ばかりで、あっという間に全曲聴き終えてしまった。「これだよこれ!俺が聴きたかったの!」という感覚があった。自分が思うアイドルポップスの理想というか…

ブックレットに掲載された、今見てもお洒落だと思うような過去の作品のアートワークの数々にも引き込まれた。今作で全曲を揃えたからほぼ意味は無いとわかっていても、過去の作品を揃えたいと思うほどだった。

 

顔見知り部門

 

詩人の血「i love ‘LOVE GENERATION’」…今年新たに出逢ったアーティストの中でも特にハマったのが詩人の血だと思う。そのラストアルバムが今作。個人的にも詩人の血のアルバムの中で最後に入手したのが今作。紹介されたブログを見るに、自分の好みのどストライクな気がしていたので、兼ねてから聴くのが楽しみだった。

渋谷系テイストの生音主体なポップスとなればハマらないはずがなかった。ホーンがかなり前面に出ているのが特徴で、辻睦詞の突き抜けるようなハイトーンボイスとぴったり合っていた。ひねくれた要素もいつになく薄れ、ストレートなポップに向き合ったようなイメージがある。サウンドの聴きごたえや、どうやったら思いつくのかと思ってしまうようなメロディーの数々は絶品。「これ好き!」となる曲が次から次に出てきた。詩人の血のアルバムの中で一番好きな作品となった。

 

高橋幸宏「WHAT,ME WORRY?」…高橋幸宏は1月に収穫した「NEUROMANTIC」を聴いてハマり、自分がニューウェーブニューロマンティックを掘り下げるきっかけになった。今作は「NEUROMANTIC」の次作であり、日本のロックにおける名盤としても扱われることがある作品。高橋幸宏の最高傑作との呼び声も高い。本当はもっと早く入手したかったものだが、ここまでもつれてしまった。

前作は「ロマン神経症」というサブタイトルがついていただけあって、全編を通して陰のある作風だった。しかし、今作はそのような雰囲気が一気に薄れ、ロック色の強い明るい作風となった。UKのニューウェーブ関連のミュージシャンが多く参加し、彼らとの才能のぶつけ合いも圧巻。ポップで格好良い曲が揃った。また、日本語詞の曲も増え、ボーカリストとしての高橋幸宏もより楽しめるようになった。これぞ名盤。

 

とりあえず、こんな感じ。次回はまたいつか。